ラングトン大学 試験編 12
「そういう訳で悪魔さん、許していただけるとは思えないですが、彼女達も被害者で必死だった事だけは判ってもらえませんか?」
僕が牛頭の悪魔に彼女達の非礼を詫びる。
冷たい視線のままジーとカーリー達を見つめる悪魔さん。
そのままの顔でゆっくりと語り出し始めた。
「実のところ、わし等一族は当時でもう100名くらいしか同属が居なかったんじゃよ。種として2千~3千年くらい生きる為か異常に繁殖力が弱くての。一番若い私でもう500才を超えておる。それであの時空魔動機なんじゃよ。あれで時空間を飛び過去に戻って我等の衰退を止める為の方法を見つけようと思っとたんじゃ」
「すみません!この子等が壊してしまって!」
「いや、あれは失敗作での、お前等が来る少し前に判っとたんで別にかまわんよ。それより、その失敗作のせいで大暴走を起こしたやもしれんからの。これでお相子じゃ。ほっほっほっほっほ!」
急に親近感を出しながら大笑いする悪魔さん。
というか、今サラっと凄いこと言ってなかったか?
「ちょっとそこの悪魔さん。今、なんて言いました?」
ヴェルデとフラムの二人が悪魔に詰め寄っている。
もの凄く怖い顔してるよ二人とも。
「それじゃ私達が吹き飛ばされて、こんな何人にも別れてしまったのはあんた達のあの機械のせいなの?」
「まあ、そういう事じゃの、ホッホッホッホッホ。」
二人の剣幕にも動じる事無く、笑い飛ばす悪魔さん。
まあ、結局どっちもどっちということだね。
魔動機が真面に作動せず暴走する可能性があったにせよ、引き金を引いたのは奥さん達なんだから。
「話は解りました。どうでしょう、喧嘩両成敗という事で今までの事は水に流しませんか? ヴェルデ達もどうだろう?」
僕は悪魔さんとヴェルデ達に仲直りの提案をする。
「一つ条件がある」
悪魔さんは三本しかない指の一本を立てて僕に話し掛けて来た。
「封印された我等の仲間を見つけて元に戻して欲しいのじゃがどうじゃ?」
「なるほど、そういう事ならヴェルデ、問題ないよね?」
封印した本人だし解除するのも簡単だろうと思ったんだが、ヴェルデとフラムは何故か渋い顔をしていた。
「解除するのは問題ないんだけど、この悪魔の様に封印は結晶体にされていて、それがどこに有るかが解らないのよね。あの暴走であちこちに飛ばされてしまったみたいだから探し出すの大変だと思うの」
しかし悪魔さんはヴェルデの言葉を聞いても特に戸惑うことなく平然と聞いていた。
「それは仕方がない。飛ばされた原因は我等にもあるので、ゆっくりと探してくれれば良いよ。封印されている間は時間の流れが止まるからの」
最初のおどろおどろとした恐さは無くなって、好々爺とした雰囲気で話す悪魔さんにその姿とのギャップを感じながらも特に気にしてないようだったので良かったと思う。
それともう一つ確認しとかなきゃいけない事があったのを思い出す。
『エル、ちょっと聞いてみるけど、悪魔と知り合いになって神様の方としては問題ないの?』
そう、悪魔といえば神様に対抗する者じゃないですか。
その二人? 二柱? が近くにいて友好的に出来るんだろうかと疑問に思った。
『大丈夫ですよ。何故そのような心配されるんです?』
『何って、神様と悪魔さんって仲は悪いんじゃないの?』
当たり前の様に僕は思っていたんだけど、皆が大きく首を横に降っていた。
え!?違うの?
『良いですかタクミ様。そもそも悪魔という呼びなは人間が勝手に言ってる名前であって、実際は魔人族と言うのが正しいのです。この様に黒々しく如何にも悪と言っているような姿に、人族が勝手に怯えているだけです』
「はあ何それ? 人族ってのは身勝手な種族なのか? 同じ人族として情けないよ。」
僕が人族に対して嘆いていると、エルが話を続けてきた。
『多分ですが、そう言って悪を作る事で国の運営に一役かっているのだと思います』
『どういう事?』
『国の政事等で一番恐ろしいのは、国民の心が王、国を必要ないと思う事です。国への不平不満が募ると民衆は国を滅ぼそうと考えるのです。それをかわすにはどうしたら良いのか? それは、国以外に民衆の目を向けさせるものがあって、それを国が排除する為に努力しているところを見せれば、国への不満など見て見ぬ振りするようになるのではないかと?』
ああ、なるほどね。
国なんてのは、どこの世界でも同じって事か。
でも、そうじゃない国があっても良いと思うんだけどね。
「すみませんでした。失礼な呼び方をして。」
「いや、もう慣れてたし、わし等みたいに長寿種には些細な事は、わりかしどうでも良いことって多いいからの。気にはしとらんが、お前さんは心根の優しい人族じゃの。どじゃろう、わしもそなた達の仲間に加えてもらえんじゃろうか? 一緒に仲間を探そうと思うんじゃが、どうだろう?」
「「えええええええええ!!!???」」
皆が一斉に驚きの声をあげる、よね。
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