第二話『試される絆』

まえがき

だみ:……くおぁぁーーッ!!


 シナリオを一通り書き終わった私はしかし、苦悶の絶叫を上げた。

 作業通話を繋げていたイズミユキとmistoが、またかという声音で話しかけてくる。


イズミユキ:ビックリした――。

misto:いきなり奇声を上げるんじゃありません。……で、どうしたの?

だみ:ゴメン。実はAI卓2話のシナリオ書き上がったんだけどさ。

イズミユキ:おお、やったじゃん!

misto:おめでとう。とはいえ、出来に納得いかないとか?


 まさしくその通りだ。シナリオを書き終わったというのに、“座りが悪い感覚”があった。


だみ:そうなんだけど、どこが引っ掛かってるのか分からないんだよね。

misto:なるほどね……だみ自身がそういう言い方してるって事は、どこかに問題があるんだろうけど。


 問題点が、恐らくどこかに眠っている。それを気付かぬ振りをしてセッションに臨むのは、嫌だった。それに――


だみ:良ければトレーラーと冒頭だけでも聞いてくれないかな。

イズミユキ:え……いや、本当に良いの?

misto:こっちとしてはGMの判断に従うつもりだけども。

だみ:ああ、率直な意見が欲しいんだ。


 ――私だけでは気付けなくても、二人と一緒なら気付けるんじゃないか。

 そんな淡い期待があったのだ。


だみ:――、――。という感じのトレーラーと冒頭なんだけどさ。

イズミユキ:……率直な意見を言わせてもらうと、二つが噛み合ってないね。

misto:うん。多分だけど、この冒頭が引っ掛かる部分なんじゃないかな。


 噛み合っていないと指摘された部分を読み返してみると、今まで気付けなかった粗をようやく認識できるようになっていた。


だみ:ありがとう! 意見を踏まえて書き直してみる!


…………

……


 数日後、修正作業を終えた私は、えるみんと話していた。


だみ:多分だけど、今回でハイドのRDロイスが明らかになる。

えるみん:え! てことは、リバースハンドアウトも……?

だみ:ああ。明かす事になるだろうね。

えるみん:マージか! じゃあじゃあ、今回はハイドが主役なのー?


 彼女の質問に対して、私はニンマリとした笑顔を浮かべて見せる。


えるみん:怪しいー! でもなんで私に言って来たのー、いつもだったら隠すじゃない?

だみ:ふむ。その疑問は当然だよな。強いて言うなら……RDロイスの考案者だからかな。


 役得だー! と素直に喜ぶ様を見ながら、私はもうひとつの理由を思い浮かべていた。

 PL二人の協力を得て修正したシナリオ。そしてえるみんが案を出したRDロイス。

 周囲の手を借りながら作った今回の成果をセッションとして開催するに当たって、どうしても言いたくなったのだ。


だみ:“ありがとう”。今回も楽しんで見学しておくれ。


 タイトルは『試される絆』……PC2、ハイド・バレンウォートにスポットが当たるシナリオだ。

 今回は彼の活躍が見所となる。読者諸氏にも、ぜひ楽しんで頂ければ幸いだ!

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