第25話、まさかの義理の娘がマーメイド…

「カエデに子ができました」


「ホントか!」  「まあ!」  「うむ」


「生まれるのは9か月先ですが、僕の世界では子供を産む専用の病院がありますので、そこで産ませます」


「カエデの時は逆子で大変だったのよ」


「そういうのも含めて、事前に確認できるようになっています」


「男の子なのか女の子なのか生まれる前に分かっちゃうんだって」


「魔法なのか?」


「似たようなものよ。育ってくると、おちんちんが付いてるかどうか見えるんだって」


「で、どっちなんだ」


「まだ分からいですよ。もっと成長して形ができてきてからです」


「最初から人間の形をしてるんじゃないのか?」


「まだ心臓もできていないんだって。

大きさも1cmくらいで、これからゆっくり成長していくの」


「それでですね…、申し上げにくいんですが…」


「どうしたの?」


「シュウがね、マーメイドクイーンの伴侶になったの」


「なにっ!」 「まあ!」  「ほう」


「すみません」


「なんで謝るのかしら?」


「ああ、世界全体が豊穣の時を迎えるんだ。

うちの婿がそのカギを開いた。誇らしいことだ。

なにかやましいことでもあったのか?」


「シュウの世界は、一夫一妻制だから、他の女性と関係を持つことに抵抗があるみたい」


「ルシアにしても、隣町の領主の妹だ。我が家にとっても、親戚筋が一気に広がった良縁だぞ」


「そうよぉ、その婿さんが、今度はクイーンの旦那様だなんて…、あら、私ったら、義理の娘がマーメイドだなんて…」


マリーさんは幸せそうだ。


「はあ…、ところで、先生とお義父さんにプレゼントです」


「おお、サンダルか」


ペリペリッ


「ほう、縛る必要がないのは便利じゃな」


「それを履いて外に出ましょう。面白い仕掛けがあるんです」


ここは道場である。

カエデと二人で妊娠の報告にきたのだ。

チートリアルの事は話せない。マーメイドクイーンの事は正直に話したが、拍子抜けだった。


「サンダルに魔力をゆっくり流してください」


「おう」


「絶対にあわてないでくださいね。軽くジャンプしてみてください」


トン


「うおー!」  「ほう」  「まあ!」


「地面を蹴る感じで空中を蹴れば移動できます。方向や高さを意識してくださいね」


「おう」  「んっ」


俺も一緒に飛び上がる。


「高さとか速度に制限はあるのか?」


「魔力の続く限り大丈夫です」


「反転はちょっとコツが要るな。これは練習が必要だな」


「コンゴウ、慣れたら空中戦の鍛錬じゃな」


「できれば、五位までは持たせてやりたいですな」


「そうなると兵の方へも同数必要じゃろうな」


「サイズを確認して作りますよ」




領主邸、会議室である。


「また、面白いものを持ち込んでくれたもんだ」


「これまでと戦い方が変わってくるぞ。

筋肉の使い方が違うから、いまだに全身筋肉痛だ」


「コンゴウ殿に筋肉痛はないでしょう」


「いや、使っていない筋肉を動かさんと、空中で制御ができん」


「では、今後の鍛錬に期待します。

靴は消耗品ですから、壊れたら言ってください。

新しいのを用意しますから。

それで、次の議題なんですが…その、内密でお願いします。

実は、マーメイドクイーンの伴侶になりました」


「「「なに!」」」


「クイーンが出現したとは噂で聞いていたが、まさかシュウ君が伴侶とは…」


「それで、相談役はどうするんだ」


「東の山脈の向こう側の海岸をマーメイドの里にします。

いま、シマガメが向かってきています」


「ゴルの領地にマーメイドの里ができるとはのう」


「サンゴや貝殻の装飾品が流通できますわね」


「次の世代のシマガメが成長するまでの300年ほどですか。

その間マーメイドの保護と、生活の手段を確保してやるのは僕の役目ですから、あらゆることを試したいと思います」


「そうすると、塩づくりの集落は移動させねばなりませんね」


