第49話、インダス文明って衰退して…元会社員には分らんよ

オーストラリア・中東・インドのコースに当たったのはイランの民放だ。


「今回はサービスでこれを連れてきました」


「えっ、これってジェルボアですよね」


「ええ、正式名はパルキスタンコミミトビネズミ、通称ピグミージェルボアです。

現代社会でもパキスタン南西部の砂漠に住んでいて、この世界でも同じようです」


「かわいいですよね」


「この世界って、文明があまり発達していないので、どうしてもこういった動物に注目が集まっています。

実は、このジェルボアもワシントン条約で輸出入が禁止されていて、ペットで飼おうと思っても飼えないのが実情ですよね。

この世界は動物天国みたいな一面がありますから、そこを少しでも緩和かんわできないかなって考えているんですよ」


「でも、それって現実社会との密猟の線引きが難しくないですか」


「ええ、ですから、動物園などで繁殖させてもらって、国内の流通を増やせないかなって考えているんですよ。

例えば、これから行きますけど、コアラなんてこちらではもうすごい数いますからね」


「それ、実は楽しみにしてたんです」


「じゃあ、さっそく出かけましょうか」


「はい」




「さっそく出ましたね」


「きれいな…カンガルーですか?」


「ミカヅキツメオワラビーです。1900年代の初めに絶滅したワラビーです。

すみません。オーストラリア政府から捕獲を頼まれているのでちょっと時間をください。

よかったら、引き渡しのところも撮影してもらっていいですから」


「はい」


俺は3匹のミカヅキツメオワラビーを捕獲し、クルーと一緒に現代のオーストラリアに瞬間移動し政府に引き渡した。


「イラン〇〇放送のキャシーです。

すこしインタビューさせていただけませんか」


「いいですよ」


「シュウ氏からは、これまでもこうやって動物を受け取っているんですか」


「ええ、オーストラリアでは、1900年代に絶滅させてしまった種が多いですから、この一週間で何度も来てもらっています」


「この活動を、どうお考えですか」


「100年前は、動物なんていて当たり前だった。こんなに簡単に種が滅びるなんて考えてもいなかったんでしょうね。

簡単にいえば人間の贖罪しょくざいですよ」


「例えばこのワラビーは復活できるとお考えですか」


「これが30頭くらい集まれば、なんとしてでも復活させますよ。そして、それはシュウさんに頼り切っていることでもあります。

でもね、こんなに綺麗で可愛いワラビーを絶滅まで追い込んでしまった。

我々は反省して、今絶滅の危機に瀕している動物を含めて助けていきましょうよ。人類全体が一丸となって」





「すごい。本当に多くのコアラが…」


「でしょ。こんなに可愛い動物を殺せる人間て何なんでしょうね。

でも、ここは少し増えすぎかもしれません。現世で受け入れてくれるといいんですけど」


「あの、知り合いがいる動物園で、コアラを欲しがっているの。一度イランへ行ってもらえないかしら」


「でも、撮影は…」


「ドキュメンタリーよ。多少のハプニングがあったほうがいいわ」


「イランですね、いいですよ」


シュン!


