試験を終えて 3
「カーリーからも言ってやってよ! そんな事、していないって!」
「そんな事?」
あー!カーリーってまだ何かが判らないのか!?
「そんな事って! エッチの事よ! 男と女の子作りよ! 夜の営みの事よ!」
ヴェルデ、酒の勢いもあってカーリーに詰め寄ってるよ。
ただ、あんまりそういう事を大声で言わないでほしいな。
一応ここ大衆酒場なんだし、まだ周りに人が結構いるんだよ。
あ、こっち見てにやけてるオッサンがいる。
『シロ、あのカーリーを見てにやけとるオッサン、威嚇してきて』
『承知!』
これでこっちを見るやつは少なくなるだろう。
それより!
カーリーがヴェルデの言葉を理解したのか一層顔が赤くなり頭から湯気が出ていそうな程だ。
「あー!!やっぱりやったのね! 私達はお預けされて、カーリーばっかりずるい!!」
「いや!本当にやってないから! カーリーも紛らわしい態度しないの! だいたい今は僕8歳の少年なんだよ? 前世の記憶が在って、奥さんの事もちゃんと今でも愛してると言うのは変わってないけど、子供として生まれたのは事実なんだ。体も大人じゃないから、精神的にも子供の気持ちというか、感情がそっちに引っ張られれている気がするんだ。だから今、その、エ、エッチな事・・とかちょっと考えにくいんだよ?」
ヴェルデ、何故そんな悲しそうな顔をするの?
「え、え、じゃあ、タクミ君とはまだエッチできないの?」
おい、ヴェルデ。
「そんなぁ~、せっかく楽しみにしてたのに~!!」
ス、ストレートだな。
「と、とにかくそう言う行為は絶対にしてないからな。だからヴェルデ達とも当分は駄目だ」
「だ、だめなの?」
「だぁめ!」
「・・・・・ッチ、夜這いでもするか」
「聞こえてるからなぁ! それにこんな子供襲ったら犯罪だからな!」
「はぁ、分かったわよ。取り敢えず」
取り敢えずなんだ。今晩から注意しよう。
「でも、そうなるとどうして属性が複数あるの?」
『それは、奥様方のせいでしょう』
突然、エルが念話で会話に入ってきた。
『エル、どういう事だ?』
『簡単に言いますと、奥様方とタクミ様が血の交わりを持つと、魔法元素が相互に行き来し定着するのだと思います。まぁ、普通の人族でも稀に起こりますが、その可能性は極わずかですね』
『それなら、僕とカーリーはその稀にという事なの?』
『いえ、タクミ様はパデュロス神様に神格を頂いておりますので、親しい者、つまり奥さんや眷属に対してであれば、ほぼ100パーセントの確率で起こります』
『ちょっと待てよ? という事は奥さんが全員揃うと、もしかしたら僕の魔法元素は5元素どころか、光と闇も含めて7元素となるのか?』
『その可能性は高いですね。ただ、あくまでも奥様方の力に馴染んだ魔素元素ですので、いくらタクミ様が同じ元素をお持ちになっても、万全な力を発揮する事は無いと思います』
まぁ、それは仕方ないけど・・・全元素持ちとなるとは・・・
『それともう一つ、タクミ様が持つ元素を通して他の奥様方へも送る事になりますので、最終的には、テレジア様と同じ能力を5人全ての奥様が持つ可能性があります』
という事は、当時最高の魔導士だったテレジアが、今の世になって5人の最高魔導士が誕生する可能性があるわけだ・・・・もしかして人類で奥さん達に勝てる要素はないのでは?
『つまり、私がタクミとエッチをすれば、今のタクミがもつ魔法元素を全て複写されるわけね?』
「な、何をお考えなのかな? ヴェルデさん?」
目が座ってる。あ! お酒飲んでるぞ!
舌なめずりしない!
「それでね、それでね、おやすみの、キ、キ、キスを、寝ているタクミ君にしてしまったの!!! これは、お母さんが絶対にしないといけないからって言っていたから・・・」
「いいなぁ! いいなぁ!! カーリーばっかりずるい! 私も参加させて!!」
カーリーとフラムの二人はこっちはこっちで、なにやら盛り上げってらっしゃる。
それにしても、僕が寝ている間にカーリー、そんな事をしていたのか・・・ジェナおばさん、変な入れ知恵しないで下さい!
「タ・ク・ミ・・・」
あ、ヴェルデ・・・目が、こ、怖い・・・あ、そんなに詰め寄るな!
「お、落ち着け!ヴェルデ! 公衆の面前だぞ? 教師のする事じゃないぞ!」
迫って来るヴェルデを押さえる。
くっそ、なんだか物凄い力で押される!
さっきの話と酒が入ってヴェルデの理性が無くなったのか?!
僕は、フラムに助けを求めようとしたけど・・・、
あぁ~、こっちも目が据わってるよ・・・出来上がっちゃってる・・・
「皆して、楽ししょう、でしゅ、にぇ。わらいも、まれて、くらさいよ!」
駄目だ! ただの酔っ払いだ!
ヴェルデの猛攻とフラムの絡みに堪えながら誰かに助けをと思っていたらクロちゃんが涼しそうにお酒をチビリチビリと嗜みながら、こっちを見ているのに気づいた。
「クロちゃん! 助けて! 何とかして!」
藁尾も掴むとはこの事なんだろうなあと、変に冷静に考えてしまったが今はクロちゃん頼みなのだ!
でも、クロちゃん、しばし腕を組ながら考える素振りを見せている。
「そんな悠長に構えて無いで助けて!」
僕がそう叫ぶと椅子を立って、僕の方に来てくれた。
「お主達、もう少し乙女らしく振る舞えんのかの? そんな事ではタクミ殿に愛想尽かされるぞ?」
クロちゃんのこの一言で激変した。
ヴェルデもフラムもシュンとなって大人しくなってしまったのだ。
フラムは酔いで体が常に動いてるけどね。
でもさすが、500年生きてるのは伊達じゃないね。
「そのような事は部屋に戻ってから存分にすればよかろう?」
その言葉に下を向いていた彼女達が、目を輝かせて起き上がると、僕の両サイドをガシッと掴んで引きずり始めた。
「クロちゃん! 何を言ってるんですか!!」
「え? 男と女の営みは公衆の場でするようなものじゃないぞ? どれ、わしも手伝ってやろうかの?」
とか言いながら僕の脚を掴んで完全に逃げられないようにホールドされてしまった。
こうなったらカーリーに、と思ってテーブルの方見たけど、いつのまにかクロちゃんの後を追う様について来ていた。
カーリー、君もなの?
『エル! シロ!』
『申し訳ありません。私、彼女達には逆らえませんので』
『わたくし、カーリー様に部屋の周りを警護するようきつく仰せつかっておりますので』
神様にも見離された僕の運命は?
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