グランディール家の晩餐会 1
「みんな凄く綺麗、やっぱり女の子は着る服一つでまた違うイメージになるね」
僕達は、カルディナからの招待で、今、グランディール公爵家の晩餐会に出席するために集まっていた。
「そんなにジロジロ見るなよ! 恥ずかしいでしょ!」
ヴェルデが薄いグリーン色でフリルが所々にあしらわれたドレスを着ていた。身長が年齢の割には低くいのでどちらかというと可愛らしいと言った方がピッタリだ。
フラムは胸元を大胆に見せる大人の雰囲気を際立たせる深紅にドレスだ。どちらかとおっとりとした性格にこの裾が広がるドレスを着ると優雅に見え、どこかの貴族令嬢だと言っても不思議ではない。
カーリーは僕と同じ8才だけど、このところ急に大人っぽくなった気がする。白い身体にフィットするタイトなドレスが余計に大人びて、綺麗に見せていた。
トルエは、カーリーより年上の13才という設定?らしいが、フラムと色違いの大人びたドレスを着ても何処か幼さが残る可愛らしい女の子と云うイメージだ。ただこの中では一番年は重ねているし、金色の瞳が時々凄みを見せるので他の奥さん達とは違った魅力があった。
クロちゃんは、それこそ黒と赤のドレスを着込み、胸が飛び出すんじゃないかと思える強烈なデザインで一番大人な女性を演出しいていた。
そして、カルディナはお姫様だった。純白に薄い青色でグラデーションされた裾が広がるドレスに、色とりどりの宝石で施されたイヤリングやネックレスに指輪を身に纏って輝いていた。でも全然嫌みっぽくないその宝石類にセンスの良さが見え隠れしている。
はっきり言ってみんな凄く綺麗だった。この女の子達が僕の奥さん達だと思うと嬉しいけど責任も感じる。これは男として頑張らなきゃいけないね。
「タクミ君も素敵だよ!」
「そうじゃな、さすが我が夫じゃ」
「そんなの当たり前じゃない。私達の旦那様なんだから」
「タッ君、カッコイイよ」
「タクミさんは、素材が良いからの、何着ても様になるの」
「タクミ様・・・・・・ポッ」
奥さんの褒め攻撃が無茶苦茶恥ずかしい!
ただの黒いタキシードなんだけどな。こうも言われると変なプレッシャーが掛かるから程ほどにお願いします。
コンコン
僕達のいる部屋の扉をノックする音がし、続いてゆっくりとその扉が開かれた。
「お嬢様、ご用意が出来ましたので、ご案内いたします」
ロマンスグレーのオールバックの髪型にしわ一つ無い黒の執事服を完璧に着こなす初老の男性が深々とお辞儀しているのが目に入った。
さすが公爵家というのかな。漫画に出てくる執事のイメージそのままの感じにちょっと感激した。
そういえば、前世の子供の頃、執事をどうしてもヒツジとそか言えなかった記憶があるな。
「ありがとう、セルジ。お願いしますね」
ああ、何か凄くしっくりくる。貴族の令嬢とそれに使える執事の理想の光景を見た気がする。
カーリーやヴェルデ達も見入ってるから同じように感じているのかも。
「タクミ様、それではまいりましょう」
「あ?ああ、判った」
僕達は部屋を出て、晩餐会の会場へと向かった。
暫くセルジさんに付いて歩く。結構距離があるな。
迷路の様な屋敷内の廊下を幾度か曲がり、ようやく会場の入口にたどり着いた。
屋敷も広いからだろうけど、普通パーティー会場なんて、玄関口からそれほど遠くないところにあるのではと思った。こんなに屋敷奥にあっても客人にとっては不便極まりないと思うんだけどね。
「会場の部屋まで迷路みたいで少し、驚きました?」
僕の考えを察知したかのようにカルディナが聞いてきた。
日が浅いのにもう以心伝心するような仲になったのか?
「このお部屋に初めて招かれる殆どの方が、そう思われるんですよね」
なんだ、そういう事か。ちょっと残念。
「でも、どうしてこんな奥まったとこにあるの?」
僕が尋ねると、カルディナは優しく微笑む。
「この部屋は、ごく親しい方とか、特別な方のみお招きするプライベートルームなんですよ。なので一般的なパーティーとかする大広間は別にあるんです」
なるほど。
と、云う事は僕たちはカルディナにとって特別と云う事でいいのかな?
「タクミ様、ではこちらにお入り下さい」
カルディナの言葉と共に、執事のセルジさんが、人の倍位の高さがありそうな白く大きな扉をゆっくりと開けて招いてくれる。
まずカルディナが入り、僕達はそれに続き部屋に入る。
ガァバァアア!! ギュウウウウウ!
「うお! な? 何だ !?!」
僕の目の前が一瞬で真っ暗になっていた。と云うより顔全体が何かに押し付けられて前が見えない状態になっていた。
しかもその何かはとても柔らかくて、暖かくて、良い香りがする。
で、でもこれはまずい!顔全体を覆っているせいで口も鼻も完全に塞がって息が出来ない!
僕は何とか逃れようと顔を左右に振るが、その柔らかい物は顔が動く方向に一緒について来るので逃げきれない。
力任せにとも思ったけど、その物体が柔らか過ぎてあまり力を入れるのは良くない気がする。
仕方ないのでもう一度僕は顔を左右に何回か振る。
「あ! あん、だ、だめよ」
なんか変な声がするぞ?
「大胆ね、でも凄く良いわ!」
何となくだけど柔らかい物体の正体が判った気がする。
いや多分間違いない。
けど一体、誰だ? それよりそろそろ息が!
「お! お母様!! 何をされてるんですか! タクミ様が窒息死してしまいます!!」
僕がジタバタと体を動かしていると、カルディナの怒った声が聞こえた。
「あら? まあ、まあ、まあ。それは大変ね。でも気持ち良いからもうちょっと、駄目?」
「駄目です!!」
「仕方ないわね。はい、これで大丈夫かな?」
一瞬で視界に光が戻って、大量に酸素を取り込む事が出来た。
「はあ、はあ、い、一体何が起こったんだ?」
「タクミ様! ごめんなさい! ごめんなさい! お母様も謝る!!」
「ええ~良いじゃない別に。どうせ親子になるんでしょ? この男の子とは?」
カルディナの慌てっぷりに反して、その女性は、のほほんとした雰囲気を醸し出し、今にも寝てしまいそうなトロッとした笑顔を見せながら、僕を見つめていた。
そうか、この方がカルディナの母君、レイティア様か。
「お目に掛かれて光栄にございます。私がタクミ・カーヴェルでございます」
僕はそのまま片膝を付き、レイティア様の手をそっと取り甲に軽く口づけをし挨拶をする。
たしか、前世で見た映画とかアニメとかでこんなふうにしてたよな?
「あら、あら、まあ、まあ!」
レイティア様は、少し驚きうっとりとした表情で僕を見つめてくる。
ん?何か失敗したかな?
それに何故か、カーリーやヴェルデ達から物凄く力強い視線で睨まれてる気がする。
「私達まだあんなことされて無い!!」
この晩餐会が終わったら皆にも口づけすることが決定事項となりました。
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