「もしもし、私、キャシーよ。

コアラ欲しいって言ってたけど、ホントに連れて行っても良いかしら。

うん。じゃあ、これから行くわ」




という事で、イランの動物園で受け入れてくれる事になり、何度か往復します。


「子供たちが喜ぶわ、ありがとうね」


「コアラたちにも、抱かれることを伝えてありますから、高いところにいるのを無理におろさないでください。

また、近いうちに様子をみにきて、コアラたちから直接感想を聞きますから」


「お願いします。

キャシー、その子をそろそろ離してちょうだい」


「だって、コアラを抱ける機会なんて…」


「うちに来ればいつでも抱けるんだから」


「くっ、宣伝までされちゃった…」




「まさか、地元の動物園に30頭ものコアラが行くとは思わなかったわ


「局で、宣伝費を請求したらどうですか」


「少なくとも、CMは入れてもらうわよ」


「さて、海岸線沿いにインドネシアとシンガポールを通ってインドに入りますよ」


「お願いします」


「あっ…」


「どうしたの?」


「インダス文明は確認して、この間撮影したんですけど、そういえばインダス文明は砂漠化によってガンジスに移ったんですよね」


「現代の歴史ではそうよね」


「ガンジス流域は見てないです、行ってもいいですか」


「もちろんよ!」




「うわあ、やっぱり…」


「そうね…、もしかして、仏教とか起こっていたりして…」


「エジプト並みの規模ですね。

ちょっと降りてみましょうか」


「いいの?」


「来たからには、様子を見ておきたいですから」




「ここは何という国ですか?」


「マガダだ。お前たちは空からやってきた。

神なのか?」


「いえ、こことは違う国の神の使いです」


「ならば、王にあっていくか」


「会えるなら会いたいです。

ところで、宗教はありますか?」


「バラモン教と仏教とヒンズー教があるぞ」


「あれは、サトウキビですね?」


「ああ、ここでは砂糖が豊富にとれるぞ」


「王様は今いますか?」


「多分、宮殿にいる。案内しよう」


「お願いします」




「ここは、マガダという国で、バラモン教と仏教とヒンズー教があるそうです。

今、王様に会わせてくれるそうで、案内してくれるそうです」


「すごい。新たな文明発見と、王様の謁見ね!」



「お前たちは何者だ?」


「東の国から海を越えてきました。東の国の神の使いです」


「何をしにきた」


「こちらに砂糖があると聞き、何かと交換できないかと思ってきました」


「そちらには何がある」


「そうですね、トウモロコシという穀物や、豚という家畜など、多くのものがあります。もし、湯を沸かしてよければ、このトウモロコシを調理しますので食べてみませんか?」


「湯なら沸いているであろう、試してよいぞ」



この場でトウモロコシを皮ごと茹でて提供します。


「おお、この触感とほのかな甘み。これはこの地でも栽培可能か?」


「種もこの通り持ってきていますから大丈夫ですよ」


「その一袋と、砂糖10袋の交換でどうだ」


「契約成立ですね。

今度、もっと色々なものを持ってきますから、また会ってくれますか」


「うむ、歓迎するぞ」




「ふう、うまく交渉できましたよ。

これからも会ってくれるそうです」


「シュウさんって、場慣れしてるというか、すごいですね」


「ああ、カメラ越しに見ていても、本当に一国の代表として接しているのがわかったよ」


「まあ、実際一国の代表をやってましたからね。

ついでにエジプトへ行っていいですか。

砂糖をあげてこようと思いますので」


「ビビ王女様ね!

この間の放送で見たけど、きれいな人でしたね。すっごい反響だったから、視聴者も喜ぶわ」




「ビビ、こちらキャシー。

東の国で砂糖を仕入れてきたけど、要るかい」


「砂糖とは何じゃ?」


「指につけて舐めてごらん」


「どれ…、おお!甘いぞ。蜜のようじゃな」


「料理とか、パンに練りこんでもいい。

粉だから、使い勝手もいいと思うよ」


「10袋もあるのか!

だが、こちらは何を提供すればいい」


「今のところは何もいらない。

今後、この世界の中で交易を盛んにしていこう。

そのための準備だと思ってくれ」


ファラオに会っていけ。礼をさせるから」


「うん、この二人も一緒だけどいいかな」


「もちろんじゃ」


こうして王様にも謁見できて、この日の撮影は無事に終わった。



「ガンジスの文明か、私も迂闊うかつだったよ」


「それで、次期ファラオの座を砂糖10袋で買い取ったと」


「やめてくださいよ。

あれが放送されたら、嫁たちに殺されますよ」


「まあ、4人も5人も変わらんだろう」


「向こうの世界では、一夫三妻制で、マーメイドは別枠だからいいんですよ。

今の状態は法的にも問題ないんです」


「冗談はさておいて、ガンジスの文明か」


「ええ、インダス文明の本拠ですね」


「インド、エジプト、中東に声をかけて、本格的に駐留してもらうか」


「ですね。どのように接するかは一任で」


「となると、残りのあそこか」


「どうしましょうかね…」

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