魔法素養調査 3

「おい! タクミ!」

「お早うございます。ミッシェル君」

「今、笑っただろ! カーリーの前で恥を掻かせやがって!」


あ、また難癖つけに来られたよ。どうも、カーリーの事が好きなんだろけど、何故か僕によく絡んで来るんだよね。


『はあ~』


あれ? 今、エルカシアが大きなため息をしたような?


「笑ったりなんかしていません。それにカーリーの前で僕が恥を掻かせたわけじゃないですよ? 魔導士様が言っておられただけです。それにもし僕がミッシェル君の事をそんな事で笑ったりしたら、カーリーは僕の事を叱ると思うんだ。」

「は! そうやってカーリーの前で良い恰好しやがるのが気に食わないんだ!」

「別に良い恰好しようとは思っていない。本当にカーリーは悪いと思った事は平等にちゃんと叱ってくれる良い子なんだ。そんな事も分からないのか?」


まだ何か言いたそうな顔で僕を睨みつけるミッシェル君。どうしたものだろう?


「フン! ま、まあいい! それより俺様の魔法素養が一つでしかも魔法量が少ないなんて事はおかしいだろ! そうだ、何かの間違いなんだ! 今度、王都に直接行って、もっと格のある魔導士に鑑定をしてもらえればきっと違う答えが出るはずだ! いいか、その時になって吠え面をかくなよ!」


そう言い切ると、すたすたと教会を出ていった。カーリーの横を通るとき、じーっと見つめて顔を赤くして去って行く。

その姿を見ていると、裾を引っ張る感覚があったので後ろ振り向くと、カーリーが少し俯き加減で僕の裾を持っていた。


「その、ありがとう。そんなふうに思っていてくれてたんだ」


カーリーの顔がとても優しく感じられた。こんな顔も出来るんだ、やっぱり女の子は不思議だなあと感心していると、またエルカシアがため息をついていた。


「魔導士様、申し訳ありませんでした。あまりミッシェル君の言った事気にしないでください」


僕は取り敢えず、ミッシェル君の暴言に気を悪くしているだろう魔導士様に謝罪しておいた。


「いえ、特に問題ありませんよ。どの町や村でもあのような子は居ますからなれてます。それより君は、しっかりしてるね。なんだか大人の人と話をしているようだよ」


そう言って微笑んでくれた。


良かった。ミッシェル君の事はあまり気にされていないようだ。それにしても大人と話って、そんなに僕、子供らしくないのだろうか?


『はぁ~・・・』


またエルカシアのため息が聞こえてきた。


それから魔導士様の調査は進み、ほどなくしてカーリーの番がまわってきた。


「よ、よろしくお願いします」


小さくお辞儀をして魔導士の前に座るカーリー。両手を繋ぎ魔方陣が浮かび上がる。


「おー、素晴らしいですね。魔力量は普通以上ありますし、なんと言っても元素魔法の要素が3つもありますよ!」


「え? え? えー!!」


信じられないと驚くカーリー。周辺にいた大人たちも近寄り、おめでとうと祝福し始める。


「30年前のテレジア様、以来かもしれませんね」


鑑定していたのとは違う別の魔導士がそう話す。30年前? もしかして・・・


「あの少し宜しいですか?」


僕はその魔導士に聞いてみることにした。


「どうしました?」

「先程、話しておられたテレジア様とはどういったお方なのですか?」

「あれ?テレジア様を知らない? まあそうか、この辺りまではそんなに王都の話なんか伝わって来ないか」


一人で納得してないで早くそのテレジア様とやらの話を聞かせてほしいのだけど。


「いいか坊や、良く聞くんだぞ。今から30年位前に元素魔法を5要素も持つ女の子が現れたんだ」


元素魔法5つ? それってまず間違いないんじゃないか? これは期待がもてるぞ!


「それがテレジア様なんだが、10才の時には王宮最高位の称号、天位魔導士を授かる程の天才魔導士だったんだ。ところが今から20? いや18年位前かな? 突如姿を消されたんだ」


え?


「どういう事です!?」

「いや、本当に突然なんだ。ある日突然、王宮から姿を消されてそれ以降全く音沙汰が無いらしい」


なんだ? どういうことだ? 多分そのテレジアと言われた女性は僕の奥さんだった可能性がある。けど、姿を消した? 何故? 何か重大な事でも起きたのだろうか?

僕の心の中は不安で埋め尽くされて行くのを感じていた。


「死んだという事なのでしょうか?」


恐る恐る聞いてみる。


「いやその後、テレジアの弟子という女の子が現れて、その女の子が言うにはテレジア様は生きているらしい」

「らしい? らしいとはどういう事ですか?」

「その辺の詳しい事まで、俺も知らないんだ」

「そうですか、ありがとうございます」


『どう思う、エルカシア』

『はい、可能性は高いですね。それに私も彼女は死んでいないと思いますよ。簡単に死ぬような神の祝福ではないですから』


とにかく王都に行くしか無いということだ。その弟子と言うのが気になるし。


「それでは最後にタクミ君、お願いします」


お、そうだった。まだ確認してもらってなかった。


「はい、お願いします」


皆と同じ段取りを踏んで魔方陣が輝き・・過ぎて一瞬で飛散した。


『おい、エルカシアこれは一体どういう事なんだ?』

『あ!魔力量の制御忘れてました。てへ、ぺろ』


てへ、ぺろ、じゃないよ! 案の定、大人たちは右往左往として大騒動になっている。

あまり目立ちたくはなかったが、これで王都に行くことは確実だろう。

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