ラングトン大学 試験編 6
「ふ、ふ、はははは!! なんだこれは? これが炎だと、本物の炎というやつを見せてやるよ! 魔術展開! ノアエクス・!?」
ドッガアァアァア!!!!
ミッシェルが魔術詠唱を唱えているさなかに、横から飛び出して来た黒い影に思いっ切り殴られ、50メートル先くらいまで、黒い悪魔と共に吹っ飛ばされる。
あまりの突然の出来事に、口を大きく開けて何が起こったのか分からないまま見るだけになっているヴェルデとフラム。
その二人の前に立つのは赤い髪の女の子カーリーだった。
拳闘の構えをとり今までミッシェルが居た場所で身構えている。
「ヴェルデ先生大丈夫ですか? あれ? なんでフラムさんも居るんですか?」
事情が解らないカーリーが質問してくるが、二人はそれより今、起こった事に驚き言葉が出ないでいた。
「だ! 誰だ! この俺を殴り飛ばした奴は!!」
頭から地面に突っ込んでいるミッシェルが体を起こしながら怒鳴り付けてきた。
「ま、まずい! そこの彼女! ここから早く逃げなさい!」
ヴェルデは悪魔の怒鳴り声で正気に戻り、現状を一瞬で把握すると、カーリーに逃げるよう叫ぶ。
「逃げても無駄だ! 今度こそ最大限で魔術でこの辺りを全て焼き尽くいてくれる! 最大魔力!! ノアエクスプロ・!?」
ガン!!!!
黒い悪魔が術を再び発動しようとした瞬間、今度は光輝く2~3メートルくらいの大きな球体が上空から悪魔の頭部目掛けて降って直撃した。
あまりの衝撃だったのか悪魔の目の輝きが薄れ体もフラフラと泳ぎだしていた。
そこへ、ミッシェルと悪魔を囲む様に半透明の光の壁が現れた。
「ナイス! タクミ君!!」
「カーリーも凄かったよ」
光の壁に取り囲まれ、身動きがとれなくなる悪魔を前にタクミが現れた。
そこへカーリーも駆け寄る。
「ちょ、ちょっとあなた達! 今、何したの?! 悪魔が全く身動き出来ないみたいだけど、どんな結界を張ったの?」
ヴェルデは、勢いにまかせて捲くし立てる。
悪魔を素手で殴り倒すのも大概だし、その悪魔を簡単に封じ込める結界をこうも簡単に実行してしまう事に驚いていたからだ。
「先生、これも試験なんですか? 結構、上位の召喚ですよね? これって」
「タクミ君、やっぱりこれくらいを倒さないと、このラングトン大学には入れないんだよ」
「そうか、そうだよね」
「やっぱり凄いんですね、ラングトン大学って」
タクミとカーリーは真面目に感心している様子だが、ヴェルデにしてみれば、これをその程度ですますこの二人の強さが異常としか思えなかった。
昔の私なら同じ様に出来たかもしれないけどそれにしても・・・そう思うヴェルデ。
「君、そういえば最初に話したタクミ君だったわね」
「はい。覚えていてくれてたんですね。光栄です」
「あなた達には後で色々聞きたいことがあるので時間空けといてください。それと多分あなた達は文句なしに合格ですから、先に伝えておくわ」
「本当ですか? 有難うございます! やったねカーリー!」
「えへへ、これでタクミ君との学生生活が送れるんだね!」
ヴェルデの合格の言葉に素直に喜ぶ二人。
そこへフラムが険しい顔で近づいてきた。
「3人共、まだ終わって無いわよ。見て、あの結界を壊そうと壁を殴りつけているし、ほら少しづつヒビが入ってきてるよ。」
よく見ると確かに所々に亀裂の様なものが結界の壁に入りはじめていた。
「先生あれなんです? 普通の召喚された魔物とかではないのですか?」
なんだあれ、僕の結界の中であんなに動ける魔獣なんて今まで無かったのに。
この結界はエルカシアから教えてもらった結構な上位魔獣でも消滅出来るはずじゃなかったかな?
「あれは、悪魔よ。魔獣ではないわ」
悪魔と言う聞き慣れない言葉にカーリーは困惑するが、タクミには前世の記憶があるので邪悪な者である認識はあった。
ただこの世界に来てから悪魔という単語は一度足りとも聞いた事はなかった。
「とにかくこの悪魔を消滅させれるのは光属性でも最上位にあたる聖魔術を使用出来ないと完全に消滅する事は出来ないの。そうしないと取り付かれたあの少年は助からないわ」
ヴェルデはそう言って現状ではどうしようも無い事をタクミ達に伝える。
「あれ?タクミ君あの中で暴れているのミッシェル君じゃない?」
カーリーの言葉にタクミも結界の中で暴れている少年を凝視すると、確かに顔つきは恐くなっているがミッシェルで間違い無かった。
タクミとカーリーは顔を合わせ大きく溜息をつくと、2人揃って結界の方に近づいていった。
「ちょっ、ちょっと、何してるの!二人とも!」
フラムの注意に振り返る二人。
「あれ、僕達の幼なじみなんですよ」
「そうなんです。自分勝手なお坊ちゃまなんだけど友達だから助けてあげないと」
「え? で、でもあなた達で何とか出来る訳がないじゃない!」
「先生、一応僕達合格の内諾はいただいたので、ここで使役獣とか出しても問題ないですよね?」
「え? えー問題無いけど・・」
そうか、あの聖獣の力を借りれば或いは?
「わ、解ったわ。私と、フラムも最大限フォローするから気をつけるのよ」
ヴェルデはそう言ったものの本当は教師としてあんな子供達に任せるべき事では無いと思いながらも、この時点での最良の策が他に無いことに自分の今の力の無さが嫌になる。
「やっぱり私達にとって悪魔は天敵だわ」
ヴェルデとフラムは何時でも力を出せるよう身構え、二人の行動に注視する事に徹する事にした。
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