第14筆 クリストラ洞窟 ルゥの進化 (改稿)
翌朝。何事もなく朝を迎えたかというと違う。
トレントの薪を燃やして焚き火していたら匂いで気付いたのか般若の形相でブチキレたトレントがやって来た。
だけど、フレシュの友人だと伝えると哀れな顔をされて帰っていった。
あいつ哀れ過ぎない?俺らも哀れな顔をされるとかなんなの?
まぁ、普通の薪と違って二年くらい干さなくても良いし、油分も多くて燃焼時間も長い。
しかもすぐに使えるときた。キープしておこう。
早速洞窟に入る。黒い岩壁にちらほらと宝石がむき出しになっている。
ディルクが引き続き案内してくれた。
「ここはクリストラ洞窟。水晶や、宝石類が良く取れる。これを使った宝飾品もドワーフの国の名産となっている。
他の鉱山、洞窟と違ってここは魔力溜まりの一つ。大量の魔力が宿った宝石類が多い。
モンスターも宝石を食べる食性を持った奴らがおる。たまに魔力を狙って強力なモンスターが来訪するときがある。
今は不幸にも其奴らが多くてな。道中討伐隊とすれ違うこともあろう。」
「きゅう…きゅうぅ?(魔力が籠った宝石…。美味しいのかな? )」
ルゥはスライムよろしく食欲旺盛だが、君の食性は一体どうなってんだ?
「ルゥは何でも食べるな。どれ、俺様も質の良い宝石を探そうじゃないか。ルゥ、どっちが良い宝石を見つけれるか、そして討伐数を競おう! 」
「きゅううぅ! (わかりました!)」
っておい、行ってしまった。追いかけるか。俺も追いかけよう。
「おい、そこは出口に繋がるルートじゃないぞ! 戻ってくるんじゃ! 」
「もう、シンくんったら。ディルクさん、追いかけましょう。」
「はぁ、そうじゃな。オロチ殿は勝手な行動をするから困るわい。」
俺はルゥの方を追いかけていった。だってオロチさんは〘神器解放〙すれば強制で戻ってくるからね。多分文句言われるけど。
ぽむんっぽむっと跳ねながら移動していたがめんどくさいと思ったのか六対の翼でパタパタ飛び出した。
飛び出した先にルゥがゴツンと何かにぶつかって跳ね返った。
良くみるとそれは宝石の身体を持った巨大なゴーレムだった。
ルゥはキラキラした目で眺めていた。
『解析中。シンさま、それは
物理魔法、属性魔法を反射します。宝石を食べて成長する機能を持ちます。
しかし、振動に弱いです。』
振動か。重力操作できるルゥなら楽勝だろうな。さぁ、どうする?
ルゥは口を開き、あのちんまい両手を前にだした。かなりの振動だ。下手したら洞窟が壊れるかもしれない。キィィィィン!! と耳が痛くなる音がするから急いで耳栓を召喚して塞いだ。
ボロボロと崩れていくゴーレムの身体。
欠けていく度に宝石部分をルゥは片手をびよーんと伸ばしてキャッチして身体の中に入れている。
体内で宝石を味わっているようだった。
段々と崩れて行って出てきたものは……真っ黒な筋繊維のみのマネキンだった。
『あれは……“終わりのゴーレム”フェリオス。なぜ邪神の眷属がここに?しかも神器しか効きません!! 』
邪神が感づいて狙ってきたってことか。だが、神器が効くなら俺の出番だ。
「ルゥ、下がっていろ。あいつのコアは食べて良いから。」
「きゅうう。(シンお兄ちゃん頑張ってください。)」
一人っ子だったからお兄ちゃんって呼ばれるのは新鮮だ。お兄ちゃん頑張るよ。
「〘神器解放〙。」
「おいおい、なんだ?ちょうど俺様は馬鹿デカイ水晶塊を見つけたばかりだってんのに。ってなんだあの禍々しい雰囲気を持った人形は?」
「邪神の眷属、フェリオスです。協力願います。」
「ちっ。仕方ねぇ。手伝ってやるわ。昨日練習したあれをぶちかませ。」
あれとは薪の炎をくべる際に使った炎である。出力を調整するのも訓練だと言われて練習がてらやっていたのだ。
今回は本気で刀身に炎を纏わせる。
いざ、
「天叢雲剣、炎状剣。」
「汝願う。彼の者に
八相の構えを取り、頭を水平に切り落とし、胸を突き、腹を切り、股間から切り上げ、左腕、左手、右腕、右腕、右手、左足、右足を切り落とした。
切り口は炭化し、再生しない。
バラバラになった肉体を焼き払って鞘を閉じて爆破。
多数の部位を切った感覚は食肉に包丁を通す感覚とは全く別物だった。
ブチブチと筋繊維が切れて行くあの感覚は気持ち悪さしかない。
気分を変えるため腹から出したコアをルゥにあげる。これを逃してなるものかと目をキラキラさせながらぱくんっと一口で噛まずに飲み込んだ。
するとルゥの身体に変化が起こった。光を放ちながらぷるぷるの身体は光り出し、全身を包む。
ルゥは今から起こることを理解しているかのように光のシルエットのままジャンプした。
頭のようなものが出来、胴体っぽい長いものが出来始め、細い腕、長い脚が生えてきた。
光がキラキラと粒になり始めた時、見たこともない背中に六対の翼が生えた水色のショートボブヘアの美少女が全裸で女の子座りしていた。
つい、小さな膨らみで二つの桜色に染まったそれと割れ目を見てしまった。
視線に気付いたルゥが頬を赤らめ、さっと胸と股間を隠した。ごめんな、見てしまって。
えーっと誰?ルゥだよね?
