第47話、絶滅動物を復活させろって、元会社員だっつうの

「ちょっと待ってくれ。

我がT国の黄河文明や揚子江文明はどうなっているんだ!」


「まだ接触してませんけど」


「なにをグズグズしてるんだね。

わが偉大なる文明を軽視しているのかね」


「おや、あなたはどういった方面の?」


「社会学者だ」


「諜報部の?」


「な、なにを…」


「国家情報局で第3チーム所属の趙さんですか。

おや、〇〇氏の暗殺にも関与されて、〇氏暗殺の実行犯ですか」


「ば、馬鹿なことを…」


いきなり手を握ろうと両手を伸ばしてきたので、直前でかわし逆に両手をあわせてあげるように包み込んだ。


「な…グッ」


ですか。僕は別に強心剤とか必要としてないですよ」


「ぐっ…」


「軍曹さん、殺人容疑現行犯です『クリーン!』

この指輪に毒針が仕掛けてあります。

体内の毒は除去しましたから連行してください」


「さて、もうお一方は…

地質学者の方ですか。どうされます?」


「わ、私は何も…知らなかった…」


「ええ、このまま残るか、お帰りになるかですけど」


「の、残ってもいいのかね」


「ええ、T国の方でも、優秀な方は多いですから、残られるのなら歓迎しますよ。

今後T国に声がかかるのは難しいでしょうから、多分最後のチャンスです」


「残る、残らせてもらうよ」


「この際ですから皆さんに行っておきます」


声を張り上げて全員に伝える。


「政治目的や妨害工作のために来られた方は、今すぐお帰りください。

真剣に取り組もうとしている皆さんの邪魔ですからね」


帰る人はいなかった。




一通りのセレモニーが終わったところで、ハリスさんにエジプト代表と別行動する旨伝える。


「ああ、こっちはヘリでアメリカ縦断の予定だから、エジプト組は別行動でも問題ない。

どうだろう、ほかにもエジプト文明の専門家がいたら同行させて欲しいんだが」


「こっちは、それほど多くなければ問題ありませんよ。

瞬間移動で行くつもりですから」


「おお、助かるよ」


エジプト希望者は、エジプト代表を入れて7人だった。

全員に手をつないでもらい瞬間移動する。


シュン


「おお、ここが古代エジプトかね!」


「うーん、現代エジプトなんですけど、なんと呼びましょうか」


クスクス


「単純に王国でいいじゃありませんか」


ビビ王女とメンバーを引き合わせ、何とか言葉が通じるようなのでチーターを捕まえに行く。

今回はアジアチーターを捕獲しにいく。

アジアチーターは、残り数十頭しかいないのだ。


イラン高原を横切りインドに向かう途中で2頭のチーターを捕獲した。

瞬間移動で現代に戻り、事前に連絡しておいたチーターの保護施設に引き渡す。

これを繰り返し、この日は12頭のチーターを現代に送り込んだ。


夕方になってエジプトに戻ると、みんなすっかりビビ王女と仲良くなっていた。

ビビ王女にはお礼にステンレス製のナイフを寄贈した。


「いいんですか、文明を持ち込んだりして」


「別に、これで僕たちの世界の歴史が変わるわけじゃないですよ。

それに、あの一本が世界を動かすとも思えません。

僕のユーフラシアなんか、牛や鶏や豚とか、とんでもない影響を与えていますし、それは現地の者も受け入れています」


「それに、シュウさんは使ですものね。

ファラオを治療したことは、ナイフなんかよりももっと大きな影響を与えているかもしれないですよ」


「どうなんだろう、私は抵抗があるな」


「それでいいんじゃないですか。

僕の価値観を押し付けるつもりはありませんし、もし仮にいけないことをしているのなら、何かしらストップがかかると思っていますから」


帰りはワゴンで周囲の景色を楽しんでもらっている。


翌日からは完全に自由になる。

