クライマックス1:失われし者へ

アン:「……私達から世界のいろを奪ったのは、ファントムヘイズ、お前が」

メイ:「サイさんを殺めたから。でも、私達のためじゃない。この戦いは」

アン:「あの優しい掌に、もう触れられない哀しみを。怒りを」

メイ:「淋しさを……護れなかった後悔を」

アン:「……一切合切、全部纏めて仇を討つための戦いだ。――覚悟しろ、ファントムヘイズ……ッ!」

ハイド:「……悪いが、負けるつもりはねぇ。来いよ、死神が相手になってやる」

アイリス:「(……これは過去の清算だ。これを振り払わねば、ハイドは前に進めない)

(そして恐らくメイとアンも同じだ。ならば、私のするべき行動は唯ひとつ)

 ……全力で臨むとしよう。例えこの身が傷付こうとも、君達と私達のために」


 アイリスはひずみの剣を構え直す。それは覚悟の証でもあった。


アイリス:「覚悟するがいい。コードネーム、記録保持者アークレコーダーが全てを切り拓くっ!」



GM:戦闘条件を開示します!

 敵はメイとアン。二人は同一エンゲージに存在し、彼我の距離5m地点にアイリスとハイドも同じエンゲージにいる。

 また周囲に展開中のUGNエージェントは戦闘に関与しないものとする。

 戦闘終了条件は『アンかメイのどちらかが戦闘不能』になることだ。

ハイド:相手の行動値は、どちらも14か……結構速いな。

GM:複数体攻撃の手段があるなら、ここで積極的に使っていく事をオススメしておくよ。

 また、クライマックス2も戦闘を予定してるから、そのつもりでね。

アイリス:なるほど。となるとハイドが戦闘のキーになりそうだ。頼んだよ、我が運命共同体。

ハイド:OK、任されたぜ。

GM:それではクライマックス戦闘を開始しよう……!



 行動値

 ハイド:14

 アン:14

 メイ:14

 アイリス:5



GM:戦闘開始っ。ラウンド1、セットアップ!

アイリス&ハイド:宣言なし!

メイ&アン:こちらも無し。


GM:ではイニシアチブ、ハイド・バレンウォート!

ハイド:OK、行くぜ。隠密化しつつ、5m下がる。

 【ハイディングダッシュ】:《陽炎の衣》《光芒の疾走》:マイナー:〈-〉:自動成功:自身:至近:侵蝕率+4:メインプロセス終了時まで隠密状態となる。戦闘移動を行なう。

 そしてメジャーだ。攻撃対象はメイとアン。

 【ファントムバレット・ジェミニ】:《コンセントレイト:ノイマン》《マルチウェポン》《ワンショットツーキル》:メジャー:〈射撃〉:対決:2体:15m:侵蝕率+8:攻撃力+20+4D

 命中判定は(ダイスころころ)達成値31で確定だ。



 複数体攻撃を推奨した甲斐あって、アンにも攻撃が飛んできた。次の宣言こそ今回のクライマックス戦闘では肝となる。しくじらないように注意しつつ……!


メイ:ダメージロール直前に、RDロイス《明色の想いカラーズ・ウィル》を宣言!

ハイド:いきなりか!



 RDロイス《明色の想いカラーズ・ウィル

効果:指定したロイスの対象が戦闘に参加している場合のみダメージロールの直前に宣言可能。ロイス対象をカバーリングする。このカバーリングによって自身は行動済みにならず、自身が行動済みでも使用できる。

 ただし、一度宣言した後は可能である限り必ずカバーリングを行わなくてはならない。また、回数に制限は無い。



メイ:この効果でアンを庇わせてもらう。

アイリス:妹想いだね。

ハイド:くっ……そういう方針で来るか! ならばダメージロールだ。

 (ダイスころころ)装甲ガード有効の82ダメージ。殺意高いな?

GM:この攻撃で侵蝕率が103%……という事はミドル戦闘と同じ条件の筈なのに。

アイリス:何度見てもミドルの火力じゃないね。

メイ:流石に強い……カバーリングで2倍して164点素通し……!



ハイド:「死神の暗殺技術うで、お前達に見切れるか――?」


 挑発の言葉と共に隠密化し、バックステップで距離を取る。しかしそれ以上の策は講じず、両者を同時に狙って弾丸を撃ち込む!


メイ:「アン、下がって!」

アン:「メイ!? このッ――!」


 何処から撃たれるか分からないまま、アンを突き飛ばすように庇うメイ。

 今までならこうした戦闘を行わなかったのか、驚きの声を上げつつアンの手に闇が収束していく――。



GM:イニシアチブ、アン!

アン:【クロマ・ダークネス】:《コンセントレイト:エンジェルハィロゥ》《光の手》《イェーガーマイスター》:メジャー:〈RC〉:対決:単体:視界:攻撃力+20:自身はラウンド間ドッジ不可。

 対象はファントムヘイズ! 達成値は――(ダイスころころ)19。リアクションは?

ハイド:リアクションはドッジを選択するが……判定前に何か宣言がありそうだな。

アン:《闇の指先》を宣言! そのC値を+1する!

ハイド:C値11か。クリティカルが消えた以上、対決で敗北が確定。攻撃命中だ。

アン:よし……ダメージは(ダイスころころ)33点。

ハイド:素通しで受けて、戦闘不能になるが、共犯関係のロイスをタイタス昇華して復活しよう。



ハイド:「ッ!」

 掌に収束した闇が、一直線にハイドを貫かんと放たれる!

