ミドル3:薄汚れた絆

ハイド:愉死たのしい状況だなぁ(白目)

アイリス:『絶望がお前のゴールだ』だね。

GM:HAHA、次のシーンは情報収集だ。二人ともシーンインおなしゃす!


アイリス:侵蝕率 55 → 65

ハイド:侵蝕率 67→ 69



 葬式会場を後にした君達はUGNの追撃を逃れるべく、寝床にした廃ビルへと再び姿を潜ませた。

 しかしアイリス。君は何故連れ戻されたのか、詳細な理由を訊き出す必要があるだろう。

 ハイドもまた、何故あの場にアイリスが居たのか、何故彼女が逃げたのか訊き出さねばならない。

 返答によっては共犯者という関係すら見直す必要があるかもしれない。

 緊張感が漂う中で二人は、どちらからともなく話し始めた――。



情報項目:メイとアン、二人のUGNチルドレンについて

│(〈情報:FH〉5)

└EX情報項目:統制機関について

 (〈情報:共犯者〉7)


情報項目:ハイドとメイ、アンの関係

│(〈意志〉8)

└EX情報項目:猫宮サイが殺害された理由について

 (〈情報:統制機関〉6)


アイリス:ふむふむ。では得意分野的に私から行こう。

 ミーミルの覚書の効果を宣言。コネ:FH幹部として使用し、判定ダイスを+2個だ。達成値は(ダイスころころ)8で成功だね。

GM:成功だ、情報を開示するぜ。


情報:メイとアン、二人のUGNチルドレンについて

 白服の少女がメイ、黒服がアンという名前らしいことが二人の会話から判断できる。

 両者ともUGNチルドレンであり、UGN官僚の猫宮サイが彼女らの保護者のようだ。

 FHのデータによれば、メイとアンが近隣のセルを壊滅させた事もあるらしい。

 だが猫宮サイが故人となり、今後はこの街のUGN支部が身元を受け持つ事となる。


アイリス:なるほど、実力者というわけだね。

GM:うむ。


 実力者。確かにそれはひとつの側面でもある。だが実はもうひとつ、別の側面がこの情報には含まれている。

 今回のシナリオ内で明らかにするので、読者諸氏においては楽しみにしていて欲しい。


GM:では次、ハイドの手番だ。

ハイド:あいよ。ハイドと二人の関係について、素振りで判定に挑戦だ。(ダイスころころ)達成値10で成功だ。

GM:成功ぅ!


情報:ハイドとメイ、アンの関係

 『“ファントムヘイズ”に殺された』とアンが口走っていたことからも分かる通り、メイとアンの保護者である猫宮サイを殺したのはハイドだ。

 統制機関からの命令で中心街の一角にある、非常線が貼られていたカフェで暗殺した。

 アンの様子から、ハイドに対して強い憎悪を抱いている事は間違いない。


アイリス&ハイド:ですよねぇ(確認完了)

GM:ひでぇ事しやがるぜ……。

ハイド:GMのせいなんだよなぁ(白目)

GM:で、では次にEX情報項目といこうか。

アイリス:オーライ。そのままの順番でいいかなハイド?

ハイド:ああ、OKだぜ。

アイリス:ミーミルはもう使えないが、固定値があるからなんとかなるだろう。素振りでいくよ。(ダイスころころ)達成値12。ふふっ、これが社会型の力さ。

ハイド:ナイスぅ!


情報EX:統制機関について

 FHが持っている統制機関の情報によれば、セルの目的は『FHに取って代わる組織を作り上げる事』だ。

 これについてFHは実現性の無い妄言だと認識しており、全く評価していない。その方法論についても『既存のFH戦力を超えるエージェントの作成』と、大雑把なものだ。

 しかし統制機関に所属していた君達には、管理者オーソリティがこれほど大雑把な計画を明示している事に違和感を覚えるだろう。


GM:まあ残念ながら当然の評価よな。

アイリス:ふむふむ。まぁ、そうもなるか。

GM:ということで、次はハイドの手番だ。どうぞ!

