王との謁見 3

王様との謁見が終わった僕達は、別室に移動していた。


「いやあ、無事に終わって良かったのじゃ!」


トルエがこの部屋に置かれている、高級そうなソファーにドカッと胡座をかいてリラックスしていた。

でもこうして改めて見ると、トルエって12、3才位にしか見えないんだよな。でも真竜だしもっと歳とってるはずだけど、


「ねえ、トルエ、君は転生し直したのが、皆より早いんだよね?」

「そうじゃの、悪魔との件で転生し直されたんじゃが、どういう訳か、わらわは時間軸まで飛び越えてしまったようで、60年ほど遡って転生したようじゃ。ただし覚醒したのが13年前じゃからの、だから13才でよいぞ」

「じゃあ、トルエ姉様って73才だ、お婆ちゃんなんだね!」


カーリーが、計算早く思った事をズバッと言ってきた。


「だ・れ・が、お婆ちゃんじゃ!」


グリグリグリグリグリグリグリ!


「痛い! 痛い! 痛い!」


トルエが瞬間移動して、真向かいのソファーに座っていたカーリーの背後に回って、拳骨グリグリをこめかみに決めていた。


「3000年は生きる皇帝真竜の70年なぞ、100年くらいしか生きれない人と比べれば赤子同然じゃ、13才設定など可愛いもんじゃろ!」

「でも、私達より若いなんて、何か納得出来ないわね」

「そうよねえ、せめて私達と同じか上でないとねえ、真竜だし」


ヴェルデとフラムが講義の声をあげる。


「別に良いではないですか、色々な年齢設定の奥さんがいてタクミさんも嬉しいんじゃないかの?」


クロちゃんが何か言ってるけど、別に僕はどんな年齢だと奥さん達は大切にするつもりなんだけど。まあ嫌じゃあないけどね。


「ああ、タクミ君、顔がにやけてるよ」


カーリー、そんな事言わなくていいから。


「それよりもじゃ、わらわ達は何故ここで待たされなきゃならんのかの?」

「それはカルディナと、カルディナのお父さんグランディール公が僕たちに会いたいと云う事でここに呼ばれてるんだよ」

「そのカルディナ嬢もターちゃんの嫁さんになる子じゃったかの?」

「そうなんだよね。ただでさえタクミは奥さんが5人はいるんだから、なるべく他の女の子を口説かないで欲しいんだけどね」

「こら、ヴェルデさん、いつ僕が女の子を口説いたと云うんですか?」

「え?判らないの? カルディナを始め、あと修道女のルゼリアはほぼ確定でしょ? それにコーナル先生も危ないわね」


ちょっと、コーナル先生も入ってるんですか?僕、いつ口説いたんだろう?


「その顔は、判ってないわね。とにかく今ここにいる5人にあと最低でも3人は加わりそうだからね。だかこれ以上はなるべく増えないように、タクミには必ず誰かが引っ付いているようにしましょう!」


えー?ちょっと何いってるのかな?


「賛成!!ヴェルデ姉様!さすがです!」

「良いわね、私も賛成!」

「良いではないか?なるべくなら、わらわは夜の当番を所望じゃ!」

「駄目です。それもシフトしますからね」

「わしはそなた等に任せるからの」


えーっと、僕の意思は無いようでした。


それから暫く、主に夜の当番を誰からスタートするかで揉めることになりました。ほどほどにお願いしますね。


コンコン。


そんな話をしていたら、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「はい、どうぞ」


僕が答える。ガチャというドアノブが開く音共に扉が開き、一人の女性が入って来た。

それは、白いドレスを見に纏い、髪をアップにして頭の上に宝石が鏤められたティアラを付けたお姫様がそこには居た。


「カルディナ?」

「はい、タクミ様。カルディナです」


僕は、その美しさに見惚れてしまっていたようだ。カーリーにお尻を抓られて我に帰るまで気付かなかった。


「それにしても本当にお姫様だったんだね。ものすごく綺麗です。」


僕が不意に綺麗だなんて言ったせいか、カルディナは顔を真っ赤にさせ俯いてしまった。普段生徒会長として凛とした感じからは想像出来ないほど可愛らしかった。

痛い!カーリーもヴェルデもトルエも僕のお尻をそんなに抓らないで下さい。


「この度は、お疲れ様でした。シルフィテリア王国の公爵家としてお礼申し上げます」


カルディナが、まだ赤い顔をしながらも丁寧にお辞儀をしながらお礼の言葉を述べる。


「別に、王国の為にやったわけじゃないよ。カルディナをあんな男共のおもちゃにされるのが嫌だったからしたまでの事だから、気にしなくても良いよ」


そう言ったら、何故かカルディナの顔がもっと赤くなってしまった。どうしたのだろうか?


