【初回版】駆け出し画家、異世界を染め上げる！

第32筆 法皇への報告とヴォルフガングの初恋

メロル＝シュルハに着いて早々ヴォルフガングの本来の姿で来たので巨大な魔物かと勘違いされた顛末をお楽しみください。

「何だ、あれは！？ 」

「邪神教に引き続き巨大な狼の魔物まで！ 」

「今日はなんて災難だ！！ 」

「全軍撃てぇーー！！ 」

「ヴォルフガング、防壁魔法張っとけ 。」

「ハッハッハッ！ 面白いですなぁシン様。

シン・イーストサイド様が謁見したいと申されておる。某はヴォルフガングだ。小さくもなれるから攻撃を止めてほしい！ 」

ヴォルフガングが小さくなって普通の狼サイズになった。

「シン・イーストサイド様だって！？ すぐにお通しせよ！ 私ノルザックの指令だ！ 」

俺たちは庭に着陸してノルザックさんに挨拶した。

「猊下にご挨拶とご報告にあがりました、ノルザックさん。」

「いやぁ、すみません。少々パニック状態でしたから。西方大陸南西の再生、大変素晴らしいものです。では案内します。」

といってもこの前会った時と同じく庭のガーデニングチェアに腰掛けていたけどね。

「おおう、世界の声にて聞いたぞ。中々の所業じゃ。大陸を再生し人々を蘇生までするとは！ 」

俺たちが天沼矛とコスモとユミトに頼んで魂の回収を手伝ってもらい蘇生したら天翼族になっちゃったことを説明した。

「フォッフォッフォッ！ シン殿の召喚術は中々面白いの。絵を媒体とする召喚術なんて初めて聞くわい。

しかも召喚したものすべてが自動で成長、強くなるとは大変素晴らしい機能であるな！ それで天翼族になるとはな！ フォッフォッフォッ！ 」

「猊下はダルカスさんを知ってますか？ 」

「万武の竜殺しじゃな。 終わりの竜襲撃事件で一度死に、覇天のシノさんに蘇生され一撃で屠ったと言う……。」

「はい、その人です。蘇生したら特別な能力がつくものなのでしょうか？ 」

「いや、それは私にもわからん。世界樹の図書館なら記載がありそうじゃがの。」

「前々から行ってみたい所だったので目的が更に増えましたね。」

「あそこにはエリュトリオンの全てが詰まっておる。音声記録もあるしの。行ってみると良い。そろそろ出発しそうじゃが、もう少しいても良かろう。ノルン、茶を出そう。」

「今回の大陸消失と再生事件で黒ローブの男、クシュトラが戯れに人を殺すことは確定しました。放置出来ません。ただ、100%自由には動けないようでした。なのでラグナロクの際に本気が出せるのかと。」

クシュトラは去るときに足を引き摺って歩いていた。本気をまだ出していないと思う。神級魔法を使えばあの症状は治る。

だけどあえて使っていなくて俺を試した。あいつは人の怒りを嘲笑い、食い物にする野郎だと感じた。油断は出来ない。

「そうかそうか。あやつはクシュトラと言うのか。このメロル＝シュルハを東に抜けると港がある。そこを経由すると中央大陸の玄関口イムロスへ着くぞ。」

「シン様、少し宜しいでしょうか？ 」

「どうした、ヴォルフガング。」

「フェンリルの気配がします。

猊下、初めまして、ヴォルフガングと申します。フェンリルではなく、エル・ヴァナルグロニアという新しい種族でございます。猊下のフェンリルにお会いしたいのですが、宜しいでしょうか？ 」

「ウルシュヌ、ウルシュヌはいるか？ 」

「ウォンッ！ 」

金色に輝くフェンリルだった。うん？ヴォルフガングの目がハートになってる？

「なんと見目麗しい！ 一目惚れいたしました、ウルシュヌさん！ 某の妻になっていただけませんか！ 」

「……クゥ？（この狼、何を言ってるのかしら？）」

「オスだったら厳しい試練を与えて

エル・ヴァナルグロニアにするつもりでしたが、【贈与（ギフト）】致しましょう。額を貸して頂けませんか？ 」

「ウォン？ （これで良いの？ 何をするのかしら？）」

「はい！ 【贈与（ギフト）】、エル・ヴァナルグロニア。」

～世界の声です～

ウルシュヌ様からフェンリルからエル・ヴァナルグロニアになりました。ヴォルフガング様が婚儀の魔法をこっそり使用した為、強制的に夫婦になり、称号【十天狼宙妃神（コスモティックアシャラヴルデウス・クイーン）】を得ました。

以上、世界の声でした。

「ちょっと、なんて物使ってんのよ！？ 貴方、最低ね！！ 」

進化した瞬間、ウルシュヌの身体はヴォルフガングと同じく火花と霜気と雷を放っていた。

「こうまでしないと結婚してくれないと思いました。」

「シンさま、婚儀の魔法は禁術なのです。」

婚儀の魔法か。強制的に結婚させる魔法とかあるのか。誰だよこの魔法作った人。この世界恐いぜ。

「まぁ、でも貴方って良く見たら端正な顔立ちね……。」

「で、でしたら一緒に……。」

「バカっ。貴方はこの世界を救いたいんでしょ？ 私のおでこ触ったときにそう伝えてきたじゃない。ならばそれを貫いて。私は初志貫徹な人は好みよ。」

「わかりましたっ！ では待っていただけますか？ 」

「仕方ないわ。待ってあげなくもないわよ。」

「どうやらウルシュヌさまは面食いの様子ですね。」

「ふーん、そう言う狼（わんこ）なのか。」

「っうるさいわねっ！ 私は犬じゃない！ 気高き狼よ！ ライオネル様の彫りの深い顔立ちにダンディさが相まって惚れてる訳じゃないからねっ！ 」

あぁ、これはおじさま好きでもあって面食いでもありツンデレ狼（わんこ）なわけか。

しかも急に喋りだしたからノルザックさんとライオネル法皇が開いた口が塞がらない状態になってる。

そうですね、シンさま。面倒なわんこさまです。

ウィズムのポンコツっぷりも面倒だけどな。

電磁波頭に流しますよ？

いやいや、それは勘弁してくれ。