第14話、元会社員に、そんな大役任せていいのかよ…
「領主様、以上が事の顛末になります。
なりゆきとはいえ、勝手に話を進めてしまいましたが、如何でしょうか」
「シュウ、如何も何も口を挟む余地なんぞないだろうが!
まったく。何もかも勝手に進めやがって!
領主様、申し訳ございません。
婿とはいえ、息子の不始末、言葉もございません」
「まあまあ、コンゴウ殿、向こうの怒りを買ったのならともかく、対等であるとの確約を得られたのですからこれ以上望むことはないでしょう」
「アマンダの言うとおりです。 これまでの領主は領主会議においても傲慢で皆の不興を買ったものです。
ケビン氏は一度だけ代行で会議に参加された事がありますが、頭の切れる方だったと思います。
そのケビン氏とシュウ君が対等に協議していく訳ですから、私の全権を預かって頂かなくてはなりませんね。
直属のスタッフで相談役というのは如何でしょうか、冒険者ギルド長であるコンゴウ殿や団長、商業ギルド長、国務長、農事長とも同格で、会議にも参加していただきます」
「私なんかに務まるでしょうか・・・」
「既に十分な実績があるじゃないですか。
魔物暴走の対策確立、食糧事情の改革、隣町との折衝。
まだ効果は出ていませんが、普通はどれも数年かけて取り組むものです」
「分かりました。精一杯頑張ります。 どうかよろしくお願いします」
◆ ◆ ◆
「そんな感じで、領主相談役という役職をいただいてきた」
「まあ、おめでとうございます。 じゃあ、私も相談役婦人なんですね。
あっ、アマンダ様が要職者の奥様がたを集めて婦人会なるものを開催されているけど・・・私も出るのかな・・・
着ていくもの・・・あっ、この間買ってもらったワンピースがあったわ!」
「あはは、服なんていくらでも買えばいい。
この間の賠償金だけで君の分が金貨250枚(1000万円)あるんだ。
そうだ、メイクアップの学校にでも通ったら?
そういう御婦人方って、やっぱりお化粧とか美白や髪型なんかに興味があるんじゃない?」
「確かにそうだけど、言葉が分からないから・・・」
『それなら、カエデに言語変換のスキルをセットすれば大丈夫ですよ』
「えっ、そんな事ができるの?」
『そろそろスキルエディットのレベルが2になる頃だと思います。
レベル2になると自分のスキルは20個まで、他人のスキルも10個までセット可能になりますよ』
「えっ、そうなの?
どれどれ・・・まだレベル1だよ・・・
これって、どうすればレベルが上がるの?」
『新規のスキルを50個書き込む毎にレベルが一つあがります』
「そうなんだ・・・あれっ、それができれば、メイクアップアーティストってスキルを作っちゃえば学校も行かなくて済んじゃうね」
『ただし、一度セットしたスキルの下位互換はカウントされません。
そうですね、例えばシュウが調理マスターってスキルを作りましたよね』
「ああ、プレオープンに備えてセットしたよ」
『あれも、皮むき・千切り・煮物・焼き物などのスキルを先にセットすればカウントされましたが、先に調理マスターという総合スキルをセットしてしまったので今からセットしてもカウントには入りません』
「それ先に言ってよ・・・」
『聞かれないと答えられないんです。
知識として知っている訳じゃなくって、言葉をキーワードにデータバンクから引き出すような感じです』
「そっか、ごめんね。
じゃあ、ヘアメイク、美容部員、服飾コーディネーター、美容整形助手、美容整形医をセット・・・っと、おっレベル2にあがった!」
更にシミ消し、美肌アドバイザー、ネイルアーティスト、をスキルに追加して・・・からの総合職メイクアップアーティストをセットする。
「他者のスキルをセットするにはどうすればいいんだ?」
『鑑定で相手のデータを表示させてからスキルエディットを使います』
「相手にスキルエディットをセットする事は可能なの?」
