クライマックス2-2:歪な憎悪

GM:ラウンド2。さあ、ラストチャンスだ!

 セットアップ。

アン:《幻影の騎士団》を宣言。《超人的弱点》も適用される。


GM:イニシアチブ……ファントムヘイズ。

ハイド:イニシアチブで宣言を行う。

 RDロイス――《破滅の解放カタストロフ》!



 ハイドの姿が幻影を纏い、猫宮サイへと変化する――家族も同然だった大切な相手が、それを殺した男の変装に利用される。


ハイド:「頼む……アン。あの死神を。ファントムヘイズを、殺してくれ……ッ!」


 死神の口から、死神自身へ向けた呪詛じゅそが紡がれる。


アン:「――サイ、さん……そうだ、私は、アイツを――ファントムヘイズをッ!

 殺すんだ、サイさんの仇ッ! 私達の、家族になってくれた人の――!」



GM:改めて、イニシアチブ。ハイド・バレンウォート!

ハイド:行くぞ!

 【ハイディングダッシュ】:《陽炎の衣》《光芒の疾走》:マイナー:〈-〉:自動成功:自身:至近:侵蝕率+4:メインプロセス終了時まで隠密状態となる。戦闘移動を行なう。

 隠密化しつつ戦闘移動で7m前進。少しでも、アイリスの近くへ。

 そして……GM。今から特殊な動きをしたい。せっかくだから、普段ではやらない事をしてみたいんだ。――信じて乗ってくれるかな。


 正直に言えば、提案を受け入れるか、かなり迷った。動きの概略を聞いてもなお、迷う程に。けど、“そんな事”よりも――


GM:ああ。“信じる”よ、任せたぜ!


 そんな迷いよりも、友人を信じられない、なんてのは嫌だった。


ハイド:ありがとう! では、メジャー。

 【ファントムバレット・ジェミニ】:《コンセントレイト:ノイマン》《マルチウェポン》《ワンショットツーキル》:メジャー:〈射撃〉:対決:2体:15m:侵蝕率+8:攻撃力+20+4D

 攻撃対象はアン。そして……ハイド自身だ。

 命中判定行くぞ。

GM:OK、来い!

ハイド:ダイスロール、達成値は32だ。

アン:ドッジの可能性は皆無。ガード値も無い。リアクションを放棄する。

ハイド:同じく、リアクションを放棄。

 ダメージロール! ――62点ダメージだ。

アン:HP全損。けどまだ……まだ!

 RDロイスをタイタス昇華、HP12で蘇生!


ハイド:こっちだって、まだまだ……!

 戦闘不能直前に宣言、《ラストアクション》!

 マイナーは放棄。隠密化はメインプロセス間で継続してるからな。そのままメジャー。

 【ファントムバレット】:《コンセントレイト:ノイマン》《マルチウェポン》:メジャー:〈射撃〉:対決:単体:15m:侵蝕率+5:攻撃力+20+4D

 判定、達成値45! 続けてダメージロール、68点!

アン:68点のHPダメージを適用……けど同時に!

 《鏡の盾》を宣言! ダメージを68点、そっくりそのままお返しする!

 そしてファントムヘイズのロイスをタイタス昇華、これが最後の蘇生リソース!

ハイド:……良いだろう。こっちも最後のカードを切る時だ。

 こちらも《鏡の盾》を宣言する! 40点のHPダメージを適用させる!

アン:――!

 HP、全損。戦闘不能……蘇生リソースも、無い。

 ただ、最後にひとつ、残ったロイスがある。それは――。



ハイド:「手札はいつ切っても同じって言ったな。そいつは間違いだ」


 隠密化と同時、双銃を乱射しながらアンに突撃する。

 走りながら連射される銃弾は多くが的を外れ、あらぬ方向へと飛んでいく。しかしそれでも、数撃てば当たると言わんばかりの猛攻が襲い掛かる!


アン:「(この猛攻――ファントムヘイズも後がない。しのぎ切れば、勝てる!)」


 身体に弾丸が突き刺さるも、アンが倒れる事は無い。


アン:「くッ――、でもまだ、私は生きてるッ! 死神を殺せる!」


 世界中の人という人から、エネルギーを掻き集めるための準備……だがそれは大技に過ぎた。


ハイド:「遅ぇよ。敵の眼前で準備なんかしてんじゃねぇ。もうこっちは手札を切ってるぜ」


 彼の双銃に光が集まり、実弾より疾いレーザーがアンを射抜く。


アン:「カッ――は……ファントム、ヘイズ……ッ、私がどうなったって構わない、お前だけはッ!」


 集まりきらないエネルギーを闇へと変え、眼前の死神へと叩き付ける!


ハイド:「ぐ……あぁッ! ッ……その視線、“盗ませて”もらったぜ……!」


 大技を受け、アイリスに重なるように倒れるハイド。もう立ち上がる余力など無い。


アン:「勝った――私の、勝ちだッ!」

ハイド:「いや……俺の――俺たちの勝ちだ」


 直後。アンの背後から、先程乱射した銃弾が跳弾ちょうだんの嵐となって襲い掛かった!

 その数はアンだけでなく、アイリスをも巻き込みかねない危険なものだ。だが覆い被さるように倒れた死神の身体が、少女に弾丸を届かせない。

 そうして跳弾の嵐は過ぎ去り――ボロボロになったアンと、死神が残った。


 ゆっくりと倒れ込みながら、アンはふと、花の香りを感じていた。

 ……無論、硝煙しょうえんと血の臭いが立ち込める戦場だ。そんな筈は無い。

 何の花だったか……そう、これは、確か――菖蒲アヤメの花。またの名を、


アン:「アイリス――」


 初めて会った時、羨ましいと感じた。同時に、少し運命的だとも。

 予感がしたんだ。彼女とはきっと……

 出会うべくして、出会えた人なんだって――。


 最後にひとつ、残ったロイスがある。それは――。

 アイリスへの、遺志と嫉妬のロイスだけ。


 そのまま、彼女は倒れ伏した。

 すべての力を、使い果たして。

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