第33筆 東の港町カストルシャ(改稿)
「ヴォルフガング、気を付けるのよ。婚儀魔法で結婚したとはいえ、一応夫婦なんだから。」
顔を真っ赤にしてウルシュヌが言った。今はデレ状態なわけだな。
「はっ、言って参ります、ウルシュヌさん! 」
なんかこっちは電撃婚の旦那さんが今から会社に行くけど嫁に対してどこかよそよそしそうな感じだ。まだ会って数日だから……みたいな。これって伝わるかな? 直感のイメージがそんな感じなんだけど。
「気を付けるんじゃぞ皆。」
「皆様お気をつけてー! 」
挨拶はほどほどにメロル=シュルハを後にし、港へ向かった。
リグシャ山脈を越えるとやはり邪神が開けた裂け目が。前回と同じように具現化ペンで橋を架けておいた。『絵の具をぶちまける』機能が便利過ぎた。
召喚用紙に設計図を描いてメモ欄に材質とか記載して『絵の具をぶちまける』を選択して出てきたチューブ絵の具を飛ばすとにょきにょき生えてきた。
とんでもないショートカットを創ってしまった。
ヴォルフガングに乗っていくと結構早いもので1時間ほどで港へ着いてしまった。
ヴォルフガングの巨体で闊歩すると攻撃されるので小さくなってもらった。
この町“カストルシャ”はミューリエから見せてもらった地図からはチリ のように縦長の街だった。リグシャ山脈があるせいか、あまり良い表現ではないが分かりやすく例えると押しやられているような感じだ。
ウェディケットはカラフルなのに対してこちらは青と白の町並みでモロッコの世界遺産の街“エッサウィラ”やギリシャ“サントリーニ島”のような町並みだ。
そういえば転移魔法じゃダメなのか?
「シンさま、転移魔法は大陸を跨ぐ場合、禁止されております。空路なら禁止されておりませんがあまり実用的ではありません。」
「だったら質問がある。
・なぜ西方大陸南西側消失事件は皆すぐに移動できたのか?
・飛行船、飛行機はないのか? 」
「皆様がすぐに移動できた理由をエリーゼさまに質問中……。返答が来ました。」
『緊急事態時は大陸間転移が解除されます。但し、戦争時はエリュトリオン全土転移禁止となります。この決定権は私が持っています。』
「とのこと。飛行船や飛行機がないのかボク自身が飛んでいるときに気になって調べてみました。
……ありませんでした。なのでボクのジェット機構による飛行はかなり異端です。思い返せば天翼族になった皆様にも好奇の目で見られてました。そんなに変かな……。人間の未知を恐れすぎる所には困りものです。ちょっとショックでした。」
まあ、今度作っちゃえば良い。頭を撫でてあげよう。異世界だろうが飛行船と蒸気機関車ぐらいあっても許されてほしいもんだ。
子どもじゃないもん。 ボクは立派なティーンエイジャーだよ?
ティーンエイジャーだって子どもだろ?まぁ、良いんだよ。たまには甘えったって誰も白い目をしない……っておい、通行人たち。なぜリア充死せみたいな顔をしている。止めてくれぃ。
嫉妬も人間の怖い感情だ。こっちまで暗い気分になる。
気分を変えよう……。おっ! あれは面白そうだ。
俺の目の前に見えたのはとある吊り下げ看板だった。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ 本日開催!! ┃
┃ ~カストルシャ魚釣り大会~ ┃
┃ ・飛び入り参加も大歓迎!! ┃
┃ ・ご参加の方は正午にお集まり下さい。 ┃
┃ ・優勝者には豪華な景品や賞金があります! ┃
┃ ┃
┃ 運営・主催:冒険者ギルド カストルシャ支部 ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
俺は皆を引き留め看板に指を指す。早速食い付いたのは我らが兄貴分、オロチさんだった。
「おっ、良いじゃねぇか! 金はないに越したことはないし 景品も気になる。あわよくば魚も持ち帰れば最高だ! 」
「お魚さん一杯釣ろうね~♪ 」
「頑張りましょー! 」
「某は参加出来そうにないですな。」
「ヴォルフガングが参加出来るかは行ってみないとわからないじゃないか。」
今は午前10時頃か。そういやまだ時間とか一年何日とか言ってなかった。
この世界エリュトリオンは1日24時間。一年が360日だ。365日ではないのは6が縁起の良い数字とされ、かの六聖神も6だからだ。
3も二つかければ6となる。そのプラスの二つは最高神夫妻を表す。よって、最高神が360日に設定したらしい。
1ヶ月30日。地球の暦よりシンプルで分かりやすい。太陽はあるんだけど月はない。
「うん? 月がない理由? あれはツクヨミの兄貴の管理下だからな。人工物だ。だけどツクヨミ兄貴は月ってなんなの? って聞いたら黙るんだ。ただ、人工的なのは確定している。」
つまり、月は地球の衛星で人工物かつ限定ものだから他の銀河にはないとオロチさんが断言した。
では本題に戻って魚釣り大会だ。どんなお魚が釣れるだろうか。
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