女性達は語る 3

「カルディナ! どういう事です?!」


ヴェルデが険しい顔で会長を問い詰める。

しかし、彼女も全く動じないで、真っ直ぐにヴェルデの目を見つめ簡単には引き下がらない。


「ヴェルデ先生、私がグランディール公爵家の長女で一人娘という事は知っておられますね」

「そりゃあ当然」

「では、私の王位継承権は何位でしょうか?」

「えっと、確か5位よね?」

「はい、フラム先輩、その通りです。そして、4位が我が父、ルディオレ・グランディールです」

「解っているわ」 


ヴェルデが当たり前だと頷く。


「あとは、王家の息子達が1位から3位にいるわけです」

「そうね、あの三馬鹿兄弟の事ね」

「その言葉は聞かなかった事にしておきます。いくら馬鹿で、色情魔で、強欲の固まりのようでも、一応皇太子と王継承の第2、3位ですからね。不敬罪で罰っせられますよ?」


カルディナの方がよっぽどだと思うヴェルデでだったがここは敢えて突っ込まないように押し留めた。


「それで、その三馬鹿とタクミが何か関係があるの?」


カルディナは少し間を置いて、ヴェルデとフラム、カーリーを順に見ながら喋りだす。

やっぱり三馬鹿と言うんだ。


「あの三馬鹿兄弟の内、誰かと私が結婚する事が決まりそうなんです」


カルディナは心底嫌そうな顔をする。


「今回の婚約は、我がグランディール公爵家を衰退させる為のものなんです。」


カルディナは湯舟から上がり風呂の縁の大理石に腰掛けると大きくため息をついた。


「それはどういう事?」


フラムもカルディナの横に座り疲れた様な表情の顔を覗きながら優しく問い掛ける。


「つまり、私は王位継承権を持っていますが、グランディール家の次期当主でもあるんです。もし、この三兄弟の誰かと結婚した場合は王位継承権は無くなり、グランディール家の次期当主候補も無くなるという事です」


フラムと、ヴェルデは驚く。

王家が公爵家を潰しに来ているということにだ。

この国は元々、グランディール家とシルデフィリア家が交互に王を立て治めて来た国なのだが、3代前からグランディール家が王を独占し始め、世襲制へと変えてしまっていたのだ。

その上、グランディール家を潰そうと動いているとなると、権力を集中させ独裁体制を施行しようとしているのは明白。


ヴェルデもさすがにこの話はいただけなかった。

ただでさえ今の王も人格としては最低な王なのに、次期王候補の三兄弟が淫乱馬鹿兄弟しかいないのに、ここでグランディール家の力が弱まれば、この国は滅亡しかねないと心配になる。

ヴェルデは湯舟に浸かっていたが、立ち上がり湯で火照ったピンク色の肌をそのままに二人の前まで湯を切りながら歩いて行く。


「判ったわ。私もフラムも、今の王妃、セスティナ様には以前お世話になっていてね、いつか恩をお返ししよと思っていたのよ。彼女の実家が無くなるのは見たくないでしょうし、姪であるカルディナが困っているとなると心配でしょうからね。協力はしてあげるよ。ただし、タクミとの本当の婚約については、保留にします。カルディナが私達やタクミの事を全て知った上で、それでも心が変わらなければ考えてあげるわ」


「ほ! 本当ですか!!」


満面の笑顔で喜びを表現するカルディナを見てヴェルデは、家の存続とあの三馬鹿兄弟との結婚のどっちの方が一番嫌なんだろうか?


「カルディナ? 家の存続と三馬鹿との結婚とどっちに重きを置くの?」


「そんな事決まっていますわ! 三馬鹿兄弟と結婚するくらいなら家の滅亡も仕方無いと思いたいのですが、今グランディール家が無くなれば本当に困るのは国民ですから、どんなに足掻いても無理ならば、嫁ぐ他無いと思っています」


きっぱりと言い切るカルディナ。


「それでも出来るなら、あの馬鹿共と肌を合わせるなんて考えたくも無いです。私は、あの三兄弟とは、いわゆる幼なじみという関係で、小さい頃からあの兄弟の遊び相手として王城へ行っていたのです。でも実際は遊び相手では無く、虐待の対象相手でした。ちょっとでも言った事が出来なかったら水をかけられるわ、少しでも逆らえば、服を脱がされて、火の付いた蝋燭から垂れる熱い蝋を掛けられたりしていたわ」


「そんな事があったんだ。ごめんねカルディナ」

「別に先輩が謝る事ではありませんよ?」


フラムが隣にいるカルディナを、両腕で頭を抱えるようにして抱きしめる。

プロポーションの良い二人の濡れた肌が重なり合う様子に、何故だかクロちゃんが興味津々に眺めていた。


「あ、でも大丈夫ですよ? 当時から私は天才だったから、その時にはもう身体強化や耐性強化の魔術を教えてもらっていたので、虐待とかされても殆ど無傷だったから。ただ、一回だけ失敗して、ほらここ、内股のところ、熱湯を掛けられそうになったので、耐性強化の呪文を発動しようとして失敗して、熱湯がそんまま足にかかってしまった事があったの」


そう言って右足を浴槽の縁に乗せフラム達にここと指差して見せていた。

フラムは横から覗き込んで悲しそうな顔になり、ヴェルデは反対側に座って同じように覗き込み、なんて事と、怒りをみせていた。

ただ、ルゼはチラチラと横目で見ては顔を赤くし、クロちゃんはある一点を注視して、おう凄い!とか言っていた。

クロちゃん本当に女性だよね?


「まあ、それでも小さい女の子の服を脱がすような男と結婚なんかしたくはありません。解ります?」


「「「「うん、うん」」」


全員が大きく頷き賛同していた。

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