ミドル1:道筋

GM:このシーンでは冒頭描写の後に情報収集を行なってもらうよ。二人ともシーンインお願いします!

アイリス&ハイド:シーンイン!(ダイスころころ)


 アイリス …… 侵蝕率 51→53

 ハイド  …… 侵蝕率 59→65



 FHセル『統制機関』からの逃亡を決意した二人は、手頃なエージェントの個室へと一旦その身を隠した。脱出ルートを事前に相談しておくためだ。

 警報が鳴り響く非常事態中である事と、アイリスがいたホワイトルームと距離が近かった事が幸いし、この個室へ入るまで誰にも見咎められなかった。

 だが、悠長に構える訳にはいかないだろう。少年少女は統制機関の中央ビルから脱出するためのルートを考える──。



情報ツリー

 情報項目:統制機関・中央ビル全体の構造について

 │(〈情報:FH〉 5)

 └情報項目2:居住区からの脱出方法について

  │(〈芸術:窃盗〉 10《構造看破》使用時 6)

  └EX情報項目1:ホワイトルームについて

   │(〈情報:統制機関〉 5)

   └EX情報項目2:侵入者について

     (〈情報:共犯者〉 4)



ハイド:まずはアイリスにやってもらうのが良さそうかな。〈芸術:窃盗〉はこっちが頑張ろう。

アイリス:ん、分かった。それじゃあ判定してみようか。

 『ミーミルの覚書』の効果を宣言。『コネ:FH幹部』として扱って判定するね。

GM:OK、判定どうぞ!

アイリス:(ダイスころころ)達成値12で成功。余裕の音だ、馬力が違うよ。



情報:統制機関・中央ビル全体の構造について


 全60階建ての巨大ビル。上から順番に、

 管理者オーソリティが控える「統制区画」

 統制機関の幹部エージェントの私室がある「中枢区画」

 二人が現在潜んでいる、FH戦闘員達の「居住区画」

 戦闘によって生じた傷等を癒す「治療区画」

 統制機関独自の研究を行なっているらしい「研究区画」

 中央ビルの出入口であり、外部との直通列車も停まる「エントランス」

 治療区画、研究区画と貨物エレベータで繋がる、地下の「実験区画」


 以上の7区画で構成されている。また屋上には「ヘリポート」も存在する。



ハイド:ビルでかいな……!

アイリス:本当、予想よりも大きかったよ。

 次はハイドの番だ。お手並み拝見だね。

ハイド:任せな。《構造看破》を宣言しつつ、脱出方法について判定だ。

 (ダイスころころ)達成値18!

GM:さすが、成功だ。情報を公開しよう。



情報:居住区からの脱出方法について


 警報が鳴っているとはいえ、廊下を進み通常の手段で階下へ降りていくのはリスクが高い。

 理由は定かでは無いが、アイリスが秘匿された部屋ホワイトルームにいた事実から、管理者はその存在を隠したかったと推測できる。そのため幹部エージェントには、アイリスを連れ戻すよう命令が下る事が予測される。

 彼らを避けつつ居住区画を脱するには、各部屋とビル外周とを繋ぐ天井の換気ダクトを通り、外へ出れば良い。

 現在地はビルの37階だ。オーヴァードとはいえ飛び降りるには高すぎるため、その後に周囲の状況を見つつ判断する必要があるだろう。



GM:次はEX情報項目だ。これらの項目用に各PCにつき一度ずつの手番が再度与えられる。

 全てのEX情報項目を開けたら経験点にボーナスを付けよう!

ハイド:よっし、気合入れて調べるか。財産Pを使えるアイリスに難しい方を頼んで良いかな。

アイリス:じゃあ私がホワイトルームについて挑戦してみよう。『ミーミルの覚書』は回数制限で使えないので素振りで判定するよ。

 (ダイスころころ)達成値10。私の記録ドライブは伊達では無いさ。

ハイド:グッジョブ!



情報EX:ホワイトルームについて


 居住区画に存在する、壁に偽装されたドア内部に作られた真っ白な部屋。狭い上に窓の類は存在せず、食事は定時になると専用口から自動で運び込まれる。

 理由こそ不明だが、偽装扉が開く際に流れた音声が『コード:”バレンウォート”』と言っていたことを憶えている。その事から、ハイドの何かに反応して開かれただろう事が推測されるも、詳細は分からない。



GM:それではハイドの手番だ。

ハイド:オーケー、侵入者について調べよう。

 【情報窃盗】:《生き字引》:〈意志〉:-:自身:至近:侵蝕1:〈情報:~〉を意志で判定。更に判定ダイスを増やす。

GM:情報収集用のコンボだね。判定、どうぞ!

ハイド:(ダイスころころ)達成値は11だ。よしよし、成功だな。

GM:素晴らしい。最後の情報を開示しよう!