ハイド:では殺害理由について、判定に挑戦だ。

 【情報窃盗】:《生き字引》:メジャー:〈意志〉:-:自身:至近:侵蝕率+1:〈情報:〇〇〉の代わりに判定。判定ダイス+1個。

 達成値は……(ダイスころころ)10。成功だ。


情報EX:猫宮サイが殺害された理由について

 猫宮サイは統制機関の活動目的について調べていたようだ。

 君達がFHから得たセルの目的は『FHに取って代わる組織を作り上げる事』だったが、どうやらそれはカヴァーであるようだ。

 全く異なる真の目的のために水面下で動き続けている。その情報の一端を掴んだが故に猫宮サイは暗殺された。


アイリス:まぁでしょうねぇ!

ハイド:知り過ぎちまったか……。

GM:そういうことなのじゃ。

アイリス:ではRPに移ろうか。どっちから切り出す?

ハイド:ふむ、そうだな――では、こちらから行こうかな。

アイリス:OK、よろしく頼むよ。



 薄暗い、夜の廃ビル。目が慣れているとはいえ、影になっている場所は良く見えない。

 軽く俯くハイドの目元もまた、影が差して表情が窺えない。静かに、しかし底の見えない暗闇を思わせる声音で、ハイドは問いかける。


ハイド:「アイリス。訊きたい事が大量にある。まず最初に……なんで黙っていなくなった」

アイリス:「……理由は大まかに二点ある。

 ひとつ。私は昼間のアレではまだ観察し足りなかった。もっともっと刺激が欲しいと考え、自己欲求を満たす夜の街へ繰り出そうと思考した。

 ふたつ。私がそう言い出せば、“お人好し”な君は起き出して付いて来ようとするだろう。しかし、それでは過労気味なハイドの休息にならないだろうと考えた」


 つらつらと理由を挙げたアイリスは小さく間を置き、静かに言葉を終えた。


アイリス:「以上だ。ここまでに何か疑問点、並びに不満点があれば言ってくれ」

ハイド:「……楽しかったか、夜の街は」

アイリス:「――楽しかったよ。いささか、物足りなさもあったがね」

ハイド:「そうかよ。そいつは良かったな……ッ」


 急に立ち上がったハイドは部屋の隅に移動し、その場に屈み込み……胃液をぶちまけた。


ハイド:「ゲホッ……ッ……! ハァ……!」

アイリス:「ハイドッ!?」


 屈み込んだまま動かない彼に近寄って声を掛けるが、どうすれば良いのか分からない。レネゲイドビーイングには『嘔吐』の概念も、『背中を擦られると楽になる』なんて知識も無い。


アイリス:「だいじょ……ぶではないよな」


 咄嗟に近場の布切れを引っ張り出し、備蓄してあったミネラルウォーターだけを確保して傍らに置いた。


ハイド:「……悪い、嫌なもん見せた」


 布切れで口元を拭い、ミネラルウォーターで口内をゆすぐ。元居た場所まで戻ると、壁に背を預け、力無く座り込む。


ハイド:「――何やってんだろうな、俺。機関から命懸けで逃げ出して、いつ襲われるかも分かんねぇ状況で必死に歩き続けて。限界が来て休んでたら、いつの間にか誘拐したお姫様は居なくなっててさ……。

 分かってたさ。機関から出るってのは、こういう事だって。俺が自由に手を伸ばすのは、こういう事なんだって」


「……クソが――っ」

 振り絞るような彼の声は、僅かに震えていた。そんな彼に対して、どんな言葉を掛けるのが正解なのだろう。

 アイリスが記録ドライブ内のデータを幾ら見返しても答えは出ない。当然だ、こんな物で解決出来る問題ではない。

 ただ分かるのは、その心労の多くがアイリス自身に依るという事実。


アイリス:「(私があの時、彼に手を伸ばさなければ)」


 たとえそれが、彼の望む結末でないとしても、そんなIFもしもを想像せずにはいられない。

 だから、正解では無いと知りつつも、アイリスはこう口にするしかなかった。


アイリス:「……すまない。結果論だとしても、一人で街に繰り出したのは明らかに軽率だった」

ハイド:「……俺の方こそ、もっと早く話をしておくべきだった。俺の重ねてきた、罪について」

アイリス:「“罪”、か。あの姉妹と何らかの因縁があるのだね? アン……黒毛の少女が君のコードネームを口にしていたよ。親になる筈であった猫宮サイが殺された、ともね」

ハイド:「ああ……猫宮サイ――あの二人の親代わりを暗殺したのは、俺だ。それだけじゃねぇ。俺は……ガキの頃からずっと――」


 苦々しい声で、静かにハイドは語る。

 彼が歩んだ軌跡を。

 犯してきた、罪を。

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