第一話『秘めた決意』

まえがき

えるみん:ねーだみー。本編まだー?


 プリプレイが終わってから、しばらく。セッションで使用するデータの最終調整をするために私は時間をもらっていた。


だみ:もうちょっと、もうちょっとだから……!

えるみん:何にそんな悩んでるのさ?

だみ:いや、エネミーのデータ作成が難しくてな。


 あれだけの火力を持つPCを良い感じに苦しめ、それでいて気持ち良くなってもらう。

 上手いビルドが思い浮かばず、つまりはデータ面の弱さが仇になっていたのだ。


えるみん:ふーん。でもそれってさ、肉弾戦が強いキャラが狙撃銃持ってるよ?

だみ:あん……? どういう意味──いや。折角だ、気分転換に通訳判定しようか。


 肉弾戦が強いのに狙撃銃を持つ。つまり本来持つべきでない武器を持ってるって事か。

 という事は、持っている意味が薄いとも言い換えられるから……。


だみ:むしろ汎用性を棄てた方が強いって事か?

えるみん:んー。

だみ:肯定なのか否定なのかハッキリしてくれ……。

えるみん:だってさ、射撃も上手かったらめっちゃ強いなーって思って!

だみ:…………。


 俺の頑張りを返してくれとも思ったが、その時考えたのは別の事だった。

 例えば、その何故か狙撃銃を持ったキャラが”射撃も上手い事を隠して”いたら?


だみ:──ちょっともう一度、エネミーを練り直す。あと、本編の日取りを決めよう。

えるみん:いいのー?

だみ:ああ。多分、すぐに組み上がる筈だ。


 結論から言うと、言葉の通りだった。それまで悩んでいたのが嘘のようにデータと設定が噛み合っていく、そんな感覚を憶えている。

 どんなボスなのかは……本編を楽しみにしてもらえれば幸いだ!


…………

……


 数日後、セッション部屋に集まった私達は、ついに『In just for AI』第一話を開始した。

 願わくばエモく、そして全員で楽しめるキャンペーンとなるように祈りつつ、私はGMとしてメンバーに声を掛けた。


GM:プリプレイから少し待たせて悪かったね。

 それじゃ二人とも、今回もよろしく!

アイリス:うん、こちらこそよろしく。

ハイド:よろしく。楽しみだね!

GM:ああ、楽しんでいこう!


 少年少女の長い逃避行が、始まる。


GM:──セッション、スタート!

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