公爵令嬢争奪真竜決戦 1
カルディナ公爵令嬢の争奪真竜対決線が、1週間後に迫った今宵、作戦会議の為タクミの部屋にみんなが集まっていた。
メンバーは、当事者のカルディナを初め、カーリー、ヴェルデ、ルゼの大学在籍関係者と、フラム、クロちゃん、エルとシロの9名だ。
エルとシロは神獣という獣だが、神に近しい者を獣と同じ扱いでは恐れ多いので数え方も人のそれと同じに考えているタクミ達だった。
「それで、今晩集まってもらったのは、対真竜戦での対策を考えたかったからなんだけど」
そこで言葉を区切ったタクミは、自分の周囲を見渡して軽いため息をついてしまった。
タクミの部屋は個室で調度品等も高級な物で纏められ落ち着いた部屋なのだが、そんなに大きくは無い。
そこへ9名が入れば必然と引っ付く事もあるだろう。
タクミは自分のベットを椅子代わりに座り、その膝にはエルが乗っかっている。
これは解る。
タクミの右横はカーリーが、左にはヴェルデが定位置になりつつある場所でタクミに引っ付いて座っている。
シロは当然、ベットから投げ出されているカーリーの足に絡む様に横たわっていた。
これも解る。
問題はこれからだ。
フラムは、タクミの後ろにまわり両足でタクミを挟む様にベットに座り、後ろから羽交い締めの様に抱えてニコニコしている。
カルディナとルゼは、何故かタクミの足の間に体を埋めようと自分の体を押し込んで来ていた。
唯一クロちゃんだけが部屋に備付けられている勉強机の椅子に腰掛けて寛いでいた。
さすが、数百年生きて来られただけの事はある落ち着きだなとタクミは感心するが、よく顔を見ると、物凄く羨ましそうにしているのが見えて、また溜息が出てしまった。
「あのー君達、ちょっと窮屈なんだけど?」
「あ、お構いなく部屋がそんなに大きくないですから仕方ありませんわ」
カルディナがしれっと言い切る。
「いや、結構机の周辺とか空いてるよ?」
「今日は冷え込むさかい、こうしていた方が、あったこうて良いでおますよ?」
ルゼがそんな事言っているが、今は春から夏先に向けて一番気候が良い時のはず。
それに、皆が来ている寝巻がタンクトップ一枚にショートパンツだったり、膝丈が短いワンピースだったりと薄着のような気がするんだがと思うタクミ。
まさか、インナー着ているよね?
「もう少しで良いから離れて座ってね。話しづらいから」
タクミに言われ、ブーブー言いながら指が入る程度の気持ち離れる婚約者達。
それでもまあ良いかと妥協し話しを進めようと考えるタクミだった。
「まず、真竜だけど何か人が制御をかけてるの? そうじゃないと、対戦場が焼け野原になってしまうよね?」
それに答えるのはカルディナだった。
「はい、王宮の正魔導士が30名体制で、呪縛結界を施し力の制御を行います。その他にも対戦場のフィールド周辺を光属性障壁の展開を魔導士40名、緊急時に土属性障壁を展開出来るよう20名の魔導士が待機してしますね」
「う~ん万全の様な気がするけど、その辺りクロちゃん何か解る?」
「全然、話しにならんよ」
両手を横へ広げ、やれやれってなポーズを見せているクロちゃん。
「どういう事ですクロさん! 王宮の100名近い精鋭魔導士が施す結界術に不備でもあると言うのですか?」
少し口調が強く言い放つカルディナ。
たぶん、自分の国の魔導士が施す結界術が役にたたないと言われて心外だったのだろう。
「あ、ゴメンね、カルディナ姫。別に、この国の魔導士が駄目って言ってるんじゃないんだよ。いくら人間が集まって結界を施し、呪縛しようと真竜の力をどうにか出来るなんて事自体が無理と言ってるんだ」
「つまり、圧倒的な差があり過ぎると?」
「そう、タクミさんの言う通りだよ。伝説じゃあ、数さえ居れば神とも戦える存在の一つなんだからね」
「え?鬼以外にも竜も神と対抗出来るっていうのか?」
タクミの問いに大きく頷くクロちゃん。
「それじゃあどうして今は人間の呪縛結界が効いているのです?」
カルディナはそれでもとクロに聞いてみる。
「それはわしにも分からん、たぶんわざと従っている振りをしているんじゃろ。どんな意図があるのかは分からんがな」
クロちゃんでもその辺りは解らないのか。
「例えば、人間に不覚にも捕まった事が竜にとって耐えがたい屈辱で、その仕返しの好機を狙っているとか?」
ヴェルデが上げた一例に、皆が凍りつく。
その好機とは何時なのか?
「それであれば、今度の争奪戦は絶好の機会かもしれんが、まず真竜がいちいちそんな事で怒ることは無いと思うぞ。」
クロちゃんは、真竜の仕返しは無いときっぱり言いきった。
「どうしてですか?」
カーリーが出した疑問にクロちゃんは笑みで返す。
「それはの、わしらもそうじゃが寿命の長い種族は人生がマンネリ化して退屈な時間が多く感じる様になるんじゃ。わしらより寿命の長い、真竜なら尚の事じゃろうて。その退屈に、人間が自分を捕まえ、何やら企んでいると知っていれば楽しみにこそすれ、仕返しは無いはずじゃ」
タクミ達にとって、寿命の概念が違いすぎてピンとこない事と、真竜の考え方が人のそれとはずいぶん違う事にびっくりするばかりだった。
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