大学ライフ 3
大講堂にいた、一般学生達は先生達の誘導で外へと避難する。
その他の、教員や院生の生徒は、キーザの周囲を取り囲む様に移動し始める。
さすがに、才能のある子供達があつまった大学だけのことはあるが・・・。
「タクミ君、これは何? キーザ君はいったいどうしてしまったの?!」
会長が僕の隣にやって来て質問してくる。
「あれは、昔、人が封印した悪魔です。ただ、入学試験の時に現れた悪魔とはどこか雰囲気が違います。それに実際は悪魔ではなく魔人族という種族で人間族が勝手に邪悪な存在として作り上げ討伐したらしいですが」
「それってどういう事!? まさか降魔の厄災と言われた事を言っているの?」
会長が言う降魔の厄災が、クロちゃん達を封印した事と関係があるのかは知らないけど、無関係ではなさそうだ。
それより・・・・
「僕はその降魔の厄災と言うのがどういったものかは知りませんが、今はそんな事を言ってる場合じゃないですよ! とにかく、あの魔素の取り込みをなんとか断ち切らないと、とんでもない化け物になります!」
「そ、そうね。幸いこの学校には優秀な教師と生徒がいるし、なんとか・・。」
「判りました・・・と、言いたいのですが、この相手は通常の物理攻撃は効きません。光属性を持っている者でないと、対抗出来ないと思います。それ以外の人は周辺への影響をできるだけ防ぐ事だけ専念して下さい! 後は、僕達でなんとか対抗してみます」
僕が失礼とは思ったけど忠告すると、会長がキョトンとした顔になる。
「なんとかするって、しかも僕達って、タクミ君以外に光属性持ちがそんなにいるわけじゃ・・・」
「光属性が居なくても、僕と相性が良い子が結構いますから」
僕は自信満々に答える。
『エル、君はルゼを守りながら、神聖結界を建物周囲に展開しておいてくれ。僕たち以外にも人がいるから、あまりエルの力を見せびらかすわけにもいかないからね。それと、転移魔術でクロちゃん呼んで来て。あのキーザに取り憑いているものが魔人なのかどうか判断してもらわないと』
『わかりました。私は後方支援に徹っしますのでどうかお気をつけて下さい。あの妖気は最初のクロさんの時より禍々しいく大きいですよ』
『うん、気をつけるよ』
僕が返事をすると、エルはルゼの前に立ち、転移の術を発動し始めた。
「それじゃあカーリーは、シロと前衛を頼む」
「了解だよ。タクミ君』
カーリーが少し顔を赤くしてニコリと笑ってくれる。
「ヴェルデ! フラムは?」
「フラムは無理ね。今日は、ギルドで新人の実地研修に付き合って、この王都の外にいるはずだから」
「それじゃあヴェルデは中盤で遊撃よろしく!」
「了解! それじゃあタクミ、お願い」
物凄く嬉しそうにヴェルデが僕に近づいて来る。
「あ~! ヴェルデ姉様! 私が先だよ!!」
「別に、どっちでもいいじゃない?」
「だあ~め!」
「分かったわよ、先にちゃっちゃとやってちょうだい」
ヴェルデが先にどうぞと、手でクイクイと振っている。
「じゃあ、お願い」
「う、うん」
そう言って、カーリーが顔を少し前に出し目を閉じた。
その少し前にでたカーリーの柔らかい唇に僕は自分の唇を重ねた。
「うわぁああああああ!! タ、タクミ君! な、な、何をしているの!!??」
グランディール会長が顔を真っ赤にして騒いでいるようだけど、僕も忙しいので取り敢えずほっとく。
「はぁ、はぁ、タクミ・・くん、もう終わり?」
う、そんなうっとりとした目で見つめないで!
「こら! カーリー! 今度は私の番よ!」
半ば強引に僕の前にヴェルデが立つと、それこそ強引に僕の唇を奪った。
「う、わ、お? ちょ、う、ううむ、ん、む、む、う」
「なが~~~~い!!!」
カーリーが僕とヴェルデの密着する身体の間に強引に割って入り、ガバッと引き離した。
「うふふふ、満足したぁ~」
「ずるい! ヴェルデ姉様の方が長かった!」
「あら、同じくらいよ?」
「絶対にちが~う!」
はあ、属性の受け渡しに血を渡すのが良いとは言っても、この濃厚キスはさすがに恥ずかしいかな?