帰ってもいいし、残って手伝うもしくは自分の研究に入ってもいい。

俺は依頼の入った動物の捕獲だ。



まずは、モーリシャスでドードーを20羽捕獲。

眠らせて簡単に捕獲できた。

ドードーは大柄の飛ばない鳥だ。

ダチョウよりもドテっとしてる。

現代のマダガスカルに瞬間移動。

モーリシャスなんて行ったことないからマダガスカルから飛ぶ。


政府に引き渡し、記念写真を撮って完了。



次はオーロックス。依頼元はスウェーデン政府。

大型獣用に作った特殊車両で5頭づつ4回に分けて運びます。

バッファローのような牛だ。



今日最後は、クアッガ。南アフリカからの希望で、体の前半分がシマウマで、後ろ半分が茶色のシマウマだと…。

写真を見て、こんなのがいたんだと驚きましたが、本当にいた。

これも5頭づつ4回に分けて運びます。


ふう。


19時のミーティングで報告。完了です。




翌日は、日本からの要請だ。


ニホンオオカミ、ニホンカワウソ、トキ、できればエゾオオカミ。


まずは九州から北上していく。ニホンオオカミ、ニホンカワウソともに個体数は多く簡単に捕獲。

一度現代に戻り、上野の動物園にお任せ。


トキは捕獲してから佐渡島に引き渡したが、中国から導入した個体とどう区別するのだろうか…。


最後にエゾオオカミである。


とりあえず、北海道で見つけたオオカミ20頭を旭川の動物園にお願いした。


さて、あとは個人的趣味である。

対馬に行き、を10つがい捕獲する。

キタタキは、キツツキの一種だ。

これを、対馬市に持ち込んで了解を得たうえで放鳥する。

喜んでくれましたよ。

1920年以降の目撃例がないんだから。


もう一つ、ハワイに立ち寄る。ムネフサハワイミツスイだ。

黒地に黄色の飾り羽が美しく、乱獲や病気で1934年に絶滅している。

花の蜜を吸うだけのおとなしい鳥である。

これも20つがい捕獲し、ハワイに寄贈する。

というか、了解を得てした。




そして翌日。

ニュージーランドでジャイアントモア、ハーストイーグル、ワライフクロウを捕獲。

すべて、ニュージーランド政府に引き渡した。


午後はオーストラリアである。

フクロオオカミを筆頭に、ワラビーとカンガルーの絶滅種を捕獲。


これで、サイと大型ネコ化を除き絶滅種の依頼は完了した。


サイと大型ネコ科動物は、どちらにしても絶滅種か絶滅危惧種だ。

もともとの生息数も多くないため、密集していたら捕獲する程度にしておく。




あとは個人的趣味の世界だ。

南アフリカでクロアシネコを捕獲し、ゴビ砂漠でハイイロネコ。

アルゼンチンの高地でコドコド。コルシカ島のキツネネコ。


もう、モフり放題である。


ただし、我が家にはおいておけない。

ピグミーマーモセットや狩られかねないからだ。

仕方なくキャンプで飼うことにしたのだが、動物園に引き取られてしまった…。

キャンプにはオセロットだけでいいというのだ…


せめてと頼み込んで、チーター一頭を許可してもらった。

ああ、世界中がネコ科で溢れればいいのに…



よく、イヌ派かネコ派かと聞かれることがある。

ナンセンスである。

どちらもイイに決まっている。


ただ、これだけは言える。

イヌの毛とネコの毛は違う。

ネコの毛は柔らかいからモフリの対象なのだ。

特に長毛種の柔らかさはかけがえのないものだ。


それから、ネコはベタベタしないで一線を隔ててるとこがいいとか聞くが、そんなものは個体による。

うちのクロウは、平気で俺が寝ている上を歩くし、寝ていると布団の中に入ってきて、俺の腕枕で寝る。

平気でイビキをかくし、寝てる最中に爪を立てる。

おかげで、左の脇腹はが絶えない。


だが、可愛いから許してしまう…

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