ラングトン大学 試験編 8
「ちょっと、あなた達、えらく簡単に済ませたわね」
飽きれ顔のヴェルデと相変わらず穏やかな笑顔を崩さないフラムさんが僕達の所に小走りで近づいてきた。
「は、は、まあミッシェルの事は、僕もカーリーも対処法は良く解っているつもりでしたから、大丈夫だとは思ってたんですけど、ここまで簡単に終わるとは正直思ってませんでした」
「まあ、まだ悪魔の姿は残ってるけど全く動かないし、聖魔術の結界が強力だから問題無いと思うけど・・」
そう言いながらカーリーの横に座るシロと僕の足元にいるエルの方を交互に見ながら何か言いたそうな表情を僕に投げかけて来た。
「で、説明して貰えるかしら? この白狼は聖獣じゃなくて、神獣だよね?」
「えー? そう見えます? おかしいなあ? 目の錯覚かも知れませんよ?」
ジーーーーーーーーーーーー
ああ二人の視線が痛いです。
「はい、すみません。この子達は確かに神獣です。先生に嘘を付く事になって申し訳ありませんでした。私の使役しているのは、白狼王のシロです」
カーリーがまずヴェルデ先生に頭を下げて謝罪した。
多分、勢いあまって神獣化してしまった事を反省して真っ先に謝ったんだろうけど、そのおかげで相手に抵抗する暇を与えず処理出来たんだから、そんなに反省しなくてもいいと思うんだけど?
ただ、先生の顔は驚きを超えて呆れてるように見える。
「今、白狼王って言ったわよね? あなた達、その意味解ってるの?」
問いただすヴェルデ先生に僕達はゆっくりと頷く。
「その、上位の神獣ですよね?」
僕の答に首を横に振って大きく溜息をつかれてしまった。
「あのね、白狼王って言えば伝説級の神獣で神位、つまり神に一番近い存在なのよ。それをいとも簡単に使役してます、なんて言われても、はい、そうですかとはならないの! 大体、普通の人間が使役出来るはずないの! 解る? せめて、そこの白狐程度なら使役してると言っても納得出来るけど」
ヴェルデ先生って色々知ってそうだぞ。
誤魔化しきれないか。
『我が主に対して無礼だぞ人間!!』
今度はシロがカーリーを侮辱したと思ってヴェルデを威嚇し始めたよ。
『その上、エルカシア様を白狐程度と侮るなど言語道断!! カーリー様、この者に天罰を下す事を許可出来ませぬか!!』
『だーめ! 私の事を思ってくれるのは嬉しいけど、そんな事でいちいち怒らないの。それにエルカシア様の事まで先生が解る訳がないもの。大目に見てあげてね』
『カーリー様がそう仰るのであれば、致し方ありません・・・』
ナイス!カーリー、揉め事は少ない方が良いからね。
で、終わるかと思ったら、今度はフラムさんの様子がおかしい。
顔は笑っているんだけど、何か異様なプレッシャーを出している様な・と思った瞬間、目の前からフラムさんが消えた!
次にフラムさんを目で捕らえたのは、炎を纏う大剣をエルカシアの首元にあと数ミリ程の所まで剣先を突き付けている姿だった。
『あなた、エルカシアなの? この世界、アイダールの管理神のエルカシアなんですか?!』
危機迫るとはこの事を言うのかと思えた程、フラムさんは怒っているようだった。
僕もカーリーもシロも当のエルカシアも一歩も動けなかった。
ただ者ではないと思っていたけど、カーリーが反応出来ない程とは思ってもみなかった。
でも、何故?
それに念話で話している、どういう事だ?
『タクミ君、その白狐が管理神エルカシアと言うのは本当なのかしら?』
次はヴェルデ先生も念話に加わって来た。
一体どうなっているんだ?
念話は、その使役獣の主人とか、それに関わりが有って認められる者しか出来ないはずじゃあ・・・ここまで来たら嘘を言ってもお二人には見破られるか・・・
僕はヴェルデ先生とフラムさんに打ち明ける事にした。
『はい、この白狐はエルカシアです。数年前までは確かにこの世界の管理神でしたけど、今は土地神として地上に降りて、僕の使役獣として行動しています。』
そう話した途端、フラムさんの剣から吹き出る炎の量が一気に膨れ上がった!
僕もカーリーも耐性魔術を展開しているから、何とか耐えているけど、普通なら炎に触れなくても熱だけで身体が発火しそうな程の火力だ。
『エルカシア、私達が、誰だか解る?』
声は冷静そうに聞こえるがフラムさんの状態と今まで笑っていた顔が無表情になっていることでかえって不気味な恐さを感じる。
『さ、さあ? どちら様で、したでしょうか?』
エルは、この時の事を後でこう言っていた。
『神様だけど、あ、死んだなこれは、と』
それにしてもヴェルデ先生とフラムさん、エルカシアが管理神だった事も知っていたし、まさか、ね。
それだったら、先生達の年齢が合わなさ過ぎる。
50才は超えているはずなんで、こんなに若いわけがないと、思うんだけど・・。
それに何で二人も存在しているんだ?
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