第42話、エアフォースワン…それって例の…
災害対策班Vチームは、思いのほか成果をあげていた。
特にビル火災においては、なくてはならない存在になっている。
マイアミ近郊では、ビル火災の時に屋上へ逃げれば確実に救助が来ると確信されるほどだった。
政府は公式にバンパイア・ウィルスを公表し、多くの犠牲者を出したが、災害対策Vチームを残してくれたとプレジデント自らがコメントしている。
そして、Vチームを3班に分けた。
ワシントンD.C常駐のV1チーム、L.A常駐のV2チーム、マイアミ常駐のV3チームだ。
政府はスカイボードの増設を求めてきたが、俺は別の案を10億ドルで提示した。
それは、10人乗りの大型ワゴン車3台を改造し、空陸両用にするというものだ。
条件なしで10年間の動作保証付き。おまけで、スカイボードの無制限を50台。
バンパイアであれば、魔力の保有量も格段に増えているため、問題なく使えるだろう。
政府は承知した。
さあ、チーターの出番だ。
時速500km以上で空を飛ぶワゴン車である。
しかも、各種安全装置付きで、万一にも事故を起こさないこと。
色々と検討していたら、もう3台追加してほしいと注文が入った。
プレジデント専用車両にするらしい。
うーん、長距離移動するなら、やっぱりカーナビと連動した自動操縦機能は欲しいよな。
結界のセットで風の抵抗を無効化し、簡単な攻撃魔法くらいはあってもいいよな。
風の抵抗がないなら、時速700kmくらい行けそうだし、後部ハッチの遠隔操作も必要だな。
全方向モニターにして…、拡大機能とか必要だな…、レンズは手振れ補正付きか。航空無線とか要るのかな…
車輪が回っていないときの速度表示も要るしな…、できれば空中で静止できるボタンとかあった方がいいな。
最終的に全体に強化をかけて引き渡し完了!
大統領専用の車両は、日本のT社製ハイエー〇ワゴンを改造した10人乗りだ。
外装はチタン製のハンドメイドで、生成りのチタンカラーが独特の雰囲気を醸し出している。
「ではこれで失礼します」
「待ちたまえ。デモ飛行に付き合ってくれるんだろ」
「運転手まで育成しておいたんですから…」
「まあ、L.Aまで本当に7時間以内に行けるか確認しようじゃないか」
「わかりましたよ。
マイク、設定を高度3000m、速度は時速1100kmでいいから」
「了解です」
「最高速度は時速700kmじゃないのか」
「マッハ2まで可能ですよ。まあ、音速は超えない方が無難ですからね」
「自動でセットしました、発車します」
ポチッ
「お、音がしないぞ」
「加速感もない」
「音は消してありますし、重力の制御で加速や浮遊感もありません。
寝ていけますよ。
外装は、ハンドメイドのチタン製で、窓は二重ガラスでチタンのメッシュ入り。
プレジデント用にマッサージチェアにしてあります。
特にフットマッサージャーはお勧めです。
冷・温蔵庫付きで、ホットコーヒーもお出しできます。
電子レンジもありますから、軽い食事が可能です。
通信機能も強化してあり、無線LAN仕様。パソコンも使えますし、45インチのセンターモニターに映すことも可能です。
今、センターモニターには前方下45度の映像を出してますので、景色でもお楽しみください」
「この状態で、ホワイトハウスから日本まで5時間弱で行けるというのかね」
「はあ、その気になればですけど、まさかこんな狭いので行かないでしょ。
トイレもありませんし」
「いや、時間的なロスを考えれば、十分にあり得るし、要塞みたいなものだろう。
完全な個室にできると聞いたが」
「ええ、このボタンで窓がチタンのカバーで覆えます。運転席との隔離はシェードですけどね。
日本までの飛行となると、マイクの魔力がもつかどうかですね」
「だったら、運転手を2名にして、携帯トイレを開発すればいい」
「へいへい、どうぞ、お好きなようにお使いください。
私は、お金さえいただければ口は出しませんので」
「それにしても、1台3億ドルか…、もう少し安ければ軍に配備するんだが」
「逆ですよ。戦争に使われたくないから高くしてるんです。
こいつの安全機能は、一般の武器では突破できませんからね。
前回の戦争の首謀者。
こいつなら、だれにも気づかれずに離着陸して帰ってこられますからね」
「堂々と、敵本部の真上まで行って、スポットで爆撃することも可能か…」
「契約書に書きましたが、戦争での故障は保証の対象外ですからね」
こうして、無事試験飛行は終わった。
プレジデントはことのほか喜んでくれて、エアフォースワンはこの車の独占状態になっていく。
ちなみに、エアフォースワンとは、大統領が搭乗した際にアメリカ空軍機が使用するコールサインであって、特定の機体の識別番号ではない。
問題は、婦人用の席がないことで、側近は多少我慢できるが…。結局7人乗りの夫人同伴用は別途注文されることになった。
プレジデントが、この車を行く先々で自慢するもんだから、注文が殺到するのだが、運転手はバンパイアでないと無理だからと断っている。
「シュウ!バンパイアを雇用したいって、各国からオファーが来ているんだが…」
「国家機密に抵触するとか言って断ってください」
「シュウさん、妹を婦人同伴車両の専用運転手にしたいって…」
「勝手にやってくださいよ」
災害救助の活躍も目立っている。
天候に左右されないため、嵐の中でも出動できる。
そこにバンパイアの基礎能力の高さが加わり、遭難者の救出や暴徒の鎮圧でも出動要請が来る。
政府広報や映画・スポーツイベントでも、バンパイアは引っ張りだこだ。
特に、オリンピックのマークをスカイボード片手にした5人が描いて見せたCMが話題になっている。
ベース車両に使った、日本のT社ハイエー〇ワゴンの人気はうなぎのぼりで、特にマッサージチェア搭載の問い合わせがすごかったらしい。
俺のところにメーカーの問い合わせが来たが、結局特別仕様として販売したところ、バカ売れとのこと。
プレジデントにも、なぜアメリカ製を使わなかったかとクレームが殺到したという。
これに輪をかけたのが、俺のアップした動画の存在だ。
例のジュールへ行った時の妻たちがスカイボードで車から飛び出していくやつ。
政府があれを真似して、航空機の災害救助CMを作ったものだから、それをスケボで真似する動画があとをたたない。
ネコだっていい迷惑だろうに…
ともあれ、こうしてバンパイアウィルスの騒ぎは収まり、平穏な日常がやってきた。
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