第7筆 冒険者ギルドへ (2回改稿)

 さて、冒険者ギルドに行こうじゃないか。

 昼間のシャルトュワの村は露店商の呼び込みの声、見せ物をする魔法を使った芸人、それに集まる人だかり。

 子どもたちが走り回っており、賑やかだ。

 露店商のおっちゃんに聞いたら話した代わりに商品を買え、とうるさそうだな。

 俺は物品を見たら絵を描いて召喚できる。

 とりあえず商品をスケッチしておく。何時でも召喚出来るように。

 だからいらないな。子どもたちに聞いてみるか。


「俺たち旅の途中で、ここの冒険者ギルドに寄りたいんだが、どこにあるか知ってる?」


「お兄ちゃんたち、青葉のそよ風亭から出ていたよね?あそこからまっすぐ行って左向かいにあるよー」


「なんだ、結構近くだったのか。ありがとな。お礼にどうぞ。」


 俺はお礼にクッキーを描いて召喚した。


「わーい、クッキーだ!ボクの大好物なんだ。お兄ちゃん、今使ったのなに~?」

「ん、これか?これは召喚術の一種なんだけど……」


「召喚術?思い出した!それ、絵本で読んだことあるよー。昔の勇者さまが召喚師でドラゴンを召喚して悪い王様を倒したお話だったよー」


 ほう、よくあるおとぎ話だが、召喚術が登場するか。ますますこの技術は謎が深いな。

 子どもたちに別れを告げ、冒険者ギルドに向かう。

 石造りの建物に木の梁で補強してある。看板にワケわからない文字で何か書いているが、

 _______________

〔冒険者ギルド シャルトュワ支部〕


 と書かれていることがだんだんわかってきた。

『(私が翻訳しておきました。翻訳スキルを贈与ギフトしておきます。)』


(おぉ、助かる。撫で撫でしようか?)


『(子どもじゃないもん。)(小声で。身体が出来たら撫でても良いけど)』


 また話を逸らしてしまった。さて、入ろう。


 使い込まれた深みのある焦げ茶のドアを開ける。

 ガチャン。


 入った瞬間酒の匂いが少しする。うへぇ。

 酒場と併設しているのか。流石に昼から呑んだくれるオヤジとかいないよな………いたわ。

 あの髭むくじゃらのオヤジ、テーブル全てと床周りに酒瓶が散乱していて、体格はゴツいが身長は150cm程で小さい。

 耳も少し尖っているし、もしかしてドワーフか?


 他のテーブルの座る奴らは顔や体に傷があったり、腕が無かったりとならず者をイメージさせる。

 漫画で見たギルドらしいな。

 さてさて期待の受付嬢は…………若い女性が一人と老婆が一人か。

 若い女性が一般受付で老婆が緊急受付だろうか?

 特に老婆からは試されているような凄みがある。

 下手をすればこちらが気絶しそうな位だ。

 そしてもう一つ気になったのが二人揃って同じプラチナヘアなのだ。祖母と孫なのかもしれん。推測はこのくらいにして本題に入ろう。


「こんにちはー」

「あら、見ないお顔ですね。旅のお方でしょうか?」

「そうです。私とシンく……彼の冒険者カードの登録に来ました。」

「冒険者カードの登録ですね。まずはこちらの石板に触れてください。」


 カウンターの後ろにある本棚から受付嬢が出したその石板は中央に目のデザイン、その回りに複雑な魔方陣が描かれ、以前説明された六属性をイメージしたようなデザインが六角星のように端々に配置されていた。

 俺はそれに触れるとほんのりと白い光を放ち、ホログラムの形で情報が映し出された。


 =======================


 名前:シン・イーストサイド

 年齢:22歳

 身長:180セルツ

 体重:72デルト

 種族:

 職業:絵画を媒体とした召喚術師


 ======================


 カ《・》イ《・》ってなんだ?異世界出身だからこういう表現なのか?


「シン・イーストサイドさんですね?イカイビトとは珍しいです。

 百年に一人現れる、異界からの来訪者のことを指す種族名です。

 ちなみに隣にいるシノさんもイカイビトです。私はシノさんの孫です。」


「しかも召喚術師とは更に珍しいです!

 絵を媒体としているのは初めて聞きました。

 もう失われて久しい職業です。ざっと一万年でしょうか。」


 色々びっくりすることが多いな。

 やっぱり祖母と孫か。そして俺と同じイカイビトのシノさん。

 召喚術師は一万年ぶりか。百年に一度の来訪者。

 俺の来訪。コスモが送り込んだ人数が俺を含め108度目。


 計算すると………1万800年。

 中々レアなのは嬉しい。しかし、召喚術師に一体何があったのか更に気になるな。


 空白の一万年と繋がってきたし、コスモ、これは一体どういうことだ?

