ラングトン大学 試験編 9

『へーえ、解らないの?』


僕が現状を何とか把握しようとしている間にもフラムさんのエルへの質問は続いていた。


『あなた、私達を転生する時を間違えたでしょ!! おかげで私が、いえ私達がどれだけ苦労したかわかっているの?!』

『まさか、つむぎさん、なんですか!?』

『そうよ! やっと思い出したようね!!』


え? つむぎ? だって?

やっぱりそうなのか?

でも、あれ? おかしくないか? でも、つむぎ、なんて名前知っているのは他には考えられないし・・・


「つむぎ、なのか?」


僕が名前を呼ぶと、フラムさんは今までエルに向けていた大剣をその場に落とし、僕の方をじっと見つめてきた。

みるみる瞳から大粒の涙があふれ出し、顔をぐしゃぐしゃになりながら泣き始める。


「う、うわー! タクミ君! タクミ君! タクミ君! タクミ君! タクミ君!! タクミ君!! タクミ君!! タクミ君!! タクミ君!! やっと会えたよー!!!」


その場にペタンとしゃがみ込み大声で泣き叫ぶフラムいや、つむぎに僕はゆっくりと近づくと膝を付き頭を抱え込むように抱きしめてあげる。


「ごめん、遅くなって」


今はそれしか言えなかった。

そして抱きしめてあげる事しか出来なか・・・・


「コラー!!! フラム!! あんたばっかずるいじゃない!!!」


叫ぶ声が聞こえたと思ったら僕目掛けてヴェルデ先生が突っ込んで来た。

慌ててつむぎを抱きしめていた手を解き咄嗟にヴェルデ先生を受け止めてしまった。


「ど、どうしたんですか先生?」


一瞬、訳が解らずそう言葉を出してしまったがそういえばヴェルデ先生も・・・?


「先生じゃない! 私もつむぎ、だよ! 私だって凄っっっっごく会いたかったんだから!!!」


え? え?! えぇえぇえぇえぇえ!?? なんでヴェルデ先生もつむぎ、なんだ?

訳わからんぞ!


『エル! これはどういう事だ!!』

『私にも、解りません!!』


あー! 開き直りやがった。

顔を背けてこっちを見やしない。


でも、どうすんだこれ?

二人の美少女に大泣きされて抱き着かれて、しかも二人とも僕の元奥さんだなんて。

頭を抱え込んで悩み出しそうになっていると、カーリーが僕の前に立ちはだかりヴェルデつむぎとフラムつむぎの間に入り込み強引に僕から二人を剥がしてしまう。

ややこしい。


「何ですか! 二人とも! 私のタクミ君に気安く抱き着かないでくれますか!!」


三つ巴でいよいよ、ややこしくなって来たぞ! どうなるんだ?


「タクミ! この子、カーリーは神核を持ってないの?」


突然、ヴェルデつむぎが、ああややこしいからヴェルデにしよう。

そのヴェルデが、僕達しか知らないはずの神核の事を聞いてきた。


「う、うん持ってるよ?」


「やっぱり。カーリー、今からあなたに重大な事を話す必要があるの。それには、私達とタクミそしてあなただけで話す必要があるから、白狼王様には少し五感を閉じてもらって欲しいの」


ヴェルデは僕達が転生者とかそういう話をするつもりなんだろうか?

でも、どうしてシロは聞いちゃダメなんだ?


「分かりました。タクミ君や先生達の間に何があるのか教えて貰えるのですね?」

「えー、そうよ」

「分かりました」


『そういう事だからシロ、ちょっとの間ミッシェルとあの黒い固まりを見張っていてくれる?』

『了解致しました。その間、私共とカーリー様達の間に障壁を展開し認識疎外しておきます』


そう言い残し、シロは結界内で浄化中のミッシェルの方へ向かい、障壁を展開し終えた。


「じゃあ早速、フラム、やっておしまい!」


どっかの女リーダーみたいな掛け声をヴェルデがしたかと思った瞬間、フラムの異常なスピードをまた体感する事になった。

いつのまにかカーリーの背後に周り羽交い締めにすると術式を展開して両手、両足と腰の所を拘束してしまった。

するとヴェルデも尋常じゃない速さでカーリーの前に立つといきなりただでさえ短めのスカートをおもいっきりたくし上げてしまった。


「きゃあーーーーーー!!」


カーリーも一瞬の事で為す術もなくされるがままになっていた。

僕も予想もしていなかった行動に釘付けになりカーリーの純白のあれをハッキリと見る事になる。

言っておくけど、僕は見たくて見たんじゃないからね?


「減るもんじゃないんだから騒がないの。どうせ、認識疎外の術式が服に展開されているんでしょ? だったらここに居る私達以外には見えてないんだし、ちょっと確認したい事があるだけだから、少し我慢してね」


そう言って強引に何かを探し始めるヴェルデ。

カーリーの股間の方に顔を突っ込み、手で内股の方をまさぐっている様だ、って恥ずかしいぞ、これは?

ちょっと堪えられなくなって顔を背けて視線を外してしまう。


「あー! やっぱりあった!」


しばらくすると大声で叫ぶヴェルデの声が聞こえてきた。


「タクミ! もういいよ。説明するからこっちに来てくれないかな。」


一体何があるんだろうか?

さっきまでの恥ずかしい行為が頭から離れない状態で、変な期待みたいな物を感じながら、ヴェルデ達の方に振り向いた。

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