まあ、これも属性の受け渡しが完了しそれぞれの身体に固定されるまでの処置だ。
本当は、ちゃんと本番までしてしまえば一気に受け渡しができるみたいだけど、さすがにまだ子供のからだの僕では無理だもの。
「あ、あなた達! こんな時に何をしているの! しかもヴェルデ先生まで!!」
「あ~、会長細かい事は後で説明するから今は、あれの対処よ」
「け、けど・・・」
「グランディール会長、あの怪物に対抗するための呪いみたいなものですから!」
ヴェルデの迫力に会長も押し黙ってしまった。
「わ、分かりました。けど後で絶対に教えてください! でないと教師の生徒への性的犯罪として国に報告しますからね」
「分かってるわよ。だいたい旦那様にキスして犯罪も何もないわよ」
「へ?」
あ、会長。今は深く考えないで!
「と、とにかく、会長はあの周囲にいる院生の指揮をお願いします。」
「・・・わ、わかったわよ」
本当に渋々と頷いてくれた。
「それじゃあ、みんな行くよ!」
さあ、これから相対しようとしたその時だった。
キーザを取り囲んでいた大量の魔素が一瞬で消えた。
しかし、キーザの体はどんどん大きくなり続け、着ている服は破け肌は焦げた様に黒くなって行く。
クロちゃんの時とは全く違うぞ。
僕は嫌な予感を持ちながらも、壇上から直接院生達を飛び越え、キーザの前に降り立つ。
「おい! そこの新入生! そんな所にいたら邪魔だ! どけ!」
一人の院生、たぶんクラス長だろうか? 他の院生達を指揮し建物内に五法結界を張り続け、魔素の流入と悪魔の妖気の拡散を防いでいた。
「すみません、そちらはそのまま結界の維持をお願いします。もし、危険になりそうでしたら警告しますので逃げて下さい」
「な! 何を言っているのだお前は! お前みたいな子供に指図される覚えは無い!!」
まあ当然といえば当然の反応だよね。
そんなやり取りをしていたら、キーザの方から強烈な妖気の塊が、その指揮する先輩院生の方に向けて飛び出してきた。
「くそ!」
その先輩院生は咄嗟に氷結障壁を張り妖気弾とでも言うべきものを防ごうとしたが、その威力が桁違いなのか、殆ど抵抗する事もなく障壁が砕けてしまった。
「!!?!」
先輩院生の男は声が出る間も無くその妖気の塊に飲み込まれてしまうはずだったが、僕が張った光属性の障壁が間に合い、この世から消えるはずの先輩院生は、まだそこに存在していた。
「はあ、間に合った~。」
「な! 何が起こった?」
「先輩、先輩方は申し訳ありませんが結界の外から五方結界の維持に努めて下さい!」
「・・・・・・・・・・・・」
先輩院生の方は、歯を食いしばり僕をただ睨むだけで何も言い返して来ない。
「副会長! ここはタクミ君の言う通りにしろ!」
「か、会長?!」
いつの間にか会長が僕と副会長と言われた男性の前に現れた。
「し、しかしこんな子供に、」
「いいから言う通りにしろ! それにさっきの妖気をお前は防げるのか?」
「!・・・・・・」
「とにかく我々は・・」
会長の言葉が終わらないうちに、またさっきの妖気の塊が今度は複数こちらに向けて飛び出してきた!
しまった!この数は僕一人では受けきれない!
脳裏に会長達の悲惨な状況が浮かび上がりそうだった。
「ドッン! ガガッ!! グウォーー!!!」
耳に爆音が先に届き、土煙が周囲に撒き散らされる。
その土煙がスーと無くなると、そこには人が立っていた。
カーリーとシロ、そしてヴェルデに、六花亭で働いていたクロちゃんだった。
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