~世界の声です~
ルゥさまがスライムから魔人族(有翼)へと進化しました。
彼女は特異点として特別な成長を許可されています。
能力の再編成を行いました。
能力について
・捕食
・能力吸収(コア、宝石類)
・一般的なヒトと変わらない本能と知能
・神に次ぐ圧倒的な身体能力
・飛行
・重力操作・振動操作
・土魔法神級
・水魔法神級
となりました。
シンさま、私としても彼女の裸姿はちょっと……なので服を着せてください。
以上世界の声でした。
『世界の声さまが言っているように服を着せましょう。』
「あぁ、俺様の性欲を抑えるのが一杯だ。早く服をルゥに着せるんだ。」
そう言って彼は顔を反らした。
オロチさんの性欲は病的過ぎる。急いで召喚しよう。
地球にいた頃のJCが来ていたようなガーリーで可愛い服(丸襟にリボンを結んだワンピース、フリルつき)、下着を召喚した。
美大在学時にファッションの授業習っといて正解だった。すぐに描ける。
「ルゥ、立てるか?」
「大丈夫、立てるよシンお兄ちゃん。」
「喋れるようになったのか! 」
「うん♪」
慣れない手つきながらもルゥに下着と服を着せる。
後ろから聞き馴れた声が聞こえてきた。
「シンくーん! 勝手な行動しないでって言ってるでしょう? 」
「全く困るのぉ。三人とも勘弁してくれ。ん? 三人? 誰じゃ、その水色髪の少女は?」
「
「いや、それはあり得ん。100年前に確かに儂らで封印した。だが、あれは完璧ではない。とうとう綻び始めているということか。または召喚絡みか……。」
『え、封印済みなんですか? なの!? 』
俺とミューリエはびっくりした。封印済みとは全く知らなかった。
「実はね、私が復活したのは数年前なの。8500年位ずーっと眠っていたんだ。だからもう封印済みとは知らなくて……。」
「それは仕方ない。しかし、コスモは何で言わなかったんだ?」
「コスモ様知ってるんだと勘違いしていると思うよ。」
「その感じだとコスモ殿から聞いておらんようだな。」
そこから俺とミューリエ、ルゥ、オロチさんは100年前のことを聞いた。
邪神討伐のメンバーがシノ、ディルク、ダルカス、ステルヴィオの四名で向かったこと、シノとダルカスが結婚したこと、最終決戦で倒せず封印せざるを得なかったことを聞いた。
六聖神の封印にあれを追加したのが気になった。
「あれとはなんですか? ステルヴィオさんはどなたですか?」
「そうだな、ほとんどのヒトには訪れるもの、じゃ。行ったらわかる。ステルヴィオ様については東方の大陸にいる。」
「それとその少女は誰じゃ?」
「え、みんな忘れたの? ルゥだよ? 」
「ルゥが喋るようになったか。翼も六対確かにある。」
「ルゥちゃん、可愛い! 進化おめでとう! その服はどこから?」
「ありがとう、ディルクお爺ちゃん、ミューリエお姉ちゃん。この服、シンお兄ちゃんが召喚してくれたの。」
ちなみにワンピースは首の後ろにボタンを着脱し、背中は丸い穴を開けており、翼が動かしやすいようにしている。鎧を着けなくて良いように鎧の形の防壁魔法が有事の際、出現する仕組みを作った。
「話が長引いた。時間としてはもう昼過ぎ。軽い食事をしてから出発しよう。」
軽食で食べやすいものの一例と言えばハンバーガーだろう。では召喚だ。
「これはハンバーガーじゃねえか。日本にいたとき、人に紛して食べたなぁ。皆、とりあえず食ってみろ。」
うん、安定の美味しさだ。皆口に合ったようで何よりだ。
オロチさんは日本にいたとき何をしていたか聞いてみた。
「俺様か?神器解放で呼ばれるまで贖罪で仕事して働いてた。
だから現代日本には詳しい方だ。基本は俺の体の一部とか魂石祀ってる神社の神主だな。
他に色々やってたが、今は楽しいぜ。」
オロチさんは人殺しの罪と禁酒の贖罪してたのか。真面目にやってるのが凄いなぁ。
やらなかったらめっちゃしばかれたのかな。
「あと、出るまで3日かかるが、お主ら火の神に会うのじゃろう?
ドワーフの国の前まで行ける転送を使うが良いか。」
ディルクが魔方陣を書き始めた。最後の所に良くわからない文字を書いて出来上がった。
そこから同じ魔方陣を4つ書き上げそれを一番最初に書いた。
「魔方陣の上に乗ってくれ。呪文省略。〘
魔方陣の上に乗ると意識が飛んだ。
体が軽くなり〘
眩しさを感じて再び目を覚ます。
目を覚ますと目の前にコスモがいた。
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