反省会 2

あの後、カルディナとルゼには、タクミやヴェルデが異世界からの転生者で、そのうえヴェルディ達はテレジアという一人の少女からの生まれ変わりだと説明した。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「俄には信じがたい話しですが、タクミ様がそう仰るならそうなんでしょう」


えらくあっさり納得するカルディナ。

それと気になる事があったのでタクミは聞いてみた。


「カルディナ会長、その様付けはよしてもらえます? 一応、僕の身体年齢は8才ですよ? 年上の女性に様付けで呼ばれると恥ずかしいというか、そういう事なんですよ」

「それなら、同い年の私はタクミ様と呼ばせてもろていいですね」


いまだにタクミの腕をしっかり捕まえて離さないルゼが、様付けの許可をしれっと言ってくる。


「ルゼに言われても恥ずかしいのだけど」

「大丈夫です。直ぐに慣れますから」


カルディナとルゼが、そうそうと二人で頷いている。


そうなのか?


このままじゃまた話が進まなくなりそうなので、この件はほっとく事に決めたタクミだった。


「私はやっぱりタクミ君かな?」

「そうお?タクミが良いわよ」

「えーじゃあ私はタックンね」


カーリーとヴェルデとフラムがいつの間にかタクミの呼び方を決めようとしていた。


「カーリーさん達何しているのかな?」

「え、えっとね、タクミ君の呼び方をそれぞれどうするか考えてるんだよ?」

「ちょっと、タクミに惹かれる女が増えたからね。それぞれ今の内に呼び方を決めておいた方が良いかと思ってね」

「え?ヴェルデ、僕に他の女の子が寄って来ても良いの?」


「良いわけないじゃない。あくまでも私達が認めた女性だけよ。これからは厳しくいくわよ! みんな!!」

「おーーー!!!!!」


正座しながらだけど、拳を振り上げて決意を新たに掲げているヴェルデ達とカルディナとルゼも一緒になって五人が拳を挙げていた。


「あのー、ヴェルデさん。カルディナ会長とルゼは認めるの?」

「しかた無いじゃない。王妃様には私達借りもあるし、あの王を筆頭に三馬鹿兄弟にも痛い目に会わせてやりたいし。それに、国民を第一に考えるカルディナを守ってあげたいじゃない。ルゼは、ここまで巻き込んじゃったし成り行きよ」

「僕の意志は?」

「何言ってるの? 助けるんでしょ? タクミなら」


さすが、元奥さんだけの事はあるか。

お見通しだね。


「まあね。カルディナ会長を、奥さんにするかどうかはまた別の話だよ? でも、僕で何か出来る事があるなら、やるべきだよね?」

「ほ、本当に良いんですか?」


カルディナが真っ直ぐタクミを見て、再確認してくるので、タクミはウンと大きく頷いてあげた。

突然、大粒の涙を流し出したカルディナ。


「うっうっう、ぐす、う~」


溢れる涙を手で押さえようとするが、そんな事しらんとばかりに次から次から、涙があふれだしている


「あ、あり、がとう、う、ござい、ま、う、す、ぐす、タ、タクミ、さま」


試験の時はあれだけ毅然として振る舞い、鬼との闘争の時にも勇敢に立ち向かえる彼女が、今目の前で泣き崩れているのを見たタクミ。

よっぽど怖かったんだろうなあと、タクミは思うと、カルディナの所に近づいて座る彼女の頭をそっと抱える様に抱きしめてあげた。


「ずっと一人で抱えていたんだね。そんな鬼畜な兄弟にカルディナは渡さないよ」


カルディナはタクミの胸の中で泣きじゃくりながら小さく頷いた。


「いいなあー。私にも後でしてほしいなあ」


他の四人からの視線が、もの凄い圧力でのしかかって来るので、後で順番にだよ、と言ってその場を凌ぐ。

ただ、これがこの後タクミを今晩寝かさない事になるとは、タクミ自身思っていなかった。


「それより、その婚約相手選抜試験だっけ? その内容をもうちょっと詳しく教えてくれる?」


ようやく涙も止まり、落ち着いてきたカルディナに試験の内容を聞く事にしたタクミ。


「わ、分かりました。まず、三馬鹿との婚約については、はっきり言って当の本人達はどうでも良いと考えているようです。ただ専属の玩具が増えるくらいにしか考えて無いと思います」


