女性達は語る 4
「そんなに王子様のご兄弟って色情魔で人間の屑だったんですね。」
今までじっとヴェルデ達の話を湯舟に浸かりながら聞いていたルゼが半分感心するように頷いていた。
聞かれていたらルゼも不敬罪確定だね。
「ああ、噂の王家不良兄弟ですか。六花亭にくるお客様も時々話してますね。男性客は面白そうに話しますけど、内容を聞くと女の敵の何者でもないですよ」
ルゼの隣で浴槽の縁に座り、その見事なまでのプロポーションをみんなに見せつけていたクロちゃんが働いている六花亭での噂話を思い出して話に続いた。
「まだ、私も働いて数日しか経ってないですけど、あの王家三兄弟の噂は酷いものです。先王妃の子供で甘やかされて育ったせいか、素行が悪く、王族以外の人間をただの道具かペットの様に考えているのじゃないかと話していましたよ。それに、この兄弟に仕えたメイドは、まず間違いなく手籠めにされ、使用人への虐待は当然の如く行われ、平民にはちょっとしたことで直ぐ不敬罪を適用すると言う、存在しないほうが世の為みたいな連中だそうです」
カルディナの話しや巷での噂通りなら、三馬鹿の誰かと結婚すると彼女の身の保障は期待できない。
それは命というより女性としての尊厳の保障がだ。
ヴェルデは改めてカルディナに協力しようと誓うのだがどうやってそれを阻止するのかが解らなかった。
「カルディナ。どうやって婚約破棄させるの? 相手は皇太子を始めとする王族よ? いくら私達にとってタクミが王族よりも大切な存在であっても、対外的にはただの平民でなんの権力も持たない少年なのよ?」
例えばこれが、どこぞの国の王子とかなら話は違うのだろうが。
「それは大丈夫です。今の王妃、セスティナ伯母様に色々画策していただいて、婚約を破棄出来る条件を作っていただきましたの」
「へー、相変わらず策士だね、セスティナ様は」
ヴェルデがちょっと懐かしそうに言うのでカルディナは不思議に思った。
「ヴェルデ先生って、伯母様と親しい仲でしたの?」
「うん、まあね。その昔ちょっとお世話になって以来の仲だよ」
「そうだね、あの時も大変だったよね」
ヴェルデに次いでフラムも話しに加わって来た。
「お二人ともなんですか。では、伯母様の性格も良くご存知ですよね?」
あーなんか嫌な予感がすると、ヴェルデとフラムが顔を見合わす。
「その条件なんですが、この国を守り抜く力を持つ者が条件とされたそうです」
「ちょっと、待ってよ! それって結局、王族、王子達の事にならない?」
ヴェルデの意見は僕ももっともだと思う。
「すですね。ですから皇子達も二つ返事で了承されました」
「それじゃあ、何の意味もないじゃない!」
フラムもカルディナに意見しだした。
「そこがおば様の狙い何ですよ。公のもと、これで皇子達も認めた条件となったわけです。つまり、皇子達以上にこの国を守り抜く力がある人間が現れれば、その時点でその者が私の正式な婚約者となる訳ですよ」
ヴェルデとフラムが顔を見合わせ溜息をつく。
「はあ~何となく分かったわ」
「あ、やっぱり分かりますか?」
そこで三人がある方向を見つめる?
ヴェルデとフラムは、頭を抱えながら呟いて、カルディナはニコニコ頷いていた。
「で、カルディナ。その国を守る力って言うのはどうやって決めるの? まさか本人同士の決闘で決めるとか言わないわよね?」
「そんな事、言うわけないじゃないですかヴェルデ先生。相手は極悪非道皇子達ですよ? 対戦相手を決闘前に潰しにかかってきますよ? まあタクミさんなら問題無いでしょうけど、力づくともかぎりませんから」
王族の罠なんて、聞いただけでしつこそうだし、陰険そうにしか思えない。
「そこで、ある物を倒せば婚約者として認められるよう、そのある物を教会に準備していただきました」
「教会って?」
「パデュロス神教会です。裁定と称号の授与もパデュロス教会の大司教がなさるので、王族からの圧力も無縁ですので平等な裁定が可能です。」
カルディナは全く問題ないと言わんばかりに力強く言っているけど、ヴェルデ達にとても簡単に行くようなものでは無い気がしていた。
「はあ、それで、その用意したものって何?」
「それはですねえ・・」
ちょっと勿体振るカルディナ。
「真竜です!」
「バコッ!!」
言うのが早いか、フラムが間髪入れずカルディナ頭を思いっきり小突いていた。
「痛ーい! 何するんですかフラム先輩!」
頭を摩りながら、殴ったフラムに文句を言うカルディナだが、フラムの手加減無しの拳に耐えるカルディナも大概に強いんじゃない?
「何って! 真竜なんてどこで拾ってきたの!? タクミ君は支援系の方が得意で攻撃系はそんなに強くないのよ? 真竜相手に簡単には勝てないわよ!」
「え? そうなんですか?」
「そうよ!」
「どうしましょう?」
「どうするって言われてもねえ。」
フラムは考える。
けど、だいたい考えるのが苦手なフラムに良い考えが浮かぶはずも無く、自然とヴェルデの方に視線が行ってしまう。
やれやれとヴェルデは肩をすぼめながら、浴槽の縁の上に立つ。
何も隠さず、年齢よりもそうとう下に見える華奢な身体で仁王立ちになる。
横の方では、クロちゃんが、これはこれでなんとも、とか言ってヴェルデを見つめてにやけていた。
クロちゃん本当に女性なの?
「とにかく、こうなった以上、直接本人にどうするか聞いてみましょう!」
ヴェルデの提案に皆一同頷く。
「本当は鬼の件とかも話ししたかったけど、それはまた今度、話しますね。それじゃあ、あがりしましょうか?」
ヴェルデの言葉に皆も湯舟から上がる。
「あれ? カーリーは?」
フラムが、カーリーが浴場内に居ないことに気付いた。
「カーリーさんなら、露天の方に行かれましたよ」
ルゼがカーリーの居場所をフラムに伝えると、そういえば露天風呂があった事を思い出す。
「ヴェルデ、カーリーが露天風呂の方にいったらしいよ?」
「そう言えばあの子、ずっと姿を見てなかったけど、何、遊んでいるのかしら? ちょっと見てくるわね」
そう言い残し、露天風呂のある方へとヴェルデが向かっていった。
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