マスターシーン:管理者 "オーソリティ"

 二人が脱出ルートを相談している、その頃。

 統制機関・中央ビルの最上層、統制区画に存在する集中管理室でセルリーダー──管理者オーソリティは通信で指令を下していた。オールバックにした金色の髪はすすけており、整えられてはいるが年齢を感じさせる。目元を隠すように仮面を付けており、その表情は窺い知れない。

 静かで冷たい部屋の中、低く神経質な男の声だけが響く。


管理者:「ホワイトルームより”記録保持者アークレコーダー”が奪取された。幹部エージェント諸君には、その奪還に当たってもらう」


 数秒の間。どうやら相手が発言しているようだ。


管理者:「……。その通りだ。侵入者には一部を除き他の戦闘員を宛がう事とする。

 最優先事項は”記録保持者アークレコーダー”の奪還。次いで裏切り者である”ファントムヘイズ”への──粛清だ」


 数瞬の間を置いて発された言葉は、しかし酷く無感情に聞こえた。


管理者:「お前達二人には特に期待している……”ローレル”、”オディウス”。確実に任務を遂行せよ」


 通信を切ると、管理者は写真立てを手に取る。……この部屋で唯一、人間味のある代物だ。


管理者:「お前には、ほとほと手を焼かされる。……バレンウォート。我が──」


 言葉の先は、誰一人として聞き留める事が無い。

 表情も、言葉も。事を成すためには不要だとばかりに──。

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