「タクミ、あんたやっぱり判ってないわね。そうやって無自覚に女の子を虜にするのやめなさいね」


え?そうなの?今、僕、何かしたの?

不思議そうにしている僕の顔を見て、ヴェルデやカーリー達は大きくため息をついていた。


「と、とりあえず皆様には、我が父グランディール公にお会いしていただきたいと思いますので、今宵夕食会を設けさせていただきました。是非ご出席いただきたいと思います。」

「おー!人の晩餐会は初めてじゃ! ターちゃん楽しみじゃの!」

「うん、それは楽しみ何だけど、貴族の夕食会ならドレスコードがあるんじゃないかな?僕らは礼服やドレスなんか持ってないよ?」

「それはこちらでご用意しますので大丈夫です。ただ・・・」

「ただ?」

「私の父がタクミ様の事を色々聞いて来ると思いますのでご注意下さい」


それは当然の事だろう。自分の娘の婚約者になるかもしれない男の事を色々聞くのは父親としては当たり前だよね。


「それは仕方ないよ、どこの馬の骨とも判らん男に自分の娘を嫁になんて簡単には納得出来ないだろうからね」

「そんな、タクミ様は立派な方です。馬の骨などとは・・・・」

「そんなつもりは無いから大丈夫、ちゃんと正面から向き合って話すからね」


僕は今晩に向けてちょっと気合いを入れて頑張ってみることにした。

ちなみに、先ほどトルエが真竜は3000年程度は生きると言っていたので、そうなると僕らがかなり先に死んでしまって一人にさせてしまう事に悲しんでいたら、エル曰く、どうも僕たちも神核を持っている事で相当寿命は長いようだ。

ん~、それで良いのかな?


ーーーーーーーーーーーーーーー


場所は変わって王城のとある一室。


「くっそ!王の暗示が完全に消えてしまったではないか! これでは計画が台なしだ!一体どうすれば!」

「相当お困りの様子ですね。ローエン長官」

「誰だ!」

「私ですよ。キルバ・ラウェリスです。」

「おお!キルバ殿ではないですか! キーザの悪鬼化の実験が失敗してからお姿を拝見せなんだが、どこにおられたのですか!」

「いえ、野暮用でちょっと隣国のダールフェルド帝国に行っておりまして先ほど戻って来たところです。しかし驚きましたよ。まさか皇帝真竜の呪縛を解除する者が現れるなんて考えもしませんでした」

「全くです。せっかくクドエルド様が皇帝真竜を使ってこの国の王と公爵、貴族と主要な軍事施設を抹殺する計画を立てていただいたというのに口惜しいです!」

「そうですね。真竜が競技者との戦いの中で暴走、国王等が亡くなった後、手筈通りならローエン長官が真竜を倒し英雄となってこの国の新しい主になるというシナリオが完全に消えてしまったのですからね」

「忌ま忌ましいことです!」

「タクミ・カーヴェルと言いましたか? まさかその真竜を呪縛を解いてそのうえ手なずけてしまったというではありませんか? それは本当なのですか?」

「はい、全くもって信じられませんが、本当の事です。しかもそのタクミ・カーヴェルは、公爵令嬢と婚約する事になっております」

「それは、ちょっと問題ですよ。クドエルド様は次の計画の為にこの国を離れてしまっておられる。必然的に次期王の候補が王族には残っておりません。そうなれば公爵家のその令嬢が有力となってしまう。しかもその夫が真竜使いとか考えたくもありませんよ」

「キルバ様、どうしたらよいのでしょうか!?」

「ん~、そうですね、そのタクミと云う者には仲間がいますよね?」

「はい、全て女性ですが、かなりの力量の持ち主ばかりです。」

「そうですか。ではこうしましょう。その仲間の中で一番弱そうな人物に呪縛を施し、カルディナ嬢を殺させましょう。そうすれば次期王候補の排除と、公爵令嬢を殺した犯人として彼らを罪人にしたてあげる事ができますよ」

「なるほど!そうなれば奴らを消す大義名分が出来るわけですな。」

「そうですね。それぐらいは貴方でも出来るでしょう?」

「はい! お任せ下さい!」

「それでは、私はこれからクドエルド様と合流し次の計画の準備を進めますので後の事はよろしくお願いしますね」


ーーーーーーーーーーーー


そしてこのシルフィテリア王国からまた一人の男が人知れず消えていった。


「まあ、あまり期待しないでおきましょう。失敗したらしたで時間稼ぎくらいにはなるでしょう。フフ」

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