魔法素養調査 2

「お早う、カーリー。今日も元気だね」

「あー、なんか元気だけが取り柄みたいな言い方じゃない? それって」


んー、そんなつもりは無かったんだが、乙女心は難しい。


「ゴメンね。カーリーが元気だと僕もつい嬉しいからついね。でも、気になるのだったら今度から挨拶を考えなきゃだね」

「そ、そんな事、な、無いわよ。タクミ君が嬉しいんだったら、べ、別に変えなくても・・」


なんか耳の当たりが赤くなってないか? 熱かな?


『ホント、乙女心が判ってないですね、タクミ様は』


突然、頭の中に僕だけしか聞こえない声が響いてきた。まだちょっとこの感覚になれないな。


『びっくりするから急に話しかけないでくれる、エルカシア』


そう、あのエルカシアだ。そして僕は足元にいる一匹の白い狐に似た動物を抱え上げる。


『それより、闇属性の元素魔法には隠蔽を施しましたがそれで宜しいですか?』

『それで良いよ。ただでさえ、光元素魔法の素養があるだけでも珍しいのに、闇まであるって判ったらどこへ担ぎ上げられるか判ったもんじゃないからね。慎重にして損はないよ』


不思議そうに頭を捻る白キツネことエルカシア。


『私でしたら両手を上げて言いふり回るんですけどね?』


そんな考えだから神界から追放されたんじゃないかと思うが、あえて言わないでおこう。

3年前、突然僕の記憶の中に今まで見たことが無い映像が浮かび上がった。前世の記憶が戻ったのだ。初めは少し混乱したが、数日をおいて問題なくなった。

そしてまた数日が過ぎた当たりで、突然頭の中に言葉が響いたんだ。エルカシアだった。

僕が生まれた時、何処からともなく白いキツネが村に現れ、僕の側を離れなくなったそうだ。

村や、この地方では白いキツネは土地神の使いとされていて、結構尊い存在らしいくて、そのキツネが側を離れない子供だということで、勝手に神に祝福された子供ということで特別視された経緯があったらしい。僕はエルカシアにエルと呼ぶことを了承させ、魔法のこととか色々と聞き、どうやったら奥さんを探せるか3年間考えた。

そして3年後にある、魔法要素の調査確認でそれなりの力を認めてもらい、王都に行く事を思いついた。


「王都に行けばそれなりの情報は探れるだろう」


ただ、あまり目立ちすぎるのもどうかという話になってエルカシアに祝福をある程度隠蔽することにした。


『とりあえず、他の加護とかスキルとか面倒だから隠蔽しといてね』

『判りました』


「どうしたの? タクミ君。ちょっとボーとしていたわよ?」


カーリーが心配して顔を覗き込んできていた。


「大丈夫ちょっと眠たかっただけだから」

「あ、あたしもなんだ。緊張して夕べあんまり寝れてないんだ」

「カーリーもなんだ?」

「ふふ、一緒だね?」


なんだか突然ご機嫌になったカーリー。いったいどうしたんだろう?


『本当に、にぶちんですね』


エルカシアも変な事を言っている。誰がにぶちんだって言うのだろうか?


それから、色々とカーリーと話ながら歩いて、僕達は教会の前までやってきていた。

教会に着くと、まず入り口で名簿に名前と歳を書かされる。

まだこの世界、識字率が低いのだが、この村に限っては、他の村に比べ大規模農業のおかげで裕福であることや、僕が同じ子供達と文字遊びをしながら教えていたので、結構識字率が高かった。

なので、みんなが自分の名前を書ける事に王都から来た兵士がびっくりしていたようだ。

名前を書き終え教会に入ると、10数人の子供が先に入って順番に王都から来た魔導士に鑑定を受けているのが目に入ってきた。


「次、ミッシェル君だね。まず、私の手の平に君の手の平を被せるように置いて下さい。ああ、そんなに緊張しないで。はい落ち着いて・・・深呼吸しようか?」


ミッシェルはこの村の村長の息子だ。教会に一番乗りで来て、一番目に診てもらっているようだ。あの顔、かなり緊張しているみたいだな。


「はい、良いですよ、そのままでいて下さいね」

「あ、ああ・・・」


暫くすると、両の手に光り輝く魔方陣が展開し始め、ゆっくりと回り出した。それから30秒位そのままの状態が続いていたが、やがてゆっくりと魔方陣が消えていった。


「はい、終了です。えーとそうですね」


魔導士が目を閉じて今見えたビジョンを確認しているようだ。その間、ミッシェルは期待に満ちあふれた顔でその言葉を待っていた。


「水の素養がありますね。ただ、魔力量が圧倒的に少ないですから、生活魔法程度に使って下さい。余り無茶な使い方していると魔力枯渇で死んでしまいますから注意が必要ですよ」


先ほどまでの期待感から絶望の淵を覗いている様な顔になっているミッシェル君。これも人生だよ。

すると、こちらに気付いたのかドカドカと近づいて来た。

あ、また鬱陶しい事になりそうだ。

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