第34筆 魚釣り大会 (改稿)
「ー! 始まったぁーー!! レディースエンドジェントルマンの皆様お集まり頂き感謝だぜ!
不肖ながら司会を務めるのは冒険者ギルドサブマスターのフィルトン・オッガーズだ! 皆からは【道化の幻影師】なんて呼ばれてるぜぇ! そ・れ・よ・り・も!
事前申請のメンバーは20人! 看板を見て飛び入り参加しようとした人はいるかぁい!? 」
「はい、俺たちは『
「おっと、君はシンくんじゃないか~! 黒ローブの男への『天轟一砕』、見事だったよー!
彼が西方大陸南西側消失事件を解決し、陸地を再生し、人々を天翼族に変えて蘇生させたシン・イーストサイドくんだ! 皆はっくしゅ~! 」
「オオオー!! ピュウピュウ~! あの人が!! 」
フィルトン氏は盛り上げるのが得意なんだな。あの事件現場にいたんだ、この人。
この歓声、ちょっと恥ずかしくなってきた。
「ではでは、皆さんそれぞれ改めて自己紹介~! 」
「シン・イーストサイドです。第108代イカイビトで神級召喚師です。」
「イカイビトだとっ!? 」
「伝説の召喚師の再来だっ!! 」
「ミューリエ・エーデルヴァイデです。神級魔術師です。」
「神級魔術師!? 」
「エーデルヴァイデって……。」
「エデンの一族じゃねえか!? 」
「俺様は八岐大蛇。シンの故郷の神だ。この背中の羽織は俺様の本来の姿だ。」
「倭国の衣装か? 」
「異界の神だって!? 」
「本当に八つの頭と八つの尻尾の蛇なのか? 」
「なんなら見せても良いんだぜ? 」
「オロチさん、それは勘弁。」
「シンが言うなら仕方ねぇ。」
「ウィズムです。宜しくなのです。ガチャガチャンガチャン。」
ウィズムが背中からジェット機構とレーザー砲台を出してアピールし、微笑んだ。
「なんだ、あれは!? 」
「ゴーレムでもない、ホムンクルスでもないこの子、一体何者!? 」
「ルゥです。元スライムで魔人族だよ~。 きゅう? 宜しくねっ♪ 」
「スライム姿も可愛い! 」
「素晴らしい美少女だ! 」
「某は
「言葉を喋っただと!? 」
「エル=ヴァナルグロニアって聞かないなぁ。」
「新種族ね……。」
「この狼、神様なのか!? 」
「なんだ、このえげつないシンとか言う奴らのパーティーは!? 」
「てめーら、ウソつくんじゃねぇぞ! 」
「ねぇ、君。フィルトンの前でそんな失礼な態度をとる子は失格にするよ? 」
茶髪の15歳ぐらいの少年がヤジを飛ばしてきた。だが、フィルトンが冷たい声で静かな怒りを出しながら凄んだ。
実力者を推し測れない者には相応の対応を取ると言ったところか。ナイフを腰からちらりと見せた。
うわぁ、怖いの怖い。
「ヴォルフガングさんには申し訳ないですが! 参加が出来ません! 本当に御免なさい! 応援席にお掛けになってください! 」
「ふうむ、残念だ。主君、皆様応援しておりますぞ! 」
ルゥだけ主君というのは何故だろうか?
シンさま、ルゥちゃんは特異点だからですよ。彼女の魂は特殊で複雑なロックがかかっております。DNAの一部解析は許可してくれましたが、他はダディと呼ばれる人からブロックがかかっています。ルゥちゃんの正体がわかるのはまだまだ先です。
そうか、そこまでの解析、感謝する。お魚一杯釣ろうな。
_______________________
「ルールは簡単! 一番大きな魚を釣った人の勝ち!! 今回は個人戦ではなく5人一組のチーム戦になります!
こちらは昨年の冬に釣り上げたレイピアカジキの氷像!
刺突の名手と謳われるこのお魚は500㎏を越えた大物だぁ!
この漁港での最高記録でこのレベルを釣り上げれば勝利間違いなし!但し、魔法は雷の魔法で痺れさせる程度なら大丈夫! 船を使ってもオッケー!