『スキルエディットは特別な権限が必要なので、神様しかセットできません』
「そっか、カエデ・・・ステータス見るけどいいかい?」
「恥ずかしいですけど・・・どうぞ」
『鑑定!』
**********
【ステータス】
名前:カエデ
職業:剣士
年齢:18
体力:21/21
魔力:32/32
攻撃力:43/43
防御力:25/25
武器:レイピア +25
防具:布の服 +1
skil:急所突き LV.5
速度強化 LV.4
ゴルの町 七位、相談役婦人
従魔:ブラックキャット LV.30
フォレストキャット LV.28
**********
「うん、急所突きと速度強化が自動発動でセットされてるね。
じゃあ、鑑定と無限収納、戦闘用に絶対防御と体力・魔力の自動回復。それから状態異常無効、回復系の治癒をセットするね。
あとはメイクアップアーティストと、欲しいスキルはあるかい?」
「私もお料理系のスキルが欲しいです」
「じゃあ調理マスターをセットするね。
絶対防御と体力・魔力の自動回復。状態異常無効とメイクアップアーティスト・調理マスターは常時発動だから何もしなくていい。
鑑定はカンテイ、無限収納はシュウノウとデロ、治癒はチユという言葉で発動できるからね。
それから、体力なんかのステータスは最高値255まで上げておいたから」
「はい、自分でもステータスが段違いに上がったのがわかります」
「鑑定と収納、治癒の効果を確認してみて」
『カンテイ!』
「あっ、シュウに作ってもらったレイピアの内容が表示されました。
攻撃力が+25もあるんですね。
素材はミスリル銀。へえ、こんな事まで分かるんですね」
「食材も鑑定すれば食べられるかどうか分かるし、美味しいかどうかも表示されるはずだよ。
ただし、他の人のステータスは見ないようにする事。
やっぱりマナー違反だからね」
「はい」
収納と治癒も問題なく発動できた。
これで、俺のいないところでも対応できる。
「瞬間移動を入れようか迷ったけど、サクラと一緒に行動すれば大丈夫だから入れなかったよ」
「はい、大丈夫です」
「これで、別行動する時も安心していられるよ。
連れて行かれた時は本当に焦ったから・・・」
「うふっ、愛されてますね」
俺のステータスもFF(255)まであげる事ができた。
おそらくステータス的には先生を上回っていると思う。
強化スリングショットもゴム4本まで行けたからだ。
「じゃあ、買い物に行こうか。
洋服とか化粧道具とか一通り揃えよう」
「はい」
数日後、領主婦人からお茶会の案内が届いた。
カエデはシックなワンピースで出かけていった。出かける直前までゴシックロリータ風の黒のヒラヒラと迷っていたけど・・・
カエデの披露したお化粧は好評だったようで、いくつか注文を受けてきた。 一番多かったのは、うっすらと色のついたリップクリームだったが。
◆ ◆ ◆
数日後の夜中、打ち上げ花火のドーンという音に起こされる。
俺の用意しておいた魔物暴走を知らせる合図だ。
少し遅れて鳴らされる半鐘の音。
「じゃ行こうか」
「はい」
俺たちが北門に出向くと、半数程度の要員が集まっていた。
実は、聖魔法や収納を使って一網打尽にすることもできたが、俺のいない時でも対応できる手段を確立する必要がある。
そのためのスリングショットと銀弾なのだ。これは、領主も了解済みである。
北門から500mの位置に設置した高さ1.5mの土壁に全員が集結。団長が作戦の再確認を行う。
この土壁は、防衛目的ではなく、スリングショットを持った手をのせる攻撃用土壁である。
全員に配分した銀弾200発も取りやすいように置いてある。
今回、俺とカエデは予想外の事態に備えて、基本的に手を出さない。
準備万端の体制で待ち構える団員50名と番号持ち冒険者の13名。
緊迫の戦闘開始は魔術使いのライトボール打上で始まった。
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