グランディール家の晩餐会 3
「やあ、僕がカルディナの父、ルディオレ・グランディールだ。タクミ・カーヴェル君だね。娘が大変世話になったな。改めて礼を言うよ」
気さくな言葉使いで、僕に手を指し出してくれたので、それを返して握手する。
結構、大きな手だな。体格もガッチリしてるし、渋めのおじ様といった感じでとても好感のもてる人だなと云うのが第一印象だ。
「いえ、こちらこそカルディナ姫様には、ラングトン大学で私を初め皆がお世話になっておりお礼申し上げます」
「ふむ、なかなか良い面構えしておるね。ちょっと見女の子とも思える程の美少年だけど芯の強さを感じられる」
グランディール公は僕の顔を見定めるように見渡し、何か納得したかのように頷く。
「タクミ君! カルディナの事、宜しく頼むよ!! はっはっは!」
バン!バン!
そう言いながら、いきなり僕の方を大笑いしながら叩き出すグランディール公。
身体強化してなかったから、結構痛い。
バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!
い、痛い、痛い! いつまで続くんだ? あれ?グランディール公の顔、いつの間にか怒ってる??
もしかして、娘を僕に取られて怒ってるのか?
「お!お父様! タクミ様が痛がっておられます! お止め下さい!」
叩かれ続ける僕を、カルディナが自分の方に引っ張る様にして助け出してくれた。
おかげで、僕の顔は今、カルディナの胸の中にあった。
「はあ、はあ、はあ!? なっ?! 父親の前でいちゃつくとは良い度胸だ! 気に入ったが、けど気にいらん! そこに直れ! 打ち首にしてくれる!!」
グランディール公が、テーブルの上にあった小型のナイフを手に持ち、僕に向かって構えたんだけど、そこから一歩も動けなくなっていた。
「うっ!? お、お前達。」
そこには、手の平から細めの蔦を出しグランディール公を羽交い締めにし、獣人かしたカーリーの爪が首先に、手に炎を宿したフラムが目の前に翳し、黒霧で手刀化した腕で心の蔵を習い定めたクロちゃん達に囲まれていた。
「みんな、嬉しいんだけどそれはちょっとやり過ぎだよ?」
「だって、このおじさん、タクミ君に斬り掛かろうとしたんだよ! 絶対に許せないもの!」
カーリー、顔が真面目で怖いよ。
「グランディール公も冗談でやったんだよ。本気で斬るわけないじゃない、そうですよね?」
僕が、優しく微笑みながら聞くと、殆ど動けない状態で頭だけをコクコクと頷いて肯定する。
それを見た奥さん達が、戒めを解放すると、グランディール公がその場にヘナヘナと座り込んでしまった。
「あなた、何をしてるのです? あの真竜と互角に渡り合う彼女達を怒らせたらあなたの首どころじゃないですよ?」
「うっ!」
「まあ、グランディール公も可愛い愛娘が嫁に行くのが辛いのでしょう。ただでさえ婿養子で肩身が狭いんですから、それぐらいは大目に見て上げなさい、レイティア」
「はあ、仕方ないですね。ちゃんとタクミ君に謝るのよ」
母親が駄目息子に言い聞かせるようだ。
「すまんな、タクミ君、もう二度としないから彼女達の鋭い視線をなんとかしてほしいのだが」
「あ、すみません。カーリー、皆、もう大丈夫だから警戒しないで。」
「わかったわ」
一騒動起こったもののなんとか落ち着いたので、晩餐会を始める事ができた。
あれ?そういえばトルエは?
そう思って回りを探すと・・・・居た! 一人でテーブルに乗っているご馳走を一生懸命食べていた。
「お? ターちゃん。これ美味しいぞ! 人間のご馳走食べるの久しぶりじゃ!」
「すみません、レイティア様。連れが勝手に食べ始めてしまって」
「良いのよ、タクミ君。それとレイティア様なんて他人行儀は駄目よ。母と呼んでもらえる?」
「それなら私は、お姉様と呼んでもらいたいわ。あなたみたいな可愛い弟を持つのが夢だったのよ」
レイティア様に続いて、セスティナ様までが呼び名について言って来られるが、さすがに今の時点で、母様とかは恥ずかしいような。
ああ、でも凄く期待した目で見詰められてる。
ジーーーーーーーーー
「解りました。レイティア母様、セスティナ姉様」
ううううううう恥ずかしい!
「きゃあああ!何かとっても良いわ!」
「そうね!凄く新鮮だわ! やっぱり若い子は良いわね!」
テンション高いなあ、この二人。
でも、セスティナ様は、お妃様として、今大変なんではないだろうか?
「あのう、セスティナ様」
「ムッ! 姉様!」
「あ、ごめんなさい。セスティナ姉様」
「なあに? タクミ君」
疲れる。
「今、王宮は大変だと思うのですが、こちらにおられて宜しいのですか?」
「え? ああ、問題は山済みよ。あの馬鹿王子のおかげで上へ下への大騒ぎよ!」
「そういえばあの王子達は、亡き前王妃様の忘れ形見だとお聞きしましたが」
「そう、前の王妃様、ロディエ様はあたしの親友でね、あの王子達をお産みになられてから流行り病で亡くなられたの。亡くなられるまでは、仲の良い家族だったわ。でもロディエが亡くなられてからは、急におかしくなって、私が嫁いだ頃には、王子の素行も酷くなってたし、王自体も性格が変わられた感じだったの」
「たぶん、その頃から鬼が、第三王子と入れ代わったのではないかと」
僕が、セスティナ姉様に鬼の事を言うと、忌ま忌ましそうな表情になっていった。
「タクミ君、あなたはその鬼達を探しに国を出ると聞きましたが、大丈夫なのですか?」
心配してくれるセスティナ姉様に僕は首を横に振る。
「はっきり言って解りません。でも何度か僕や奥さん達にちょっかい出して来ましたし、それにトルエに酷い事した事は絶対に許せません。僕の奥さんに酷いことする者は抹殺しないといけませんから」
「それは、私も入っております?」
そういえば、ずっとこの格好のままだった。
僕を抱きしめて、上から覗き込み様に見詰めてくるカルディナの言葉に僕は、もちろんと頷く。
ギュウウウウ!
カルディナの抱きしめる力が強くなった。痛いけど気持ち良いからそのままでいると、回りからの視線の方が痛かった。
「解りました。では今宵はタクミ君達の今後の無事を祈り、門出を祝福いたしましょう」
「それじゃあ、カルディナもタクミ君を補助して奥さんとしての勤めを果たすのよ!」
「はい! お母様!」
「なあに! カルディナも国を出ると言うのか!!」
あ、またややこしい人が出てきた。
「あなた、何言ってるの? あたりまえでしょ。妻となる者が夫を支えなくてどうすんです」
「いや、でもなあ、相手は狂暴な鬼という奴らしいのだぞ? そんな物騒な者を探す旅にカルディナを同行させるのはどうかと思うし、それに淋しいじゃないか」
「大丈夫ですよ、タクミ君達なら。そうだ! 寂しいなら子供作りましょうか?」
「「え?」」
レイティア母様の言葉に、グランディール公とカルディナが同時に声をあげる。
「だって、この子は多分この家を継ぎませんよ。タクミ君は一貴族に納まるような人ではないと思いますし多分この子はついて行ってしまうと思うので、今の内に後継ぎを作りましょう!」
明るく喋るレイティア母様に圧倒されてるグランディール公だった。
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