魔法素養調査 5

「そうか! それじゃあ入学に関する説明を王都から来られたレズン・リードさんから聞いてくれ。この方は王都で農政局に勤めておられて、トネ村の農業事業の視察に来られていたんだが、たまたま魔法大学の講師もされておられてな、ちょうど君達の話しが出たのであわせて入学の説明をしてくださるそうだ」


「そうですか。ご迷惑をおかけします。僕はタクミ・カーヴェル、こちらがカーリー・マリガン嬢です」


僕が挨拶すると、少し驚いたようだが直ぐに姿勢を正して手を差し出してこられた。


「私はレズン・リードと言います」


僕たちは握手を交わすと、奥にある打ち合わせ用のテーブルへと移動して説明を受けることになった。

テーブルには、カーリーのお母さんと僕の母さんとの4人が並んで座り、リードさんが向かい側に座った。ちなみに父さんは用事があるので先に退席している。


「まずは皆さん、魔法大学への入学、おめでとうございます。これから、10才までの3年間、大学で魔法や一般教養の授業を受けていただきます。卒業後は11才から成人する15才まで学習する大学院への進学がありますが、これは成績上位者でその意思がある者だけとなります。生活は全寮制ですので、特に用意していただくものはありません。大学では制服が支給されますし、ある程度の小遣いも支給されますので雑貨や服等を買う位は問題ないと思います。これら全ての費用を国が負担致します」


はあ、ここまで聞いて凄い優遇されていると改めて感じた。それだけ、魔導士それも優秀な者は国にとって重要な存在何だろうと実感できる。


「大まかには以上になります。ちなみに、私は農政局で働く傍らに、大学では自然化学や薬草学等の臨時講師も勤めておりますので、担当させていただくこともあると思います。詳しい取り決め事項は後ほどパンフレットを送らせていただきますので今後の日程等もそちらを参考にお願いします」


丁寧に話しをして下さるリード、さん? いや先生になるのか。


「何かご意見がありましたらお伺いいたしますが?」

「特には無いわね! ビシビシ鍛えて下さい!」


真っ先にカーリーの母親、ジェナさんが発言する。おばさんらしいな。


「私も特にはありませんね。とにかく無事に過ごしてくれればそれだけで充分です」


僕の母さんも問題は無いらしい。常に僕の事を心配してくれる優しい母さんだ。転生して意識が覚醒した時は60才以上のおじいさんの感覚があって不思議な感じだったが今では自然と母として認識出来ている。やっぱりこの子供の年齢に精神や人格や心も引っ張られているのかもしれないな。


「それでは問題も無いようですので私はこれで失礼させていただきます。タクミ君、カーリーさん、来年の4月にまたお会い致しましょう」


「「はい、よろしくお願いいたします!」」


僕とカーリーとそれぞれの母親は席を立ち、深くお辞儀をすると、軽く会釈をしてリード先生が部屋から出て行かれるのを見送った。すると、ジェナおばさんが僕の方に近づいて来た。


「タクミ君、カーリーの事お願いするね。この子、タクミ君と一緒に学校へ行けるのがそうとう嬉しかったみたいで、夕べは一晩中ニヤニヤして気持ち悪かったのよ」


おばさんっていうよりお姉さんの方がしっくりくる容姿で笑顔のウインクしてくるジェナさん。美しいんだけど、印象的にはカッコイイの方があってるな。


「お! お!! おかあさん!! な、何変なこと言うのよ!」


顔を真っ赤にして怒りまくるカーリーがジェナさんに飛びかかる。えー!?と思ったが、喧嘩というよりなんだか武術の組み手みたいな形での攻防が開始された。君達、部屋の中なんだから、ほどほどにね。


「タクミ、カーリーちゃんの事どう思ってるの?」


いきなりの母さんの質問に戸惑ってしまう。


「どう? ってどういう事?」

「そんなの好きか嫌いかって事よ」

「な! そんな事聞かれても答えようがないよ。良い子だし、嫌いなわけはないし・・」

「ふーん、嫌いじゃないわけだ・・・」

「と、友達だから当然だよ!」

「うん、分かったわ。今はそれでいいから、カーリーちゃんの事ちゃんと守ってあげなさいよ。男の子なんだからね!」


ビシッと親指を立てて決めてくる母さん。でも、そこで格闘している親子を見てると、守られるのは僕の方じゃないかな? 

その後も色々と話をして、ようやくジェナ親子のスキンシップも終わったので、皆で帰ろうと部屋を出ようとしたとき村長に呼び止められた。


「すまん、皆に伝える事がもう一つあったんで聞いてくれ」


すると、村長の横にミッシェル君が近寄って来る。


「今回のタクミ君達の王都行きに、このミッシェルも同行することにしたので宜しく頼む」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・「「「「えぇえええええ!!?」」」」


4人が綺麗にハモりました。

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