 コスモみたいな存在は大事な局面の時にしか出て来なさそうだしな。ワケわからん。


「シノさんに聞きたいんだが、どこの出身ですか?」

「アタシもびっくりしておるよ。まさか同郷の地球の日本生まれとはな。だからやけに気になったのじゃ。」


「恐縮です。」

「シンくん、私の登録忘れてない?」

「すまんミューリエ。受付嬢さん、彼女の登録もお願い致します。」

「受付嬢、じゃなくてリコって言います。」

「失礼しました。リコさんお願い致します。」


 ミューリエも石板に手を当てた。勿論女神って出るよな。


 名前:ミューリエ・エーデルヴァイデ

 年齢:測定不能

 身長:160セルツ

 体重:本人の希望により表示不可

 種族:女神

 職業:神級魔術師・神級治癒魔術師



「女神だって!?」

「エーデルヴァイデってまさか………!」

「あのエデンの一族か!?」


 周囲がざわめき始める。そりゃあ神だもの。


「リコもビックリです。いくら神様でも神級職は狭き門ですよ。凄いです。」

「嬢ちゃん、いやミューリエさまも中々だねぇ」

「そんな、とんでもないです。」


「登録の前に一つ検査があります。

「魔力総量の検査です。一応知っておくと限度がわかりますし、魔法装置や魔導具によっては必要な数値が提示されている場合もありますので検査しておくことをおすすめします。」


「わかりました。」


 リコがカウンターの後ろにある引き出しから透明な球体のものを出した。水晶っぽい見た目で手のひらサイズだ。


「これは魔力水晶です。送られた魔力を数値化するものです。これを握って魔力を送り込んでください。」


 俺は左手に魔力水晶を持ち召喚時に魔力が吸い取られる感覚を逆転し気のような力を送るイメージでやってみた。

 腕から指先が軽くヒリヒリしてくるこの感覚が魔力なのだろうか。とりあえず半分送るか。


 ピキッピキピッキ!!


 水晶の色が透明から白→黄色→緑→青→赤→銀→金→黒と変色していき全体に無数のヒビが入った。リコの顔がどんどん真っ青になった。ちょっと入れすぎたかな。


「ちょーっとストップ、です!壊れちゃいます!」

「すみません。まだ半分しか入れてないです。」


「9993億2736万5738!?

 この魔力水晶は世界最高の魔力を持つエルフの方に作っていただいた品なんですよ。

 彼自身のの魔力総量に耐えられるように作られているのにヒビが入るなんて、とんでもないです。」


「アタシが思うに彼よりも上に並ぶ者と言えば神々の魔力総量だろうね。あんた凄いよ」

「おいおい、"覇天のシノ・ファルカオ"からのお墨付きとは小僧、やるじゃねえか。」


 そう言って現れたのは白髪をオールバックにした俺の身長より少し高い碧眼の60代ぐらいのおじさんだった。


「ダルカス、その名をもう出すんじゃないよ。年寄りには不要な昔の名誉さ。」

「こうなるとミューリエさまの魔力総量なんて神様だならぬ、中々じゃろうて。」


 リコが急いで修復した魔力水晶もミューリエが魔力を送った瞬間すぐに俺と同じ状態になった。

 魔力総量9999兆9999億9999万9999


 うはっ!? チートだわ。格が違う。

 ミューリエもそうなるだろうな。女神だし。

 九が並びすぎて蝶々に見えてきた。目が痛い

 ってか俺の魔力総量は邪神を倒さないといけないから神と同じ魔力総量じゃないと敵わないだろう。


 勿論俺らの結果に文句を言ってくる輩もいる。


 そういう奴らには魔力腕相撲をすると良い、シノさんに勧められ、ルールとしては普通の腕相撲に魔力で筋力を強化してやるそうで筋肉を痛める輩は魔力が無いやつだそうだ。

 勿論全員に勝った。皆腕を抑え苦しんで苦しんでいるところをミューリエが治癒したら


「ミューリエさま~、ありがたや~、一生ついていきます女神さま~。

 しかも失った腕まで再生してくれるなんて~! あんな赤髪より俺たちをお恵み下され~!! 」


 とか言い始め、ファンクラブみたいなのが出来たのは良いが、俺をさらっとディスりやがったなあいつら。


 最後に石板と似たデザインで六角星にその端々に六属性をイメージしたデザインが描かれた冒険者カードを発行してもらった。

 略歴が自動で刻まれる魔法紙マジックペーパーで出来ており、冊子のような構造になっている。

 ん? エリュトリオン最高品質の紙は羊皮紙じゃなかったのか?

 1ページ目に石板に表示されたプロフィールが書いており、二ページ目から獲得スキル、称号が掲載されるとのこと。

 リコとシノからは


「いきなりSランクにすると本部から文句を言われるのでAランク冒険者にしますね。シンさんとミューリエさんに相応するランクです。」

「あんたらの活躍、期待しとるよ。」


 と言われた。組織だから色々事情があるんだろうな。お疲れ様です、お二方。

 それとシノさんにイカイビトについて聞いておくか。


「シノさんに質問です。」

「なんじゃね?」


「同じ故郷なのになぜ長生きなのか、前世について可能であれば教えてくれますか?あと、宇宙そのものと語る者に会ったことはありますか?」


「アタシは今年で118歳になる。私が転移したのは第二次世界大戦が終わった18歳の時じゃの」


 久しぶりに話すような口ぶりだ。彼女は話を続ける。


「本名は鷹山シノじゃ。ここに来るときに名前が変換されて宇宙そのものの配下から人の寿命の2倍生きる呪いを与えられ、邪神討伐に向かったが失敗した。実際に会ったことはないよ。

 名字のイメージから風魔法を中心に授けられた。

 魔法で空を飛んで奇襲するのが得意だったから覇天と呼ばれるようになったわけじゃの。」


「俺も邪神討伐の命を受けて旅しています。お話ありがとうございました! |」


 俺はシノさんに別れを告げ、外に出ようとドアを開けたら……… 外から男も同じく開けた。


「大変だ!スタンピードが発生した!」












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