「塩づくりは魔道具で効率的に作れますので、彼らは町の中に店を作って販売させようと思っています。

ドランの町にも塩は必要なので、そちらにも流通させます」


「相談役が来てから、世界が狭くなったように感じるぞい。

当然、海産物も流通するんじゃな」


「うまい肴を期待していてください。

エルフには海藻も流通させますからね」


「そうか、ノリや干物の扱いも増えるんですね」


「この町には、生の魚を食べる風習がありませんので、今日のお昼は生魚を使ったちらし寿司を用意しました。

お酒はいつものワインではなく、日本酒です。

一〇蔵無鑑査辛口です。常温よりも、冷やすか温めて飲むお酒です。

今日は冷やしておきました」


「う、うむ、酒は合格だな」


「もう、ドワーフは本当にお酒一筋なんだから。

あら、これって貝なの、微妙な触感だけどいけるわね」


「白身の魚は美味しいですね。

これはエルフにも人気が出そうだ」


「これって、エビ!なんで甘いのよ!」


「こうした魚介類を養殖して、手ごろな価格で出せるようにします。

さらに干物や煮魚・焼き魚も簡単に食べられるように、レシピと一緒に拡大していくつもりです」


「困りますね。葉物と木の実が主食だったエルフなのに、血の味がしないやしゃぶしゃぶ、生姜焼きなどを求めて町に来たがる者が増えています」


「そうですね。エルフの里にも売店を作りましょうか」


「それよりも、朝夕2往復の連絡便を増やせませんか」


「ふーむ、では、往復便ではなく、町からドワーフの里・エルフの里と巡回するルートを作りましょうか。逆ルートも作って、それぞれ一時間に1本。日に24本の発着があれば十分でしょう」


「できるのか!」  「できるんですか!」


「飛行用のゴーレム艇を作れば可能だと思います。

そうだ、ついでにケビンのところへも連絡便を作ってやろう。そうすれば交流が進みますからね」


「相談役!今までドランとの交流は、主に農業系と土木・建築関係が主体でしたが、それならば服飾ギルド間の交流もお願いできないでしょうか」


「商業ギルドもお願いしたいですな」


「そうなってくると、両方の町の税制もある程度統一しないといけませんな」


「それならば、合併したほうが早そうですね」


「「「えっ?」」」


「セキ領主、それは性急すぎるのでは?」


「シュウ君が両方の町の相談役で、これだけ規模の違う町が今は対等の状態にあります。

しかも、マーメイド族が増え、交通手段が確保されるのですから、人や物の移動する機会は増え両方の町の調整は必須。

今の状態では、協議してから町に持ち帰り、再調整のうえ再協議という面倒な形になります。

ならば、意思決定の権限を持った機関を両町の上に設置する。

例えばシュウ君をトップに据えて、私とケビン君が同格で参加する機関を作ったほうが手っ取り早いですよね」


「連邦制ですか…」


「ふむ、そういう言葉があるのですね。

ドランゴル連邦もしくはゴルドラン連邦。

他の町の加盟を考えるなら、まったく別の名前にしたほうがいいかもいれませんね」




ケビンに連邦制のことを伝えると、喜んで賛同した。


「連邦制か、やっぱりセキさんはすごい事を考えるよな。

両町の代表である俺とセキさんを二番手に据えて、シュウを代表にするか」


「あれっ?それって、あくまでも仮の設定だぞ」


「俺とセキさんのどちらかがトップになってみろ。

やはり自分の町に思い入れてしまう。

その上にくる人材となったら、クイーンの伴侶でありルシアとカエデさんを妻に持つお前しかいないだろう」


「えっ、嫌だよそんなの」


「ゴルの賛同は得たんだろ。

帰ったらうちの首脳陣にも話をする」


「待てって、連絡便が完成してからな」


「飛行艇は十分実用的だ。

せいぜい10人乗り規模だろ。

完成したも同然じゃないか。

どうせ細かい制御系は、メタルガーゴイルを参考にしてチーターに丸投げだろ」


「ど、どうして分かった…」

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