第18筆 煌炎神アウロギ(改稿)
昨日と同じように30分かけて城門の前に向かう。
ディルクが出迎えてくれた。
「おはよう」
「おはようございます。今日もお願い致します。」
「気付いているだろうが、あれがアウロギ様が住まう塔じゃ。六聖塔が一つ、煌炎の塔じゃ。
庭園から入れるから案内しよう。」
赤レンガで建てられた塔だ。多分普通のレンガじゃないと思う。太陽光に当たると反射して光っている。
普通のレンガにそんな特徴があるなんて聞いたことがない。
城門に入ってから続くだだっ広い庭園を右手に進み10分程。
真下から見るとかなりの威圧感を覚える。粘土レンガかと思っていたが赤い宝石のようなものだった。
「では入るぞ。」
ディルクが塔の入り口に近づくと自動で開いた。自動ドアはこの世界で初めて見た。
入り口から入るとエレベーターのゴンドラのようなものがある。それに乗って昇っていく。エレベーターもあるのもびっくりだ。電気ではなく蒸気機関だろうか? だが、もくもくしているところを全く見ない。
「アウロギ様は新しいもの好きでな。高さ20階まであるこの塔に自動で上がる機能をつけろと言われて苦労したわい。それがこの昇降機じゃ。元々はシノから聞いた蒸気機関車や昇降機
を元に開発したもの。モデルにした蒸気機関車自体も開発に向けて進めているが中々進まん。ウィズム嬢ならそのデータベースとやらで今度教えて欲しいの。」
話を聞いただけでここまで開発出来るとは、流石ドワーフの職人。ウィズム、後で教えてあげなさい。アウロギ様もどんな神だろうな。
「着いたぞ。最上階だ。」
目の前の扉には炎が燃え上がる様をイメージした彫刻と左右にドワルディア家の紋章(紹介状の蝋はんこになってたマーク)と火属性のエレメントマーク(冒険者ギルドにも同じデザインがある)の彫金があった。
ノックを三回する。
「入れ。」
扉を開けると十代前半の赤とオレンジのメッシュヘアの少年がいた。
「僕の名前はアウロギ、火属性とそれに関わる魔法、ものを司る神だ。
僕と同じ赤髪の青年、君がシンか?」
「はい、はじめまして、シン・イーストサイドと申します。108代目イカイビトで召喚師です。宜しくお願い致します。」
「ディルクから聞いていると思うが、僕は新しいものが好きだ。この塔の昇降機もそうだし、何よりも自分自身にも新しさを求めた。禁忌の魔法だが、転生の魔法を使って、生まれ変わった。不死鳥が自身の身を焼いて生まれ変わるようにね。」
中々のストイックようだ。自分だったら身を焼くなんて怖くて、それが出来るアウロギ様には敬意を払える。
「敬意を払ってくれるか、ありがたいな。皆無茶しすぎだと言うのだが、シンのことを気に入ったよ。
心を読まれたか。ウィズムやコスモと一緒だ。
「長生きな神なら心が読める。ミューリエ様のような若い神はまだ出来ないけどね。
それでは試練だけど、戦闘の試練は飽きた。
実力十分な君には必要ない試練だ。そういうのは邪神にぶつけてくれ。うーん、そうだなぁ……。
神力の使い方教えるからマスターしてちょうだい。」
「それは俺様の仕事だ。アウロギ、それは撤回してくれ。」
「わかった、オロチさん。君の話はコスモ様から聞き及んでいる。力の象徴と呼ばれた君ならシンが力に飲まれないよう教えてくれるだろう。
世界の声、試練の撤廃願う! 」
~世界の声です~
なりません。エリュトリオンに来る際にそう決めたではありませんか?
