入学 1
王都の外れに位置するラングトン大学。
周囲数キロの城壁に囲まれ、敷地の中には川もあれば湖もあり森や山の一部の利用した大学の為だけの空間がそこに作られていた。
おかげで、王との中央辺りからこのラングトン大学までが徒歩で2時間くらいかかってしまい、さらに敷地内に入ってから大学の校舎がある所まで、さらに1時間位かかってしまうというとんでもない広さの大学なのだ。
僕たちはお世話になった宿屋、六花亭を後にしてこの大学の学生寮に来ている。
「タクミ君、凄いね!この学生寮。宮殿みたいに大きいよ!」
横に立つカーリーもその豪華な学生寮に目を奪われていた。
外壁は大理石に似た全体に白い石造りに、所々を金や銀で装飾された紋様で彩られたその佇まいは、そのシンメトリー性も相まって、豪華さに拍車をかかり、何処かの宮殿と言っても憚ることはないと思えるほどだった。
「まるで、少し小さめのベルサイユ宮殿だな。」
「ベ・ルサイ・ユ?」
カーリーが小首を傾げ何だろうって顔している。
最近、カーリーが物凄く可愛く見えるのはひいき目だろうか?
「カーリーはまだ前前世の記憶が戻ってないから分からないか。僕や、カーリーが居た前の世界でヨーロッパという所にある宮殿がちょうどこんな感じだったはずなんだ」
そう、写真でしか見たことないから細かく覚えてる訳じゃないんだけどね。
そんな、たわいのない話しをしている間に、僕たちの周りに同じように入学が許された子供達が続々と寮の前に集まり始めていた。
僕たち新入生はまず寮の前に集まるよう言われていたのである。
「結構な人数がいるね。」
「そうだな。ざっと150人位かな?」
「ちょっと女の子の方が多いのかな?」
カーリーが集まった子供達を見てそんな事を言っていた。
でもちょっと顔が嫌そうな顔をしてる様に見える。
どうしたのだろうか?
「ちゅうーもーく!」
突然、寮の玄関上に設けられたバルコニーに黒いマントに身を包んだ魔導士姿の男性が、僕達に向けて注視するよう大声を張り上げた。
「諸君、まずは入学おめでとう! 私は、君達が通う事になるラングトン大学の第一学部の学部長、ドランド・トンナ男爵である!!」
自分で男爵なんて言って、威張ってる感、ありありだな。ただ単に学部長という肩書だけの紹介で十分じゃないか?
子供に威張り散らして何を求めているんだろう?
これはあれだな。お約束的に注意すべき先生という感じだな。
「君達は、シルフィテリア王国が世界に誇る、魔導と武術の先端教育を実践しているラングトン大学の入学を許された選ばれし者達である! これからの3年間、男爵である私の言い付けを守り!勉学、魔術学、武道に励む事! 以上!」
そう言い切るとさっさとその場を退出して行った。
え? それだけ?
今後の行動予定とかは?
みんなもざわついてる。
「あの~皆さ~ん」
ん?
「あの~、み・な・さ~ん、聞いてもらえますか~」
どこからか弱々しい声がするなと思ったら、いつのまにか玄関正面に一人の女性が申し訳なさそうに立っていた。
彼女は、紺色のジャケットにタイトなスカートを履き白のローブを纏った、大きな眼鏡をかけた可愛らしい女性なのだが、如何せん声が小さくて僕達みたいに近い生徒以外は殆ど聞こえないみたいだ。
「先生ですよね? どうかされましたか?!」
僕はわざと大きめな声を張り上げ、その先生と思われる女性に視線が集まるようにしてみた。
そのかいあって、他の生徒も気づいてくれ、ざわめきが治まり皆の視線がその女性に集まることになった。
「!!!・・・・・」
どうしたんだろう?
今度は赤くなって黙ってしまったぞ?
「そ、そんなに、見ないで下さい。恥ずかしい、です・・・」
僕はどこぞの芸人ばりにこけそうになったぞ。
「先生? あなたが皆に見てほしいって言ったんじゃないですか?」
僕が尋ねると、先生はブンブンと頭を横に振っていた。
「ち、違います。は、話しを聞いて貰いたいんであって、こんな大勢の人にいっぺんに見てほしい訳じゃありませんから」
顔を俯かせながら精一杯の声で話してきた。
なんかとてつもなく厄介な先生じゃなかろうか?
さっきの先生といい、ここの大学本当に大丈夫なのか?
「それじゃあ、僕が前に立って皆から見えなくしますから、喋ってもらえますか?」
このままじゃ話しが進まない気がしたので提案してみると、勢い良く縦に頭を振ってくれた。
「お願いします。えっと?」
「あ、タクミ、タクミ・カーヴェルといいます」
「タ・タクミ君でいいかな?」
「はい、宜しくお願いします。えーっと、」
「あ! コ、コーナル・ウェンスキです」
「はい、ウェンスキ先生。」
「いえ、コーナルで良いですよ。」
「そうですか?じゃあコーナル先生」
「はい!」
何故か先生物凄く嬉しそうにしてるけど、何かあったのか?
で、カーリーが何故か物凄く不機嫌そうにしてるけど何故?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます