第66話、パンノキ…いや、それ違うから!

第11世界からも動物の注文が殺到した。

アメリカはアラスカでマンモスを飼うって言いだすし、2大ナマケモノのサファリパークを作るって…

知らねえぞ。ふみつぶされても。


マスコミも結託して、例の人間が発生しなかった」世界の動画が流されていく。

そしてマーメイドである。

俺は印税が入ってくるからいいけどさ、ソフィアはこっちの世界でも大スターだよ。

ネズミーランド社から、マーメイド物語の実写化って話がきてさ。そんな暇…あったみたいだ。

でもさ、人魚は肺呼吸だからさ、水の中じゃ会話できんのよ。

まあ、そのへんはクリアしたみたいだけどさ。

マーメイド総出演のその映画はとんでもなくヒットしたね。

両方の世界で同時公開だからさ。


例の波止場から飛び込んで途中で変身するシーンがCMで流されたら、もう見るっきゃないって感じでさ。

本編ではさ、空中で踊るシーンがあってさ。

ドローンによる空撮なんだけど、足元に夜景が広がる中で、一人で踊るの。

設定は、いつか王子様と踊るのを夢見てる少女なんだけど、それが幻想的なんだよね。

ラストは童話のストーリーでさ、恋に破れて泡になっちゃうんだけど、全世界が涙したね。

朝日の中で、貝殻と髪飾りが砂浜にあってさ。

もうね、両方の世界で映画賞総なめなの。



角については、皮膚が角質化したもので、原因はわかっていないようだ。

確実なのは、角のある者が魔法を使うという事実。

そして、それが戦争回避の要因となった。

北東アジアの角を持つ人間に需要が殺到したからだ。


魔法と超能力の境目はないが、精神感応者は重宝された。

各国は精神感応者によるスパイ活動や、その他魔法師による戦争行為を禁止した。

その代わり、植民地政策が自粛されたのだ。


日本、中国、朝鮮は三国同盟を結び、一丸となって欧米各国に対抗した。

その結果、3国の発言力は増した。

それが現状だ。

日本にとって、アメリカよりも中国・朝鮮の方が重要なパートナーなのだ。

中国と朝鮮は早くから民主化をはじめ、三国は同じ方向を見ている。

通貨を統一し、エネルギーを共有した。3国でシベリアの三分の一を開発し、パイプラインで石油を取り込んでいる。

樺太も日本の領土なのだ。

このため、日本・中国からもマンモスの要望は来ている。


現在、世界は連邦制をとりつつある。

北アメリカ連邦、南アメリカ連邦、北東アジア連邦、ソビエト連邦、EU連邦、アフリカ連邦、中東連邦、東南アジア連邦だ。

中立を表明しているのはモンゴルとインド・オーストラリア・エジプトだ。



これらが確認された時点で、第12世界を接続する。


12世界は植物だけの世界だった。

どうやら、直近の氷期が厳しく、僅かな菌糸類しか生き残れなかったようだ。

生物は絶滅し、氷期が終わったのち種として眠っていた植物が芽生えた。

しかし、受粉を介添えする虫や鳥が存在せず、水媒や風媒花、自家受粉のみで目立たない花が多い。

目立つ必要がないからだ。


結果として、似通った植物が密生し、木々は巨大化していく。


一説によると、木は内側にどんどん新しい細胞ができるため、外側さえ処理できれば永遠に生きるらしい。


あとは、雷や火事で淘汰されていく。


第12世界は植物学者が飽きるまで放置と決まった。


第13世界は、希望があり第11世界から開けることになった。


最初に開けた世界は宇宙だった。

これは地球が存在しないということだ。

確認せずに飛び込んだら危なかった。

二番目に開けた世界には海が広がっていた。

アメリカ大陸が水没している世界だ。


確認したところ、これは誤りで、大陸は一つに固まっており、パンゲアのような超大陸を形成していた。

南極大陸からユーラシア大陸までが地続きでつながった大陸だ。


アメリカ大陸もここに含まれており、ぐちゃっと固まったイメージだ。

環境的変化が乏しく、孤立することもないため、生物は多様化しておらず、サルどころか哺乳類も生まれていなかった。

海から遠い内陸部は砂漠化が進み、浅瀬で海洋生物がうごめいている。


地上は爬虫類全盛だ。


爬虫類学者は飛び上がって喜んだが、ホールから大陸が遠いため、キャンプも設営困難であるため閉鎖することとなった。


ルシファー様が諦めてくれると嬉しい…



第14世界は地球型の動物世界だった。

仕方がない、現生人類史など5000年程度なのだ。

閉じようとしたときにゼウス様から連絡が入った。


「サルを入れて10万年ほど早送りしたようです。確認してください」


第14世界は氷期に突入していた。

北から逃れてきたマンモスが跋扈している。

これはこれで、学者さんには嬉しいようだ。


ここでは原人型の人類が数種類発生し、少数ながら洞穴で暮らしていた。


俺は洞窟の奥にゼウス像を設置し、火を与えてやった。

入口に戸を作り、暖炉をつくり、煙突で煙を外に逃がす。

生き延びてくれることを祈るばかりだ。


学者さんが飽きるまで、時間ができた。


第三世界を覗くと、何とかルシファー様の威光は続いていた。

店の補給はクロウに任せてあったのだが…、牛丼のたれの樹液を出す木が生えていた。


エルフの店の横には、マヨネーズと豆腐の実がなる木が生えている。


どうやら、ルシファー様に与えられた能力らしい…


焼酎の木はどうなんだ。ひょうたん型の実がなって、中に焼酎が入ってるぞ。


同じパターンで薬草の木とか作るなよ…。

薬草だと思ったら焼酎だったなんて…、似たようなもんか。


だが、その能力いいな。

別の世界でも作らせよう。




第4世界の真秦におけるゼウス様浸透はいまいちだった。


俺は大理石を切り出し、巨大な座像を町の真ん中に据えた。

足の部分を切り抜いて、牛丼屋を開店させる。


「クロウ、牛丼のタレの木を作ってくれ」


「シュウ、心配無用です」


サクラは水道の蛇口を取り出して壁に突っ込んだ。

蛇口をひねると牛丼のタレが出てきた…


「ここは、無理に作った世界ですから、多少の無理は問題ありません。

これも、ゼウス様の奇跡です」


まあ、奇跡っていえば奇跡か…


「ついでに、親子丼のツユの蛇口も作りましょう。

これで、親子丼も提供できます」



インドも同じように石像と牛丼店を開店させた。

ここも、鶏がいるから、親子丼も提供できる。



鶏は東南アジア原産だから、メソポタミアとエジプト・ヨーロッパには入っていない。

牛は水牛だから水牛ドンだ。


「あとは、パスタかパンがいいな」


サクラはミルクの出る水道を作り、パンノキをを生やした。

枝により、あんパンやクリームパンがなる…

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