王都までの道中 4

白狼は正面に3頭、左右から1頭ずつの構成で突き進んで来るようだ。

正面の3頭が若干突出する形で突っ込んで来る。これは中央の3頭が力押しで突っ込んで、それに応戦する間に左右から攻撃するって事かな?


「それで作戦って、どんな感じだ。」


ジュードが何の疑問も無く聞いて来た。こんな子供の作戦を聞くなんて普通の大人ならないだろうけど、今は時間がないしここは聞いてくれるのだから、何も考えずに説明してしまおう。


「まず僕は光属性の元素魔法が扱えます。」


その一言でジュードとラモナの表情が一気に変わった。


「やっぱりそうか」


納得顔のジュード。


「え? 分かってたの?」

「いや、光属性っていうのにはビックリしたけど、それとは別になんだか知らないけど、強いんだろうなって思ったんだよ」

「え? それって僕が何か普通には見えないって事?」

「違う! 違う! そうじゃないんだけどな、こう~なんて言うのかな・・・・感? みたいな?」


う~ん、よく分からないけど、本当に何か感じているんだったら、ジュードって凄いな。


「説明がへたくそでごめんね。カーリーもそうだし、その白狐様もちょっと異質に強いって感じがするのよ。冒険者も長くやってるとそういうものが判るようになるものなの」


ラモナさんが、説明してくれる。僕だけじゃなく、カーリーにもそんな感じを持っていたのか。これが強い冒険者なのかな。


「それじゃあ、説明します。まず僕の光属性の特徴、能力向上魔法を全員に掛けます。その上で、お二人には一番外側の2頭をそれぞれ相手してもらいます。残りはこの白狐のエルに2頭を受けてもらって、その間に僕とカーリーの二人で真ん中の1頭を潰します」


「タクミ、それで大丈夫なんだろうな?」


ジュードが念押しみたに聞いてきたので僕は大きく頷いた。


「大丈夫。さっきも言ったけど光属性が操れる僕は、魔獣とは相性が良いんだ。光属性の術を魔獣に叩き込めれば魔素の固まりの魔獣は体組織を維持出来なくなるらしい。もし、それでも動けるようだったらそこにカーリーの一撃を入れてもらうつもりです。」


暫く考え込むジュード。

僕も、立場が違ったらこんな子供を、危険なめに会わせるなんて考えないだろう。でも今は緊急事


「村では何度も練習して問題ないって、ジェナおばさんのお墨付きですから」

「そうか。それなら大丈夫か? 任せるぞ?」


ジュードが認めてくれた。

それにしても、カーリーのお母さん、ジェナさんの名前を出した途端、納得してもらえた。

改めて、カーリーのお母さんって有名人なんだ。


「みんな! 今から支援魔法を展開します! 完了しだいエルカシアは前方の3頭のうち2頭を足止め! 残り1頭を僕とカーリーで足止めします! その間にジュードとラモナさんは、左右を迎撃してください!」


僕が大まかに指示を出し終え、元素魔法の光属性を発動展開させる。


「光属性! 魔法発動! 防御耐性上昇、魔力耐性上昇、魔力能力上昇、反射能力上昇、視覚能力上昇、身体能力上昇!!」


「な? なんだ、これは?!」


ジュードが大声で驚いていた。ラモナさんも同じで、自分の身体に起きた現象にびっくりしている。


「支援効力を6つも重ね掛けなんて聞いた事ないぞ!?」


あ、そうなの? 六つ、て、おかしいのか? エルカシアに教えてもらって、10個までは重ね掛け出来ていたし、練習すればもう少し出来そうなのだけど? まずかったかな?

ちなみにカーリーも僕と一緒に練習していて、案外、簡単に魔法の発動や操作が出来ていたし、そんなに難しいものではないと思っていたのだけど?

どうも違うみたい。今後は自重しよう。


とにかく術式を展開し終える。これで、メンバーの皆の能力が上昇したはずだ。いまだにジュードは、スゲー、スゲーと唸っていたが、取り敢えず前に集中する。


迫り来る白狼は、中央に大型の固体とその両側を2頭が少し遅れて挟む様にようにして突っ込んで来た。

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