入学 2
「えー、皆さんお早う御座います」
僕の後ろに隠れ、時々顔を覗かせるように、集まっている生徒に話し出すコーナル先生なんだけど、断然、僕の方が小さいので隠れきってませんよ? 殆ど見えます。
それでも、落ち着いて話が出来るなら、仕方ありませんけど・・・
「始めに、皆さんにはまず寮へ入っていただきます。エントランスで待機していただいている先輩の指示に従って、それぞれの部屋へ行っていただきます」
僕の後ろで縮こまりながら説明を続けるコーナル先生。
「それと、今から言う学生は、特別棟に入って頂きますので、この場に残って下さい」
特別棟? 一般の寮とは別の寮があるということなのだろうか?
「タクミ・カーヴェル」
「は、はい!」
突然、呼ばれてビックリした。
でもなんで僕が特別棟なのだろう?
「え? あれ男か? 女なのか?」
「きぁー!可愛いい! あんな可愛い男の子もいたんだ!」
「あ、後で声を掛けよう・・」
「お、お前! そんな趣味があったのか!?」
等々、色々な言葉が小声で飛び交って聞こえて来た。
ちょっと恥ずかしいし、一部には身の危険を感じる発言もあった様な?
「カーリー・マリガン」
「やった!タクミ君と一緒だ!」
そう言って無造作に抱き着いてくる。
「キャー、何あの子! 私のタクミ君に!」
「むちゃくちゃ可愛いじゃないかあの子!」
「なんだ? あの二人付き合っているのか?」
「くそ、爆発しろ!」
また色々言葉が飛び交ってきた。
しかし誰が私のなんだ? 何時そうなった?
「キーザ・ブルド」
「キルバ・ラウェリス」
お? あのキザな奴も受かっていたのか?
それにしても、あのキザ男の後ろに控えている男の子、キルバ・ラウェリスって言うのか、なんだか異様な感じがするのだけど。
『エル、何か感じないか?』
『はい、確かに雰囲気は嫌な気が感じられますが、いたって普通のヒューマンですね。魔物とかそう言った類いの妖気は感じられません』
『そうか・・・・』
僕達がいる場所から少し離れた植木や花畑がある一角にエルとシロを待機させて今の状況を確認してもらっているのだけど、気のせいかな?
でも、それとなく気をつけといた方がいい気がする・・・
「なんだ? 君達も合格していたのか? この大学もレベルが下がったかな?」
この少年は相変わらずだな。
「まあ、直ぐに追い出されないように頑張ることだ。まあカーリー君なら僕の女の一人になってくれるなら、ここの学長に口を聞いてやっても良いぞ。待っているからな!」
下心丸見えの嫌らしい目つきだし、カーリーなんか鳥肌たてて僕にしがみついてきたぞ。
「最後に、ルゼリア・サラウェイ」
「は? はい!」
元気の良い返事をして飛び出してきたのは、白地に紺のラインが入る修道服を来た女の子だった。
「ありがとうございます! えっと、タクミはんと、カーリーはん、それと、キザはんとキルバはんですね。私、ルゼリア・サラウェイと言いよります。一生懸命がんばりますんでよろしゅうにお願いいたします!」
言葉が独特だけど、元気のいい子だな。
修道服を着ているから、シスターの見習いだったんだろうか?
あー、キーザ君のところに言って頭下げまくってるよ。
「おまえ! 私の名はキーザだ! キザではない! 貴様! 不敬罪で打ち首になりたいのか!」
「い、いえそんな! すんません! 謝りますんで堪忍してください!」
「いーや、そこに膝を付いて首を差し出せ! キルバ! 剣を出せ!」
「は、」
おい、おいマジかよ。
おのキーザもキーザだがあのキルバって子も何も躊躇い無く剣を差し出してきやがった。
「ちょ、ちょっと待つんだ! こんなところで打ち首とかおかしいでしょ? 先生どうかやめさせて下さい!」
「キーザ・ブルド君、止めなさい! ここは学校内です。王族であろうと貴族であろうと、学内の規則に則って行動する義務があります! 不敬罪など、この場では摘要されません!」
さすが、先生! 相手が貴族の息子でもちゃんと言いきったよ。
コーナル先生、やるじゃないですか!
僕の後ろに隠れてなかったら。
「そんなの関係あるか! 私が切るといったら切るんだ!」
どんどんエスカレートするキーザに、地面に膝を付いてガタガタ震えてしまっているルゼリアさん。
周りも、その様子にざわめきだす。
「キーザ君、ここは大学で僕もルゼリアさんも、そして君も同じ学生なんだ。ここにいる間は皆同じ立場で勉学に励むよう、国王様のお言葉として定められていたはずです。そのお言葉を無視するような行いは、国王様に対しての反逆有りと思われても、なんの反論も出来ませんがよろしいのですか?」
「うっ、わ、判っておるわ! ただの冗談だ! くっ! 行くぞ、キルバ!」
「はい」
抜いていた剣をキーザ君は後ろに控えていたキルバ君に返すと、スタスタと寮の中へと歩いて行った
「また、貴様か」
すれ違う時、小声だったが物凄い恨みの籠った声で捨て台詞を吐いて行かれた。
小者感が漂うよなぁ。
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