ミドル2:夜光
アイリス:随分と意味深だね。
ハイド:そうだね……というか、オディウスさん幹部だったの!?
アイリス:粛清しろって命令だし、これは恐ろしい事になるかも。
ハイド:暴言のお礼参りされちゃう……。
GM:軽薄が似合うだなんて言うからぁ。
さて、ミドル2はアイリスがシーンプレイヤーだが、ハイドも登場を推奨するよ。
アイリス&ハイド:シーンイン!
アイリス …… 侵蝕率53→55
ハイド …… 侵蝕率66→71
いくつもの部屋を繋ぐ換気ダクトは、事前に得た情報通りビル側面の外壁に通じていた。
地上37階の高さはオーヴァードとはいえ、落下すればただでは済まないだろう。
周囲を見回すと非常階段が手頃な近さに備え付けられているのが見え、そこへ跳び移れば下の区画まで行ける筈だ。
ハイド:「とりあえず、外までは出られたな。跳び移るぞ、行けるか?」
アイリス:「もちろん。これでもオーヴァードだからね」
ハイド:「OK。じゃ、お先に行かせてもらうぜ」
躊躇なく跳んだハイドは、非常階段へ難なく着地する。だがアイリスは深呼吸を十二分に挟んだ。
アイリス:「……、……。よし、行こうか」
意を決して非常階段へジャンプする。その足取りは酷く不慣れで危なっかしいものだった。何度も仮想訓練をしたとはいえ、実経験がまるで足りないのだ。
アイリス:「っと、と。さすがにシミュレーションのようにはいかないね」
苦笑してハイドの傍へ寄ると、落ち着ける足場まで来たからだろうか、眼下に望む街の夜景が確かな時間、心を奪う。光点で形成されたそれは、眠ることの無い街の営みを感じさせた。
視線を少し遠く、街の外周へ向けると壁が取り囲むように
工業都市としてのカモフラージュなのか、それとも何かの実験の排煙か。……いずれにせよ、その壁と煙のせいで街の外を見る事は叶わない。
ハイド:「……見えるか、アイリス。俺達はこれから、あの煙と壁の向こう側に行くんだ」
目を細め、少しだけ感慨深げに呟く。だが、その言葉に返答が無い。疑問に思った少年が隣の少女を見やると、彼女は食い入るように街並みを観察していた。
アイリス:「綺麗なものだ。これが夜、そして夜景か。煙と壁で外が視られないのは減点だが、これも……うん。とても刺激的だね」
ハイド:「──そっか、外は初めてなんだったな」
アイリス:「……あぁ、すまない。思わず景色に魅入ってしまっていた。しかし、遠いものだね。世界の壁は」
ハイド:「あの壁の向こうにはきっと、もっと凄ぇもんが待ってるぜ。距離なんて関係ねぇ、辿り着くまで走るだけだ。だろ?」
不敵に笑うハイドに、アイリスは目を少し見開き、薄く微笑んだ。
アイリス:「くすっ……それもそうだったね。何かと面倒を掛けるだろうが、エスコートをよろしく頼むよ、ハイド」
ハイド:「まぁ正直エスコートなんて柄じゃねぇが……俺達は一蓮托生だからな。気合入れて行こうぜ、アイリス」
アイリス:「もちろんさ。互いの欲望のためにベストを尽くそうじゃないか」
二人が笑い合いながら街の景色を見ていると、ふと階下から足音が近付いてくることに気付く。
しかし非常階段には隠れる場所も無く、それでいて無暗に動けば足音が鳴ってしまう。この危機的状況を回避するには”隠れる場所も無い場所で隠れる”しかないだろう。
判定ツリー
判定項目:敵の動きを把握せよ
│(〈知覚〉 難易度 7(《雑踏の王》使用時、固定値+2))
└判定項目:隠れる場所の無い場所で隠れよ
(〈知覚〉 難易度 5(《不可視の領域》使用時、固定値+2))
どちらかでも失敗時は、敵と軽い戦闘を行なったとして全員が2D10のHPダメージを受けること(装甲ガード有効)
ハイド:まずはこちらから敵の動きの把握に挑戦するぞ。《雑踏の王》を宣言。固定値を得つつ知覚で判定だ。
(ダイスころころ)達成値9で成功だ。アイリス、次頼むぜ。
アイリス:私は《不可視の領域》を宣言。こっちも固定値をゲットして判定するよ。
(ダイスころころ)こちらも9だね。ふぅ、冷や冷やしたが成功だ。
GM:さすが、やるな!
アイリス:「……誰かが登って来るね。このままだと鉢合わせになる。
ハイド。壁の端ギリギリまで寄ってくれないかな?」
ハイド:「分かった。よっ、と。これで良いか?」
言葉通りに限界まで隅に寄る。彼女が無策で指示を出すとは考え難いからだ。
アイリス:「ありがとう。そのままの姿勢で頼むよ」
アイリスは壁に寄ったハイドへ自身の身体を思いっきり押し当てた。
レネゲイドビーイングとはいえ、人間の女性を模した身体である少女の柔らかな四肢の感触が布越しに伝わってくる。少年の緊張を知らず、アイリスはオルクス能力を発動させた。
アイリス:「──因子による空間操作発動。指定範囲は半径1m。エフェクト展開」
極小範囲に因子による隠蔽空間が発生する。
互いの熱を至近に感じながら、すぐ隣をエージェントが駆け登っていき……気付かれないまま追手は上の区画へと消えていった。
アイリス:「……ふぅ、何とかやり過ごせたね。少しひやっとしたよ。これが所謂『冷や汗をかいた』というやつかな」
ハイド:「……、ああ。助かった、サンキュな。しかし──いや、何でもない……」
僅かに顔を覗かせた煩悩を蹴っ飛ばし、表情を引き締めるハイド。その様子を不思議そうにアイリスは見つめていた。
エージェントとの戦闘を回避した二人は階段を降る。……しばらくすると、研究区画と書かれたドアの前で行き止まりとなった。
ここから先は、再び中央ビルの内部を進むこととなる。
それは同時に、気の休まらない時間が続くことを意味していた──。
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