 反射的に横へ回避したハイド。だが――


アン:「かかった……がれッ!」


 一直線に放たれた闇が、獲物を追尾するように歪曲わいきょくし死神を貫いた!

 だが彼はアイリスを視界に捉え、立ち上がる。膝を付きそうになる脚を食い縛り、神経を逆撫でする言葉を選んで発する。


ハイド:「がはッ――! ……ハッ、いいのかよ? そんな早々と手札を見せちまって」

アン:「手札は使わなければ意味が無い。ならいつ使おうとも!」



GM:イニシアチブ、メイ!

メイ:【クロマ・ブライトネス】:《コンセントレイト:エンジェルハィロゥ》《光の指先》《滅びの光》《破壊の光》:メジャー:〈RC〉:対決:範囲(選択):視界:攻撃力+17:シーン1回まで使用可能

 対象はアイリス!(ダイスころころ)達成値は33よ。

アイリス:こちらか。良いだろう、ガードを宣言だ。来い。

メイ:ダメージロールは(ダイスころころ)37点。

アイリス:こちらはまだ100%未満なのでな、《リザレクト》だ。

GM:出目は……1。安いな、これで94%か!



 死神の弾丸を受け、ボロボロの身体でメイは光球を飛ばす。

 放物線を描くそれは、オーヴァードにしてはゆっくりとアイリスがいる地点付近へと落ちていく。

 長剣を盾のように構え、衝撃に備えるアイリス。その構えは統制機関を脱する直前に戦闘した相手、ローレルの防御姿勢から学び、酷似させたものだ。しかし――


メイ:「弾けなさいッ!」


 床付近まで落下した光球は僅かな収縮の後に爆発し、周囲を光の衝撃波で埋め尽くす。その威力はアイリスの想定以上で、彼女は壁に叩きつけられた。

 互いにボロボロの身で、なおも立ち上がる。


アイリス:「……やるな」

メイ:「威力に特化させても、まだ足りないようね……」


 実力の不足を感じずにはいられない。それでも戦場に立ち続けるのは、隣にアンがいるためだ。


アイリス:「……メイ。良いのかい?」


 傷付いた身体を引きずりながらも口を開く。復讐に目のくらんだアンには決して届かない声だ。


アイリス:「アンはFHの私から見てもいささか感情的に過ぎる。ここで止めなければ、いつ衝動に侵されてもおかしくない。

 ……それでも、君は彼女と共に歩むのかな?」


 覚悟があるのなら良い。しかしそれが意図しない道であるのなら、その先に待っているのは――絶望の二文字に他ならない。


メイ:「……分かってるわ。幼い頃から衝動とRCを叩き込まれてきたから。アンの事も、私が一番良く分かってる。だから――」


 メイはアイリスに手を差し伸べる。先程の甘いそれではなく、決意を秘めている。


メイ:「だから貴女が、私を倒しなさい。アークレコーダー……いいえ、運命の友アイリス

アイリス:「――分かった。君の欲望ねがい、確かに引き受けたよ。私の友人メイ

メイ:「……ありがとう」


 小さな微笑みは、アイリスだけに届いた。



GM:イニシアチブ、アイリス!

アイリス:マイナーで戦闘移動。メイとアンのエンゲージに突入、そしてメジャー。

 【カタグラフィエッジ】:《コンセントレイト:オルクス》《ディストーション》:メジャー:〈白兵〉:単体:至近:侵蝕4:攻撃力8

 対象はメイ、君だ……判定(ダイスころころ)達成値は35だ。

メイ:ガードを選択。ガード値なんて、無いけれどね。ダメージを。

アイリス:(ダイスころころ)装甲ガード有効の30点だ。

GM:メイの累計ダメージ、194点。14点オーバーによりメイ、戦闘不能!



 ひずみの剣を一時収納し、無手の状態でアイリスは疾駆する――その視線はまっすぐに揺らぎ無く、メイを見つめていた。


アイリス:「――ハッ!」


 数瞬で距離を詰めたアイリスは再び剣を取り出し、メイに向ける。

 だがその構え方はいびつ極まりない。逆手に持った剣で、メイの胴体を駆け抜け様に一閃。

 力の込められない姿勢では致命傷は与えられない。だが、血飛沫ちしぶきだけは派手に上がった。


アイリス:「……悪く思うな」

メイ:「う……くっ――」


 ただそれだけをアイリスが告げると、メイは苦悶の呻きを上げ膝を突く。

 戦闘続行は不可能。誰もがそう捉えるだろう。


アン:「メイ……メイっ!?」


 そうしてようやく、アンはファントムヘイズからメイへと視線を移した。

 メイを庇うように屈む彼女に、静かに剣が突きつけられる。


アイリス:「さて。メイは倒れ、こちらは健在だ。降伏するかい、アン?」

アン:「ッ、……降伏、する」


 強く歯噛みするも、小さな声で呟いた。


アイリス:「なら、戦いはこれで終わりだ」


 勝者として、アンの復讐を捻じ伏せる。その無念は晴れないが……メイを想って留まれるなら、きっと大丈夫。

 表情には決して出さないが、剣を静かに収めたアイリスは、何処かで安堵していた。


ハイド:「……ありがとう、アイリス」


 呟いた穏やかな声が、共犯者にだけ届く。

 視線を向けた共犯者は、僅かばかり目を細め応えた――。

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