制限時間は三時間 。では、スタート!」
皆船を持っているようで颯爽とスタートを切っていった。大丈夫。俺たちには
魔力エンジンクルーザーを召喚した。『絵の具をぶちまける』機能つかってしもうた。
設計図は脳の覚醒度上げて5秒で描き、虹色の絵の具を飛ばすと完成。住スペースはいるか? いや、やめておこう。
手続き踏んだ船しか渡航出来ないって前にウィズムが言ってた。
俺らみたいなイカイビトばっかりだとあまり潤滑にはいかないかもしれない。大会が終わったら一応試してみよう。
“やらぬ後悔よりやって後悔する”だ。その方が清々しい。
10分ほどで沖合いに付いた。『超視力』でライバルチームを見てると変な奴がいた。
灰色のローブを着た者たちだ。なんであいつらいるんだ? ガルグルマーで肉片にして天叢雲剣で魂ズタズタに斬ってやろうか? どういう目的だ。
それよりも今回は釣りを楽しむ。大会指定の釣竿だが、
餌は匂いが強い魚介類を餌にすると食い付きが良いらしいのでイカ、タコ、カツオを召喚して取り付けた。
カジキとかマグロが釣れると良いな。
~一時間後~
あっしは漁師のシン・イーストサイド。今日も荒れ狂う波(荒れ狂うどころか凪)の中、大物釣りに出かける。
いつもと違って取材陣が付いちゃあいるがあっしのやることにゃあ変わりはねぇ。ただ大物の魚を釣って彼女を喜ばせる。それだけだ。
こんなネタをやり始めるほど釣れない。大物釣りとはこれ程大変なのかとマグロ漁師さんたちに敬服した。
「シンさま、北西、5
「行ってみよう! 」
魚群反応があった場所に付いたら……クラーケンが縄張り争いを繰り広げていた。
「ウィズム、魚じゃねぇじゃねえか!? 」
「すみません、オロチさま。どうやらクラーケンたちに食べられてその取り分が気に入らなくて揉め合ってるみたいです。」
「ケンカしちゃだーめ! 」
ルゥがまとめて重力魔法で飴玉サイズに練り固めて食べた。クラーケンさん乙です。
「あっ、今度こそは! 南東7
「今度こそ頼むぜ。 」
~15分後~
魚というより鯨だった。島を背中に抱えている鯨で
ホシラさまってカルトルシャの人々には呼ばれているらしい。
ウィズム今度こそ頼むぜ。
「三度目の正直です。マグロのようなシルエットで地球のマグロの個体よりはるかに巨大な魚影が! 南西に10
ウィズムは
~20分後~
何あれ? 1tはあるんじゃね?
かなり巨大な魚影だ。電気ショッカーは……ないよな。こんなときは……叢雲の紫雷に頼もう。
「バヂヂッ! ドゴォォン! 」
「クルルルウシャアーー!! 」
跳ね上がったのは王冠みたいな器管と巨大な角を持ったレイピアカジキだった。
巨大なフックを召喚して引っかける。クルーザーじゃ推進出来ないので追加の船を召喚して一緒に引っ張る。
125分経過した。そろそろ戻ろう。
~50分後~
「一番最後に帰ってきたのはシンくん達のチームだぁー! あれは凄い! なんて巨大なレイピアカジキじゃないかぁー!! 」
「てめーズルして召喚しただろ!? 」
「こちらをご覧下さい。 」
さっきのいちゃもんつけてきた15歳位の茶髪の子だ。
ウィズムが釣ったというか捕まえた時の顛末を撮影したホログラム映像をタブレットに投影して見せた。
「うっわ。マジかよ。 しかもその光の膜みたいなのはなんだよ!? 」
「ホログラムって言う名前ですよ。」
「良くわかんねーな。 」
「というわけでみなさーん! シンくんのチームの大勝利と終わりました~! はっくしゅ~! 」
「パチパチパチパチ~ 」
各々氷像以上のサイズのカジキを釣り上げたようたが、俺たちの圧勝のようだ。
「優勝品はこちら、神器『ローローの釣竿』です! 神器鍛冶師兼漁師だったローロー作の釣竿です。大事に使ってくださいね。副賞は
「結構貰えるんだな。フィルトンありがとな。良い釣り大会だった! 」
「こちらこそ盛り上げていただきありがとうございました!
次のご参加お待ちしております。 それと釣ったお魚の半分は持っていって大丈夫ですよー! 」
「四分の一で大丈夫です。食べ切れません。」
「良いんですかー! うちらが貰っちゃって逆に申し訳ないですよ~。」
「俺も楽しかったです。」
「
副賞の一つに船代が無料になるんですよ~! 中央大陸でのご活躍、期待してますよ~! ではまた! 」
早いものでもう夕方だ。アイテムポーチ(容量無制限)に入れる。俺はポーチを二つ持っている。
かつてウィズムのコアを入れていたポーチ、現在は潮満玉と潮干玉が入っている。
もうひとつのポーチ、ジャックオーランタンのような顔の刺繍がされてある。
口のファスナーにカジキの切り身の端っこを入れると一瞬で吸い込まれる。
量子サイズにちっちゃくするらしいのでいくらでも入るとこのこと。
ポーチに触れ、出したいものを唱えると出てくる仕組みになっている。
今日とった魚はカストルシャを始め各地に冷凍で送られる。
予約した宿にも出るかも知れない。今夜は魚介料理のごちそうになりそうだ。
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