入学 4

僕を先頭に、カーリーが横に並んで歩き、直ぐ後ろを先生がついて来る様な形になり、ルゼはその直ぐ後ろを、キーザ君とキルバ君はかなり前を歩いている。


「ここが、特別棟の室内演習場です」

「え? 寮じゃ無いのですか?」


カーリーが先生に問い掛ける。


「はい、あなた達は、今回の試験で優秀な成績でしたので、通常の2学年修士課程を飛ばし、大学院クラスへの飛び級試験を別に受けていただきます」


飛び級? たしかこのラングトン大学は、入学から2年修士で卒業で、さらに優秀な人材は大学院クラスで特別修士を2年受けられるのだったかな?


「ただし、ここで行われる試験で不合格と判断されれば、通常の修士過程から進んでもらいます。もし、そうなったとしても優秀なあなた方でしたら、2年を1年で修士を終えて大学院への進級も可能と先生は思っています」


なるほど。ここで駄目でも通常の修士課程からは始められるのか。


「では、中に入りましょう。それと、タクミ君とカーリーさんは、自分たちの使役獣も同伴してください。あくまで、今の最高の力を見極める試験ですので使役獣もあなた達の示す力に変わりありませんので」

「判りました。では、中に入ってから召喚いたします」


僕の言葉にカーリーも頷く。

それを合図のように、僕たちは演習場へと向かい中へと入って行った。


大きな鉄の扉が開く門を潜り、薄ぐらい廊下を歩き演習場の中心へと向かう。

ほんの少し歩くと演習場の中が通路の先に見え、だんだんとその全貌が姿を表しはじめた。

そこは、前世で言えば、オリンピックでも開催できそうな広大なグランドが広がり、3メートルくらい競り上がった周囲の上にはすり鉢状に観客席が設けられていた。

天井は、一本一本が丸太の様な太さの梁をトラス状に組み、それを幾本も繋げる事で天井を支えている。

その天井はガラスの様な透明な板で覆われ日の光が演習場の中へと注ぎ込まれていた。

はっきり言って、前世の競技場より美しくその構造も信じられないような作りをしていた。

魔法があっての施設だろうけど、これは凄いな!


「凄いですね、先生。こんな綺麗な建物始めてみました」


僕は素直に感想を先生に言うと、先生も自分が勤める学校の施設を褒めてもらえたのが嬉しかったのか、そうでしょう、そうでしょうと、満足げに頷いていた。

皆も、同じ様に驚いき、施設を眺めていた。


「では皆さん中央に進んで下さい。そこに、きょうの試験官として立ち会っていただける方がお待ちです」


先生に促され、グラウンドの中央を視線を向けると、紺色を基調としたスカートと服に、金属製の肩当てや手甲等、防具を見に纏い、その身長には似合わない大きな大剣を地面に突き刺す様に前に持ち、一人の女性が立っていた。


「私はこのラングトン大学院2年生、カルディナ・グランディール、生徒総会の会長を勤めています。新入生諸君! 今日この場に居る事を嬉しく思いなさい。あなた達は、その才能を認められ、私に挑戦することを許された者達です。その幸運を最大限に生かし私と一戦まじえ、認めさせる事が出来れば、晴れて我等院生の仲間となることを許しましょう!」


揺るぎ無い自信に満ちた言葉と態度の圧力に、キーザ君やルゼは少し気圧されているようだ。

一方カーリーはそんな圧力なんか、なんとも無いというふうに平然と僕の隣に立っている。

キルバ君も涼しい顔でグランディール会長をと対峙している。

やっぱりキルバ君もただ者ではない気がする。

グランディール会長は、僕とカーリーそしてキルバ君をそれぞれ見定め、にこやかな笑みを浮かべていた。


「それでは、早速始めたいと思いますが、先生はどこにおられます?」


グランディール会長が、コーナル先生を探しているようだったので僕は手を挙げてみた。


「先生なら僕の後ろにずっといますけど?」


僕の言葉にグランディール会長が振り向き先生の姿を確認したようだ。


「コーナル先生、試験始めますけど宜しいですか?」


やれやれといった感じを出しながらも特に注意することなく、話しを進める会長。

こういった事には慣れてる感じだな。

良く有ること何だろうか?


「宜しいですよ。まずは誰から始めますか?」


先生の方も会長にこの姿を見られても恥ずかしくなるという事もなく、話しを進めている。


「では、私から行こうではないか!」


最初に手を挙げたのはキーザ君だった。


「私の実力は、最初の試験ではあまり発揮できなかったが、今年の新入生で私が一番強い事をこの場で証明して見せてやる!」


どこからその自信が出てくるのか不思議ではある。

キーザ君は大剣と盾を携え前に出てくる。

グランディール会長は、その鋭い目つき相手を見据える。

金色に輝く腰近くまで伸びる美しい髪に青い瞳の端正のとれた顔立ちは、これから戦闘をする様には全く見えない。

しかしその落ち着いた佇まいは、彼女がただ者では無いことを物語っていた。


「位置に着きましたね。それでは、最終確認試験を始めます。双方! 礼!」


先生の掛け声で試験が始まった。

でも、僕の背中に隠れて合図されても手しか見えませんよ?

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