「ウィズムちゃんの贔屓は良くて僕はダメなのかよ?」
駄目なものは駄目です。以上世界の声でした。
「頑固だな、あいつ。」
「ということでどうしても試練を与えなければならないらしい。……これにしよう。」
【シン・イーストサイドに試練を命ずる。
“火のように荒々しくも美しく、人々を奮い立たせ、諦めないこと”。
風前の灯火になるな。燃やし続けて影響を与えよ。】
「諦めずに一生懸命生きろってことですか?」
「そういうこと。気付いた時には達成してるよ。
あと、ルゥちゃん。君にプレゼント。」
「何ですか~、アウロギさま。」
「僕のことはアウロギで良いよ。希望の子だしね。シンも呼び捨てで構わない。」
アウロギはルゥの額に手を当てた。
「【
~世界の声です~
ルゥに火魔法全て神級まで使えるようになりました。本人の希望次第で詠唱破棄も可能です。
それと神の権限もギフトしようとされたようですが無理です。
以上世界の声でした。
「あ、バレた? まあ、いいや。ルゥちゃん、好きに使ってね。シン、
火属性を象徴したあのマークが彫られた赤い石だ。こんなに楽にもらっちゃって良いのだろうか?
「良いんだよ。最後の希望たるシンには文句のつけようがないね。あ、でも小さい試練渡しておくね。自身の魂の炎と戦う試練さ。
瞑想して精神世界に行けば戦えるよ。結構神力があがるからおすすめだね。」
「そうなんですかね?
よくわかんないですけど試練も一生懸命頑張ります。あと、これを。」
シノさんにも渡した通話・録音機能、俺がいる場所に【転送】できるネックレスを渡す。
「慎重だね、シン。有事の際は飛んで向かおう。
「わかりました。ありがとうございます。またお会いしましょう。」
中々気さくな神だった。六聖神全員があんな感じならば邪神はどうしてああなったんだ。旦那さんにも見捨てられる程とは……。わからねぇ。
「ウィズム嬢、蒸気機関車の仕組み、作り方を説明してくれないか?」
「検索しておきましたよ、ディルクさま。シンさまの故郷の地球にある蒸気機関車を説明していきます。
基本的なことですが、これは蒸気で動いて動いています。水が温められて沸騰が発生します。
蒸気機関車は、石炭 を燃やした熱で水を沸騰させて発生した蒸気の力を利用して車輪を動かしています。
このしくみから、蒸気機関車と呼ばれるようになりました。
しかし、石炭は二酸化炭素を大量に排出するため、地球ではこれによる環境汚染が原因で使用を取り止めました。
ですが、エリュトリオンには魔石があります。
燃焼性の高い魔石を燃やして利用することにより、有害な二酸化炭素ではなく魔力に還元する魔石を使えば環境問題を防ぎ優秀な燃料になると思います。
動かす仕組みは
蒸気機関車の【機関室】にいる【機関助士】が、石炭をスコップで【火室】に投げ入れるとともに、水を【水タンク】から【ボイラー】へ送る。
【火室】で魔石が燃えると【熱い煙】がボイラーの中にある【煙管】を通り、まわりの水が温められて【蒸気】が発生。
発生した蒸気は【蒸気ドーム】に集まり、「【主蒸気管】を通して【シリンダー】へ送られる。
【シリンダー】の中に入った蒸気が【ピストン】を【往復】させて【主連棒】を動かし、「動輪」の回転運動にかえることで蒸気機関車が走る。
といった感じです。この説明では解りづらいので最初の理論的なところから試作品開発に至るまでざっと7日でしょうか。
シンさまの召喚を用いればこの日程となります。最初の一台目というのは愛好家が出来たりしやすいのでしっかり目に作っておきましょう。
ということでシンさま、お願いします。」
話が専門的過ぎてわからないがディルクはうんうんと頷いている。
かなり納得した表情で話を聞いていた。SL乗ったことないから楽しみだ。
ファンタジー世界のSL旅行なんてロマンに詰まってる。駄妹ウィズムの頭をわしゃわしゃ撫でる。
照れて顔が紅くなってる。アストラ粘土(肉体用)はかなりの人間らしさを再現してるな。
頭に触れた時も暖かった。
「仕方ないなぁ。零号機を7日で作ってやる。絶対に面白いわ! 燃えてきた! 」
「ありがとうございます! シンさま。」
「シンよ、次は水の
塔の入り口の前でお別れした。海の上でも対応出来るように準備しておこう。その前に昼ごはん食べよう。
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