王都までの道中 5

「エル!中央の2頭! 両側を頼む!!」


僕の言葉と共にエルが自分を中心に術式を展開! 大きく広がる魔方陣が眩しい位に光輝き出した。

すると、突進してくる白狼の足元に木の根みたいなのが突然生え出し、白狼の足に絡みついた! 急に脚を取られた2頭の白狼は、体勢を整える時間もなく、顔から地面に突っ込んでいった! 勢いが付いてたので前方へ20メートルくらい飛ばされるように転がって行く。ようやく止まったと思ったところに目に見えない力がその白狼にのしかかり、全く身動きが取れなくなってしまう。


「さすがエル! 腐っても神様だな!」


『何か微妙な言い回しですね』

『気にするな、誉めてるんだ』


エルのおかげで2頭が突然離脱したため、真ん中の大きな白狼と大きく左右に展開していた2頭は、一瞬気を取られ勢いが無くなった。


「ドウリャア!!」

「はあー!!」


そこへ大型の両刃の剣を両手で握り締め、左側の白狼目掛けて横一閃で切り付けるジュード。

そしてもう片方の白狼には、ラモナさんが右手の拳に火属性の術式を重ね真っ赤に燃える炎と共に殴りかかる。

ラモナさんって武闘系だったんだ。

姉妹弟子だけあってカーリーと同じだけど、その正確性が段違いに違う。

でも、もしかしたらパワーは、カーリーの方が上かも・・・

二人の攻撃は2頭の白狼を完全に止め、深手を負わすことは出来なかったが相手の意識を刈り取る事に成功した。

後は一際大きい白狼が1頭のみ。ここまでは作戦通り、あとはエルに聞いた魔獣に相性の良い光属性の魔法をリーダー格と思える大型の白狼に直接叩き込めば倒せる!


「セイクリッド・ウォール!」


僕が叫ぶと、白狼の全面直ぐに光の壁がおもむろに出現した。カーリーの話だと、この光の壁に魔獣がぶち当たると、体内にある魔素を殆どを消滅させてしまうので魔素をエネルギーとする魔獣はその行動を維持出来なくなるはず。

突進してくる白狼。勢いに乗っていた為、止まる事が出来ず、前方の薄く透き通って輝く壁に思いっきりぶち当たった。


「これで、終わり・・・・!?」


と、思ったが、なんと白狼は何のダメージも無いかのように光の壁を通り抜けてしまった!

どういう事だ!?


『エル! 話が違うぞ?!』


僕は慌てて、カーリーに向かって突進する白狼を止めようともう一度魔法を発動させようとするけど、間に合わない!

ジュードもラモナもまだ相対していて援護は無理だ! どうする? もう、間に合わない!! と思った瞬間、カーリーの体が一瞬にして消えた!? いや違う!消えたんじゃ無く能力向上で上がったステイタスをフルに使って白狼の喉元の下まで瞬間移動したのだ。そして、首と胸倉を手で掴み、白狼の勢いを利用して柔道の肩車に似た技をかけ後方へ吹き飛ばす。


「ズ! ドーン!!」


吹き飛ばされた白狼は背中から地面に叩き付けられ、一瞬呼吸が出来なくなる。その隙をついて、カーリーが後方に大きくジャンプし、その勢いで白狼に一撃の正拳突きを仰向けになったお腹にぶち込める。悶絶する白狼。


『くっ、くそ!人間如きが!! エ、エルカシア様! い、今お助けいたし・・』


「ドガ!!」


今、魔獣が喋った様な気がしたが、情け容赦無いカーリーの正拳が白狼の眉間に炸裂すると、さすがの魔獣も泡を吹いて気絶してしまった。カーリーの一撃の威力は僕が能力向上しているとはいえ、あの可愛らしい顔からは想像出来ないぐらいえげつない破壊力だった。もう、カーリーを怒らすのは止めようと、心に誓った瞬間でした。


『しかしエル、今、この魔獣お前の事、呼んでなかったか? しかも助けるとか何とか?』

『・・・・・・・・・・』

『オーイ、エルさんやーい』

『・・・・・・・・・・白狼共! 鎮まれ!!』


エルが突然大声で白狼達を制止させる。その声に反応した他の白狼達は、一瞬で動きを止めその場に平伏してしまう。どういうことだ? あ、反応したの、白狼だけでなくカーリーも反応した。もしかしてエルの言葉が聞こえたんだろうか?


暫く静寂が流れた。ジュードやラモナさんも急に地面に突っ伏し動かなくなった白狼に戸惑っている。

すると、カーリーに気絶させられた白狼が目を覚まし、ゆっくりと身体を起こし始めた。


『く、忌ま忌ましい人間共。エルカシア様、今、お助けしますぞ』

『黙れ! 白狼王。ここにおる人間は総て私の仲間です。手出ししたらただでは済みませんよ!』


うわーなんかエルが偉そうに見える。5頭の白狼に傅かれるとどこかの神の使徒みたいだなって、あ、元神様か。


『エル? この白狼達はエルの知り合いか?』

『な! そこの人間! エルカシア様に向かって何と言う物言いだ!』


お! なんかもの凄く怒られてしまった。


『白狼王! 私はこの方の眷属であって、ご主人様であるのだぞ!!』

『へ?』


王と呼ばれた白狼は変な声を出してその場に固まってしまった。

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