第6章 魔界と神々の戦い

第61話、神

一通り動物を捕獲し、あとはバンパイアたちに任せることにした。


「やっぱり、魔界だけが違う。これから行ってみるが、万一の時は子供たちを頼むな」


「シュウ…」


「先延ばしにしても、いつ攻めてくるかわからないんだ。

それなら、こっちから攻めたほうがやりやすい」


「…わかった」


「じゃあ、行ってくる」


嫁たち全員を集めて魔界行きを告げた。

流石に何があるか分からないからだ。


シュン!


荒涼とした岩だらけの世界。

そこを多目的装輪装甲車パトリアAMVで飛んでいく。

中国から天山山脈を抜けてヨーロッパに向かうが何も出てこない。

ギリシャを抜けメソポタミアにそれはあった。


バベルの塔…


多目的装輪装甲車パトリアAMVが強制的に着陸させられる。

下から登って来いってか。

一階から中に入っていく。

いわゆる悪魔と呼ばれる尻尾と蝙蝠の羽を生やしたものが数体。

簡単に切り伏せるとエフェクトを残して消滅する。


2階には大蛇を手にした男。36匹の小悪魔が横にいる。

これは魔法を直接ぶつけたら消滅した。


ゲームのような意図的な構成を感じる。


3階には書物を手にした男と36匹の小悪魔。

開いた本のページと小悪魔が同時に襲ってくる。

最初の1ページ目が物理障壁を無効にするが、俺は難なく男と小悪魔を切り伏せる。

物理障壁は再生しなかった。


4階は美形の男が26匹の小悪魔を引き連れていた。

これも問題なく屠る。


これは、ソロモン72柱を模したイベントだろうと考えられた。

2階はアンドロタリウス

4階はセーレ

6階ベリアル

各階自体は大したこともないが。

ところどころでスキルを無効化され、73階に着く頃にはすべてのスキルを封じられていた。


74階にはルシファーと思しき悪魔が鎮座していた。


「どうかね、72柱はオモシロかったろう」


「な、何のためにこんなことをする」


「単なる退屈しのぎだよ。

想像してみたまえ、永劫の時を生き、無限の力を持つものが何を欲するか」


「何のために呼んだ」


「メッセンジャーになってもらうのさ。

死体でね」


「…」


「あはは、冗談だよ。

君たちの神に伝えたまえ、一年後に戦おうと」


「神と…たたかう…」


「僕とあいつは同じ存在なんだよ。

そして、何千年かに一度世界の管理者の座をかけて戦い、勝ったほうが管理者に、負けたほうが今の僕のように野に下る」


「その戦いが起きた時、僕たちはどうなるんですか?」


「世界の半分は崩壊する。この世界のようにね」


「それは回避できないんですか」


「さっきも言ったけど、我々は退屈しているんだよ」


「半分ずつ分けるとか…」


「戦いそのものが娯楽なんだよ。

それよりも、面白いものを提供してくれれば考えてもよいけどね」


「一年ですね」


「ああ、一年だ」


「どうやって連絡すればいいんですか」


「そうだね、きみのところのクロウにチャンネルをつないでおこう」




こうして俺は帰った。

猶予は一年。


サクラに言って、神様を呼び出して一年というのを伝える。


「回避できないんですか?」


「向こうがやめるというのなら考えてもよいぞ」


「半分ずつというのは?」


「理屈では可能だな」


「…」



俺は嫁を集める。

勿論、ビビも含めてだ。


「神同士の戦いですか…」


「それで、半分の世界は崩壊すると…」


「ああ、どうしたらいいか、みんなで考えよう」


「もっと、世界中の者に聞いてみたらどうじゃ」


「それは難しい。

いざとなったら、俺はお前たちと瞬間移動で別の世界に逃げるつもりだ。

その時に、連れていける人数だけだ。

いつ起こるか分からない以上、この家で暮らしている者だけに限られる」


「瞬間移動で連れてくれば…」


「せいぜい、2、3秒だろう。

ここから瞬間移動して用意した車に戻る。

探している時間はないと思ってくれ」


「チーターはわらわが連れて行こう。

父と母は十分に生きた…」


「俺は、コンゴウさんと先生を受け持とう。

カエデはマリーさんとアカネだ」


「私は兄を」


「いや、ケビンは自分でこさせよう。

コンゴウさんと先生にも瞬間移動をセットして、自分で来てもらう。

俺は、集合できて、かつ宇宙空間でも耐えられるだけの乗り物を用意する」


「そうね、転移した先が崩壊した世界って可能性もあるから」




さて、一時的とはいえ、空気のない場所に出るかもしれないことを踏まえて、全員が乗車可能な箱を作る必要がある。

短時間の呼吸であれば、喚起でCO2吸着フィルターを通し、不足した酸素を補給するために酸素ボンベ3本もあれば足りるだろう。


イメージはサンダー〇ード2号か、横6席、縦10列の60人乗りで窓なし。


ジュラルミンを大量に生成して一気に外観を仕上げる。

動力のないタイヤを取り付けて、ミスリルを下面に重ねた。

運転席には余計な装備を設けずシンプルに仕上げる。

座席を設置してクッションを取り付ければ一応の完成だ。

換気などの細かい部分と駆動系はチーターに任せる。


次はグリーンホールだ。

作って中に入り、地形などを頭にインプットして消す。

これを10回繰り返して、転移先を確保しておく。


しかし、神々の戦いを止める方法などあるのだろうか。

体を持たない純粋知生体…

俺はキャラクター化してみることにした。

片やゼウス、片やルシファー。

俺のイメージでは白対黒。

これを元にして、有名ゲームデザイナーに開発を依頼する。

マルチエンディングで最後は直接対決があり、勝者が決まる。


元々は仲の良かった二柱が、誤解からルシファーを追放してしまう。

少し傲慢なゼウスと純粋で頑ななルシファー。

そんな設定で、どちらにも肩入れできる設定で開発依頼をした。

第三者視点のRPG、当人および第三者を選択できるVRMMO。

小説、漫画もそれぞれ独自に世界中に発注する。


世界は5つに分かれた。

ゼウス擁護派、ルシファー擁護派、中立派、最後は人間が勝つ派、無関心派だ。


これはこれで面白い。

それぞれにスポンサーが付き、アニメ化、映画化される。

そうすると、今度は中立派の中から全滅派が分岐し、6つに分かれたかと思うと、ゼウスと人間の勝利とか、ルシファーと人間の勝利とか、人間だけが滅びるものに派生していく。


それぞれの宗教や国に関係なくエスカレートしていく。


ついには国会に持ち込む国まで現れる。

いや、仕掛けた方としては笑っちゃうよ。


そして、ゼウスの女性化でラブストーリーを展開するものや、逆にルシファーの女性化が現れた。

GLの登場には腹を抱えて笑ったよ。

人間を擬人化して三角関係になったりするのはどうかと思うよ。


そんなことをしていたら、一年なんてあっという間に過ぎた。

やべ、どうしよう…


そしたら、ルシファーが現れた。


『一年猶予をやろう。

そのかわりルシファーに勝たせるんだ』


『悪魔の甘言に惑わされてはいかん。

ゼウスの勝利は決定しておる!』


おいおい…


『今、ここで勝負をつけてもいいんだぞ』


「や、やめてください!

一年で何かしら決着させますから」


『『一年だからな!』』

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