第5章 古代アメリカ文明

第56話、マヤ文明との接触

翌日、俺はリーダーのハリスさんと二人でイギリスの拠点を訪れた。

いきなり飛んでいくと驚くだろうから、少し手前から地上を走行していく。


いきなり現れたのが多目的装輪装甲車パトリアAMVだ。

パニックで撃たれたのは仕方ない。

だが一発だけで、撃った男は周りの者が抑えてくれていた。


先の俺が下りて話をする。


「話がしたいんだが大丈夫か」


「ああ、すまない。こいつは気が小さくてな」


俺はハリスさんに手を振って大丈夫だと合図する。


建物内の会議室で話を始める。


「我々はアメリカという国からやってきました。

私はリーダーのハリスです」


「イギリスのスコットだ。

アメリカというのはこの大陸の事なのか?」


「ええ、アメリカ大陸。私たちはそう呼んでいます」


ハリスさんは、並行世界のことを話し、中央部の文化には干渉しないように頼んだ。


「にわかには信じられない話だが…」


「この地図をご覧ください。

今はこのニューイングランドという場所です。

中央のこのエリアに三つの文明があります。

私たちの世界では、植民地政策でここを滅ぼしてしまいました。

ここに手をつけるのはできれば一年待ってもらいたい」


「だが、我々も国の政策で来ている」


「そこは承知しています。

できれば各国の代表と話をしたうえで、この地域を保護していきたい。

これから、ヨーロッパ各地を回って調整してきますので、一週間待っていただきたいのです」


「まあ、その程度なら」


ここで判明したのは、14世紀のペストで、我々の世界は25%の人口を失ったが、この世界では75%だったこと。

そのために、回復が500年遅れたそうだ。



俺とハリスさんはその足でイギリスに向かい、状況を説明する。

イギリス政府は暫定的に待つことを約束してくれた。

交換条件として世界地図を提供したのだが。

次いでフランスとスペインの政府にも協力をお願いし、三日後イギリスで会議を開催することとなった。

参加国はイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、ロシアの5か国。

この5か国が植民地政策をとっているらしい。



「我々の世界では、このモンゴロイドによる文化を完全に滅ぼしてしまいました。

どうか、この文化を研究するための猶予をいただきたい」


「もし、断ったら」


「そんなに殺人がお好きなら、相手をしてあげてもいいですよ。

僕もモンゴロイドの子孫ですからね」


「なに!

この5か国と戦うというのかね」


「シュウくんやめたまえ。

あくまでも平和裏に進めていこうではないか」


「徴発されたんですから、それなりの決意を見せないと駄目ですよ。

あちらにとって、我々の持つ情報はそれだけ魅力的なんです。

どこにどんな資源が眠っているか、時間と金をかけなくてもいいんですからね。

逆に言えば、それさえ分かれば民族なんてどうでもいいんです」


「あはは。よく分かっているね。

その通りだよ。

君たちは研究結果に満足できて、我々は余計な投資をせずに結果だけを受け取れる。

どうだい、その条件で」


「少し、検討する時間をください。

何も、金のありかじゃなく、例えば航空機の設計図でもいいんですよね」


「こ、航空機が実用化されているのか」


「ええ、あの車両にも価値があるでしょう。

水陸両用で、あの形態で時速100kmで走行可能です。

例えば、あの車を先行したイギリスに2台、それ以外の国に1台提供するとかですね」


「あの車なら2倍にしてほしいね」


「じゃあ、金鉱の場所か、航空機の設計図か、車の現物ってことでいいですね」


「ああ、3日以内に回答をもらえれば、それで半年待とうじゃないか」




「どうでしょう、こちらで金を掘り出して、その金で車を購入して渡すというのは。

もちろん、渡すのは…、そうですね3か月後では」


「だが、金の採掘となるとそれなりの期間が…」


「場所を指示してくれれば、僕が回収してきますよ」


「そうだな。航空機の設計図となるとそれなりの手数が必要になる。

一番影響の少ないのが車か」


「ええ。車ならプレジデントの了解だけでいいでしょう。

それに、金が余分に入手できるでしょ」




車の案が採択され、プレジデントの許可をとって金の採掘に向かう。

収納で金だけを約3トン回収し、車を発注する。

各国は半年の間に、出発の準備を整え、イギリスだけはニューイングランドの開拓を進めている。


三か月後、多目的装輪装甲車パトリアAMVを各国に引き渡し、残り三か月の確約を得た。



この世界でも、戦争は起こっていなかった。

アジアの植民地化も遅れており、日本は軍事国家だった。


少しは日本に入れ知恵しようと思ったのだが、興ざめしてしまった。


だが、日本は敗戦を経験したからこそ、あれだけの発展があったともいえる。

複雑なところだが、俺は日本に接触するのをやめた。



その代わりに、俺はマヤに接触した。

既に、学者さんたちはペルーに向かっている。

驚いたことに、マヤの一部では魔法が使われていた。

石器の表面を滑らかにしたり、鋭利な面を出すときにだ。


「魔法なんですが、実はもっといろいろと使い道があるんですよ」


「教えてください!」


「例えば、治療です」


俺はナイフで自分の指を切り、治癒を施す。


「す、すごいです」


「実際に体の構造や、病気の内容が分かっていれば、より効果的に治療できます。

そうですね、病気の方とか重いけが人とかいらっしゃいますか?」


俺は治療院に案内された。


「『診断!』

この方の場合、出血を止めて、皮膚の表面を治療するのがベストですが、同時に傷口のばい菌を殺す必要があります。

『治癒!』『クリーン!』『治癒!』

この3ステップで治療完了です」


「単に治療だけでなく、そのあと別の病気になるのを防ぐんですね」


「そういうことです」


今教えているのは、巫女のミュウという娘だった。

俺が神の使いだと名乗ったことで、彼女が俺の専属となったのだ。


「移動にはこれを使いましょう」


「こ、これは?」


「スカイボードといって、空を飛ぶ道具です」


「シュウさんは空を飛ぶ乗り物で来られましたよね。あれと同じですか」


「そうです。飛行の魔法を書き込んだ魔道具です」


「魔法を物に書き込むこともできるんですね」


「ええ。まず板の上に乗って、右足をこのベルトで固定します」


「こ、こうですか」


「そうしたら、足から板に魔法を流してください」


「わわわっ」


「落ち着いて。

右足に体重をかけて、左足を少し持ち上げると上に、左足を下すと下方向に移動します。

そうそう、魔力はゆっくり流してください。

魔力の量を増やすとスピードがあがります」


「えっと左足を持ち上げて…」


「うまいですよ。少しスピードをあげてみましょう」


二人で海に出てスカイボードの練習をした。


「あっ、鯨です!」


後期マヤの中心は、ユカタン半島になる。


十分に制御できるようになったため、俺たちは町に戻って別の治療院を訪れた。


「うん、この患者さんは食あたりですね。

この場合、クリーンで原因となるものを取り除いてから、炎症を起こしている個所を治療します。

『クリーン!』『治癒!』

これで治療完了です。帰っていいですよ」


「へっ…治ったのか…」



ミュウにも治癒とクリーンを試させて、魔法で治療できることを実感させる。


今回、俺は妻帯者で、これ以上嫁をとることはできないと伝えてある。

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