ミドル1:夜の尾行

 夜の街へとアイリスを探しに出たハイドが人の動きに目を光らせていると、黒い服の少女が走っているのを見かける。


ハイド:「あれは……UGN官僚の護衛だったか。こんな時間に何を……」


 こんな夜更けに街中を駆けるUGNチルドレン。更にはアイリスがいなくなったタイミングでもある。関係が無いとは言い切れない。

 彼女を尾行すれば有益な情報を得られる可能性があるだろう。夜という時間帯だ、明るい場所でなければ後を尾けるのも容易い。


ハイド:「……アテもなく街の端まで駆けずり回るよりマシか……!」


 ハイドの姿が宵闇へ溶け込んでいく。《天使の絵の具》で周囲の風景に同化しているのだ。

 付かず離れず。かつ距離を変動させながら尾行をしていると、どこか厳かな雰囲気の建物へとUGNチルドレンの少女は入っていった。

 内部には明かりが点いており、簡単には尾行を続行できない。



GM:ということで、判定項目をオープンするぜ。


 判定項目:UGNチルドレンの尾行を続行せよ。

  (〈芸術:窃盗〉7 《雑踏の王》宣言時、固定値+2)


ハイド:なるほど……まずは《雑踏の王》を宣言。周囲の存在の動きを把握する。

 そして更に宣言を追加するぞ。

GM:ほう、追加か。何を宣言するんだい?

ハイド:建物に出入りする人間を観察し、《天使の絵の具》でそこに紛れ込んでも違和感の無さそうな服に変装したい。

GM:なるほど、そう来たか! 固定値に更に+2を差し上げよう。

ハイド:やったぜ、ありがとう!(判定ダイスころころ)達成値18!

アイリス:流石に凄いね。

ハイド:まあ、専門分野だからな。



 黒服のUGNチルドレンは建物の奥、広い部屋へと入っていく。

 中には黒服の集団、奥に飾られる額縁付きの写真と花々――それらから、ハイドは葬式会場だと察する事が出来る。

 というのも、彼は一度だけこのような場を経験した事があるからだ。

 簡易的ではあったが、ハイドの父親であるルシサス・バレンウォートの葬式を統制機関は行なったからだ。あの頃は幼かったため深くは考えられなかったが、今となっては疑問の残る行動だと感じるだろう。


ハイド:「(これは……ハズレを引いたか……?)」


 アイリスに関係しているとは考えにくい状況。ルシサスの葬式についての疑問が過ぎるが、優先順位を間違える訳にはいかない。


ハイド:「これで振り出しか……!」


 思わず舌打ちが出そうになるも、押し止める。この場で目立つ訳にはいかない。

 ゆっくりときびすを返そうとするハイドはしかし、改めて式場の一点に目が行く事となる。

 尾行していた黒いUGNチルドレンが向かった席の隣には、同じくあの時護衛だった白服のUGNチルドレンが座っており――何故かその横にはアイリスが居たからだ。


ハイド:「……、――は?」


 何故この場にアイリスがいるのか。どうすれば連れ出す事が出来るか。

 様々な思考は一瞬止まり、目の前の事実に固まるのだった。

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