第63話、第3世界…まったく面倒な世界を作ってくれたもんだ

俺は世界中の病院を訪れ、治療の困難な病やケガを治して回った。

万能ではないが、それでも効果をあげていった。

日本は最初、これを治療とは認めず、日本中の病院からシャットアウトされた。

医師免許を持たない者に治療はさせられないというやつだ。


まず、アメリカで実績をあげ、ヨーロッパで効果を出すと、手のひらを返した。

治療とは認めないが黙認するというやつだ。

治癒は血液の交換や輸血はできない。

症状によっては医師の協力が不可欠にもかかわらず、手を貸そうとはしない。


そういう時に、俺は家族の同意を得て退院させ、アメリカの病院へ患者と一緒に転移する。

アメリカでは、臨時入国をプレジデントが直接認めてくれ、治療後記者会見する。

魔法と医療が協力した成果だと公表してやる。

いくら魔法が使えても、出血でショック状態の患者を治せても血が足りない。

子供でも分かる理屈だ。


こうして、世界中で魔法という名の奇跡を起こしたのちに記者会見を開く。

もちろん、アメリカでだ。


「みなさん、聞いてください。

この二柱は本当の神です。

だからと言って、両方の神様を崇めろというつもりはありません。

崇めてもなにもしてくれません。

神様はただ在るだけです。

ただ、二人の創造したこの世界に、我々は存在することを赦されている。

そのことに感謝しましょう」


「それは、宗教と違うんですか?」


「宗教とは違うます。

神は我々に何も求めず、何もしてくれません。

僕は、トラブルに会って、魔法の力を授かりました。

これは、例外中の例外です。

ですから、この力を人々のために使っていますが、神様は特にこうしろと指示したわけではありません。

僕は、僕の判断で、神様の存在を証明するために使っています。

今、神様同士がケンカを始めようとしています。

ですから、僕はゼウス様とルシファー様と勝手に名前をつけて、キャラクター化し、予備選挙のようなことを仕掛けてみました。

すると、神様は、この勝敗の行方に興味を持たれました。

さあ、どう決着をつけましょうか。

勝敗を明確にしてしまっては、片方の神様のご機嫌が悪くなりますよね」


「じゃあ、どうするんですか」


「両方、同等の神さまだと認めてしまいましょう。

お二人が、ご機嫌を損ねないように。

この世界では、いえ、この世界だけは両立させます。

別の世界では、具体的にはユーフラシアではゼウス様を信仰します。

第5世界ではルシファー様を信仰します。

こうやって、半分ずつ世界を治めていただきましょう。

これ以外に私たちが救われる道はないんです」


「具体的に、どうすればいいんでしょう」


「お二人に感謝してもいいですし、お祈りをささげてもいい。

ともかく、この世界にお二柱の神様が存在すると認識していただければ結構です」


「もし、それでご機嫌がとれないときは?」


「神様を呪って、みんなで滅びましょう」


「既存の宗教とのすみ分けが難しいと思うんですが」


「そんなことはありません。

先ほど、僕が勝手に名前をつけて、キャラクター化したといいました。

皆さんの信じる神様は、このどちらか、もしくは両方だということです。

宗教に教義があるのなら、それはこの神様を信じるにあたり、こういう人間であろうという意志ですから、何の弊害にもなりません。

これまで通り、神を崇めてください。

ただ、それは、このどちらかの神様だと心にとめていただければ結構です」




『どうしますかね』


『勝手に神に祀り上げるとはな』


『まあ、当分様子を見ますかね』


『1番は共通として、偶数番はわしの信徒じゃぞ』


『いいですよ、奇数番は私が…まあ、どちらが敬われるか競争ですね』


『直接の手出しは禁止じゃからな』


『シュウやネコに指示してやらせるのは問題なしと。

そうなると、クロウ君も少し手を入れましょうかね』


『サクラもやらんといかんな』




シャララーン♪


おおっ!


「ど、どうしたんだ二匹とも…」


「正式に、ルシファー様の使い魔になったにゃ」


「私はゼウス様よ」


「ということは、合格点をもらえたと…」


「ここ以外の、奇数番の世界はルシファー様にゃ」


「偶数番はゼウス様よ」


「それって、俺が開けた順番?」


「「そう」」 「よ」 「にゃ」


二匹、いや二人はネコの獣人として人型になっていた。

というか、お前ら服着てくれよ…



現状ではこんな感じである。


第一世界は、共有の世界


第二世界 ユーフラシアはゼウス様の管轄


第三世界 魔界はルシファー様の管轄


第四世界 動物だけ(第5世界と入れ替え済) ゼウス様の管轄


第五世界 ビビの世界 ルシファー様の管轄


第六世界 2000年以内に分岐 ゼウス様の管轄


第七世界 生物なし ルシファー様の管轄


第八世界 マヤ ゼウス様の管轄


第九世界 アリ ルシファー様の管轄


第十世界 石器時代 ゼウス様の管轄


(※過去の投稿も、表現を一部変更済)


この騒動の間にルシアとバーバラが出産。

ルシアの子どもは男の子で、時輝トキと名付け、バーバラの子は女の子でフランソワと名付けられた。




「シュウ、ルシファー様が魔界と第七世界に生物界を作ったそうにゃ。

布教せよとの指令にゃ」


「シュウ、第四世界にも、人を作ったわ。そっちもね」


「おいおい、なんで急に積極的になってんだよ…」


「ゼウスに負けてらんないにゃ」


「ルシファーごときに遅れはとらないそうよ」




第二世界は亜人系の世界だった。

ここは元々が一つの大きな大陸で、今はそこに森や山・川ができている。


「環境を作って人間の種を仕込んで数千年時間を進めただけだから、ルシファー様もどうなっているか知らにゃいにゃ」


空からざっと確認したところ、大国が二つで小国が8個。

二つの大国を囲むように8つの小国が成立している。


まず東の小国を訪れてみる。

ここはエルフの国だった。

人口2万人で、農業と林業が中心だ。

文化レベルは12世紀といったところか。


日本では壇ノ浦の戦いで平家が破れ源氏が鎌倉幕府を設立した。

ヨーロッパでは十字軍の遠征が行われ、フィクションの世界では水滸伝の108英傑が集まっており、日本では絶世の美女玉藻前が現れ、九尾の狐であることが露見した時代である。

風車や水車小屋、印刷、眼鏡、はさみが使われており、本や絵画なども一般化している。


ブドウ、コムギ、マメ類、オリーブ、各種果物が栽培され、ワインや農作物が出荷されている。


一応、ここで冒険者ギルドに立ち寄り、冒険者登録をしておく。

サクラとクロウも一緒である。



エルフ国から北西に行くと、獣人を中心とした狩猟の国、獣人国があった。

出荷は乾燥肉・毛皮が中心だ。


エルフ国との中間に東のダンジョンがあり、冒険者が多く集まる国だ。



ここからさらに北西に向かうとドワーフ国があった。

金属系の鉱業と鍛冶の国。

鍋や包丁といった金属加工品が出荷品だ。

仕入れは酒と肉になる。


ここから西南に向かうと、混血族になり雑多な人種が多い。

ここの南に中央ダンジョンがあり、冒険者だったり、案内や荷運びで対価を得ている。

ここは国として認められておらず、独立した街の位置づけとなっている。


混血族の街から北西に行くとノームの国があり、ここでは貴金属類の鉱業と加工業が生業となる。


そして、西のはずれには竜人の国がある。

ここは、他との交流がなく、自給自足で賄っている。


まったく、面倒な世界を作ってくれたものだ…

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