情報EX:侵入者について


 管理者から伝えられた情報では侵入者は二人。

 ハイドを殴り飛ばした巨漢と、アイリスが壁越しに話した女性がその二人だ。詳しい目的は不明だが、アイリスを探しているようだ。

 協力体制を敷くことが出来れば脱出の一助になるかもしれないが……相手の出方次第では第三勢力として敵対することも十分考えられるため、積極的な邂逅はリスクが高いと言えるだろう。



ハイド:「さてと、使わせてもらうか」


 個室に備え付けられた情報端末をハイドが躊躇ちゅうちょなく起動しようとするも、パスワードの入力を求められた。顔も知らぬエージェントの端末。当然ながら知る由も無いのだが……。


ハイド:「適当に打ち込むよりは、そうだな……その手のメモってのは、大体こういう場所に──」


 おもむろに椅子の座面裏を手で探ると、貼り付けてあった小さなメモが指先に触れた。それを無造作に取り、書かれた無軌道な文字列を端末に入力する。


ハイド:「よし、起動したな。んじゃ、情報は盗ませてもらうぜ」


 流れるように情報を盗み出す。そこに躊躇ためらいの色は一切無い。

 その手際に、自らの記録ドライブへのアクセスを終えて現実へ戻ってきたアイリスが声を上げる。


アイリス:「随分と手慣れてるね? ハイドは情報収集に長けたエージェントなのかな」

ハイド:「いや。俺の専門は盗みと──暗殺だ。物を隠す奴の心理分析に慣れてるってだけさ」

アイリス:「なるほどね。いや、良かった」


 彼女は心の底からホッとしたように息を吐く。


アイリス:「もし私と得意分野が一緒だったら、いつ契約を打ち切られてもおかしく無いからね」

ハイド:「お前の能力は、記録に特化してるって話だったか」

アイリス:「その通り。私はあらゆる事象、記録、景色を完全記憶する。

 その副次効果で戦闘シミュレーションもたしなんでいたのさ。そのおかげで剣を用いた白兵戦なら少しは腕に覚えがあるよ。まぁ、あくまでシミュレーションだけで実戦経験は無いのだけどね」

ハイド:「俺の武器は銃だから、前衛が張れるのは助かるな」


 互いの戦闘スタイルを明かし合うその様子は、十代の男女が行なう会話では無い。だがFHに所属する二人にとっては、ある種の信用の証でもあった。


アイリス:「あぁ、それはそうと。私が居たあの部屋から出る前に、侵入者らしき女性と話をしたよ。まるで私が目的のような口ぶりだったが……そちらは該当人物に出会ったかい?」

ハイド:「侵入者と言えば、大男にぶっ飛ばされて死にかけたぞ、俺」

アイリス:「おや、それは災難だったね。だが首を吹き飛ばされなくて良かったじゃないか。いくらオーヴァードでも首を切断、あるいは脳を破壊されればリザレクトは難しいからね」


 ハイドは肩を竦め、命があるだけマシか、と自嘲した。


アイリス:「そういう事さ……おっと、話が逸れてしまったな。つまり、私が言いたかったのはその二人組と思われる侵入者と合流を果たすか否かだ。

 私は文字通りの箱入りお姫様だったからね。ハイド、君の意見を聞きたい」

ハイド:「確かに利用できる可能性はあるが……積極的な接触は避けたい、ってのが俺の意見だ。

 お前が奴らの目的なら、俺達と利害が対立する可能性がある。機関の幹部も動いてくるだろうし、ここで余計なリスクを背負うのは得策じゃねぇ」

アイリス:「ふむふむ、なるほど。それは確かに道理だ」


 アイリスは腕を組みながら数度頷くと、ハイドの経験はとても役に立つね、とにこやかな笑みを向けた。


アイリス:「しかし、幹部やエージェント達の目を掻い潜るというのも楽じゃない。君だけならまだしも、私は隠密能力を持たないからね。そこで、だ」


 ピンと人差し指を立てて提案を口にし──、


アイリス:「私の記録ドライブのデータによれば、各部屋とビル外周を繋ぐ換気ダクトがあるらしい。そしてそれが……アレだろう」


 その指を天井へ向けた。そこには格子が嵌め込まれており、僅かに空気の流れを感じさせる。


アイリス:「あの中を移動すれば、監視の目は欺ける筈だ。どうだろうか?」

ハイド:「なるほど……よし、それで行こう。有能な共犯者で助かるぜ」

アイリス:「──なるほど、これが人に褒められるという事か。うんうん、これは悪くない感覚だな。もっと褒めて欲しいくらいだが……今は時間が惜しい。急ごうか」


 アイリスは一瞬、ポカンと口を開いたかと思うとご満悦とばかりに首を縦に振り、天井に備え付けられた換気ダクトへと潜り込む。

 それに苦笑を返しつつ、ハイドも後に続いた。


ハイド:「……脱出に成功したら、満足するまで褒めてやるよ」


 格子を内側から閉め、薄汚いダクト内を少し進んだ頃。先程まで居た部屋へFHエージェントが押し入って来る音が聞こえてくる。どうやら既に、管理者から命令が下っているようだ。

 少年少女に戻る道は……もう、存在しない。

 音と気配を殺しながら、逃げ続けるしか無いのだ──。

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