自分で話ながら、腹がたって来たのか、今度は顔が険しい表情へと変わっていった。


「あくまでも、これはシルフィテリア王の計略で、グランディール家の弱体化を狙ったものです。なので断る事が出来ません。断れば、また難癖つけて結局はグランディール家を潰すおつもりなので、それに変わる何かが必要でした。そこで、わたくしの叔母にあたる、現王の王妃様に相談させていただきました。最初は、なかなか良い案が出なかったのですが、そんな時たまたま、真竜の子供を生け捕りにしたとの報告が王城へ連絡が入ったのです。」


「良く、生け捕りに出来たね」


「はい、どうも生まれて100年程度しか経っていない子竜で、片翼が奇形状態で小さく上手く飛べなかたった為に真竜の集団に置いて行かれたのではと言う事です。それで、だいぶん弱っていた事もあって捕獲出来たそうです」


「なるほどね。でも、片翼とはいえ真竜だよ? 生け捕りにして、どうするつもりだったの?」


「それが、あの馬鹿王は、真竜を手懐ければ軍事力強化となる、などとほざかれたのですが、従属契約の魔術を行使するのに、国家魔導士を100人も使わなければ成らず、それも定期的にかけ直さないと契約力が薄れて暴れ出すはめになり、今では、幾重にもなる結界の地下牢に閉じ込めているとの事です」


カルディナも時々、王に対しても口調がおかしい時があるから、王もろくでもないのだろうと云う事がわかる。


「それでも、真竜を国の管理下に置いてあると云う事だけで、それなりに他国には牽制が出来るみたいですので、今でも殺さずに飼っているようです」


「なるほどね。真竜が居る理由は解ったけど、それがどうして婚約者選抜試験なんてものになった訳?」


「王妃様が言うにはですが、それでも真竜を飼って行くには経費が馬鹿にならないようで、持て余し気味らしく、いっそ真竜を討ち滅ぼすような強者を探し、その者を国から報酬や爵位を与え、従わせた方が良いと王族は考えたようです。」


「まあ、普通そうするだろうね」


「はい、ただ、いくら爵位を与えると言っても、なかなか候補者が現れなかったので、それならばと、私の婚約者という副賞を発表したんです。」

「はあ、何か、カルディナを品物か何かと勘違いしてるようで、腹が立つぞ」

「あ、ありがとうございます。何か嬉しいです」


少し顔を赤くし、恥ずかしそうにするカルディナ。

皆の心のブーイングが聞こえて来るようだとタクミは苦笑いする。


「でも、王妃様もその事について謝ってくれていますし、強い男性の妻になるのであれば、それは嫌な事ではありませんから」

「そうか。で、結局集まったの?」

「はい、1000人程」

「凄いね、カルディナってやっぱり人気あるんだ」

「そ、そんな事・・・・」


赤い顔をさらに赤くし、俯いてしまう。


「ただ、書類選考を通った者、300人を見ましたが、私より強そうな者は感じられませんでしたので、」

「なるほどね。王族としては、真竜に勝てなくても強者を発掘出来て登用する事が出来、カルディナも結局は王族の物になると。」


「はい、でも私と王妃様はそれに一縷の望みを抱くしかなかったのです」

「そこに僕が現れたと」

「はい!」

「勝てるか分かりませんよ?」

「タクミ様なら大丈夫です!」


自身満々に答えるカルディナを見て断る事を断念するタクミだった。


「できる限りの事はしてみます。でも、婚約どうのは別の話でお願いしますね」

「はい!でも大丈夫だと思います」


そう言って、タクミに抱き着くカルディナに、周囲から大ブーイングが起こり、タクミ争奪合戦が朝まで続く事になってしまった。


僕はまだ8才だぞ!絶対貞操だけは死守するぞ!と決意し頑張りました。

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