俺の部屋が異世界に転移したみたいだ‼

モモん

第一章 帰れない

第1話、どこだココは!

 とある日の朝。

いつものようにトーストを頬張りながら、朝のワイドショーでニュースをチェックする。そして、歯を磨き顔を洗い、ネクタイを締めて家を出た。


 2Kで家賃7万円弱の平屋建て借家なのだが、若干郊外にあるため、玄関を開けると小さな林が……いや、鬱蒼とした森があった。

思わずドアを閉めると、ドアポストからヒラリとメモ用紙が落ちた。



***********


予想外の事態が起きた。

復旧するまで時間がかかるので、一人でなんとか生き抜いてほしい。

そのためのスキルは与えた。


神……神の字を二重線で消し、Goodと書いてあった。


***********


 神という苗字の同僚はいるが、区民だ。こんなところまで来る筈もない。

まさかとは思うが、Godの書き間違いだろうか……


 深呼吸し、もう一度ドアを開ける……

家の前には未舗装の道が横切っており、その向こうには数十メートル級の樹木がまばらに生えていて、数メートル級の木で構成された森になっている。

道を行くのは30cmほどのスライムと思しき生物。


 プルプル震えながら移動するのを見て、田舎の祖父じいちゃんを思い出した。

ああ、祖父ちゃん元気でやってるかな……

いや、感慨にふけっている場合じゃない。会社に遅刻してしまう。


 つうか、どこだココは……

振り返ると、7~8mほどの崖があり、家の正面だけそこに張り付いている。

そこで違和感に気づいた。

TVは映ったな……照明も点いた。

携帯は……無線LANを表示しているが会社には繋がった。体調不良で休暇にしてもらおう。


 さて、時間はできたから、謎解きの時間だ。

体は小学生……いや23歳、健康な会社員だ。

頭脳は、立派な会社脳。

多少童顔だが、彼女はいない。

年収380万円……もういいだろう。一般的な会社員だ。


 ちなみに、サラリーマンという言葉は好きじゃない。

なんだよ給料男って。

コメディ映画から生まれた自虐ネタを定着させてどうすんだよ。



 さて、本題に戻ろう。

窓は開かないが、ガラス越しに岩が見える。

電気はきており、光ネット回線も使える。

携帯は、10m以上家から離れると繋がらない。

無線LANの範囲だ。


 あのメモから察するに、俺の家だけが別の世界に飛ばされた……いや、電気が使えるってことは、中途半端な状態。

例えば狭間の世界みたいなもんかな。


 これは……ついに俺にも異世界転移ってやつがヒャッハーなのか。

ライトノベルなんかでテーマになったりするやつだ。


 実は異世界ってやつに憧れていて、しっかりと準備できていたりする。

武器、保存食、サバイバル用品は押し入れに入っている。体も鍛えてあるし、サバイバルのノウハウも学んできた。


『ウニャー、シュウ起きたかにゃー』


『起きたのですか……』


「ああ、おはよう……ってか、なんで喋ってるんだ?」


『昨夜、神様って人が、シュウを助けてやってくれって、色々出来るようにしてくれたにゃ』


『そうです。スーパーキャットになりました』


 にゃぁとか言ってる方がクロウ。

雑種のクロネコ、2才♂だ。

もう片方がノルウェージャンフォレストキャットのサクラ。

2才♀だ。

どちらも去勢済みの我が家の家族である。

ちなみに、俺の名前は末永 修(シュウ)。23才独身である。


「そうか、やっぽりあのメモは神様なんだ」


Goodなんて書く神様に若干の不安を感じるが、スキルってやつに期待するか。


「ここが何処なのか聞いているかい?」


『知識面は、私の頭ん中に入っています。

ここは元の世界とはまったく別の世界よ。

国という概念のない世界。

小さな町が集まってユーフラシア郡を形作っているけど、権力の集中はない。

郡も、単なる情報共有の場所ね』


「一番近い町と、文化レベルは分かる?」


『西に20km行くとゴルという町があるわ。

ヒューマノイドタイプの混在する街よ。

文化レベルは……そうね、西暦が始まった頃の地中海沿岸といったところかしら。

ただ、魔法が存在するので、少しチグハグな面があるかもね』


「さっきスライムみたいなのを見かけたけど、モンスターとか存在するの?」


『イメージとしては、シュウの好きなドラ○エみないな感じかな』


「俺のスキルについて、何か聴いてる?」


『特には聞いていないけど、具体的な質問をしてくれれば答えられると思います』


「スキルはどうやってみたらいいの?」


『右耳の後ろをポチっと押してください』


「右耳の後ろ……ポチっと……おお、出た出た!」


**********

【ステータス】

名前: 末永 修

職業: 会社員

年齢: 23


体力: 9/9

魔力: 9/9

攻撃力: 9/9

防御力: 9/9

武器: なし

防具: 布の服 +1


skil:ステータスエディット LV.1


従魔:ブラックキャット   LV.23

   フォレストキャット  LV.23

**********


「ステータスエディットって事は、自分で書き変えられるって事?」


『はい。そのようです。

ちなみに、年齢以外の数値は16進数だそうです。

レベル1では1byt……ゲフン、1桁の数値しか使えないようです。

それから、ステータスエディットを使うには、Bluetooth 対応のキーボードが必要です。

キーボードの認識と同時にエディターが起動します』


「えっ、俺の体って、Bluetooth 対応になったの……?

もしかして、ウォー○マンとかもイヤホン無しで聞けたりして……」


『回答不能です』


「1桁で16進数って事は、マックスがFって事か……

ちなみに体力とかの9って、この世界レベルではどうなの?」


『成人男性で20くらいですね、10進法で』


「えっ、初期設定で標準の半分なの……オレ、激弱じゃん……」


 幸い、スマホ用のキーボードがあったので、入力していく。

体力や魔力は最高値の ”F”。

装備やレベル欄は書き換えできなかった。


 新たなスキルとして以下を書き足した。


鑑  定: 音声発動「カンテイ」もしくは対象に意識を集中する。

      対象のステータスや本質を視界内に表示する。

無限収納: 音声発動「シュウノウ」、排出時は「デロ」。

      占専用空間に生物以外を収納もしくは排出する。

      時間経過による劣化を防止する。

絶対防御: 常時発動、物理・魔法の攻撃を受けても全て自動で反射する。

攻撃倍々: 自動発動、一度の戦闘で、攻撃する度に攻撃力が2倍になる。

体力・魔力回復: 常時発動、一歩歩く度に、1ポイント回復する。

状態異常無効: 常時発動、全ての状態異常を無効化する。

治  癒: 音声発動「チユ」、あらゆる傷を治療する。

蘇  生: 音声発動「ソセイ」、5分以内であれば死者を蘇生できる。

幸せの祈り: 音声発動「ハッピー」、周囲の者を癒す。


とりあえずこんなもんで大丈夫だろう。

あとは攻撃魔法か……


火  球: 人差し指を伸ばした状態で音声主力「バン」。

      大きさ5cm、2000度の火球を時速300kmで打ち出す。

      射程距離50m。


……えっ、レベル1では10項目までって……まあ、不都合があったら書き換えるからいいか。


 あれ、もう昼か。

カップ麺でいいかな、猫たちにもエサをあげて……午後は装備をチェックして少し歩いてみようかな。

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