第38筆 中央大陸 玄関口 イムロス
「あんちゃん、今後の期待活躍してるよー! 揚げ物今度作るわ~!! 」
「船長、船員の皆さんありがとうございました~!」
蒸気船って結構早いんだな。一日で付くとは存外だ。ディルクさんの技術力には頭が上がらない。
イムロスの町並みは一言で言うと屋根が赤い。
潮風を考慮してレンガではないだろうがウェディケットよりもカストルシャよりも広大な町だ。
流石、中央大陸の玄関口と言われるだけある。
中央大陸はエリュトリオン最大の大陸で、光聖塔、闇聖塔、土聖塔、国が6つ、世界樹がある大陸だ。
ではどこから行こうかな。
「これからどうする?」
「シンさま、天嶺の国ベルゲラッハにある光聖塔に行きましょう。」
「天嶺の国とは? 」
「山脈や峠等が乱立する立地にある国で、国土が隆起しています。光聖塔は特に高い山にあり、六聖教信者が多いです。」
「百聞は一見にしかずかな。想像がつかないよ。」
「まあな、中々面白そうな所だ。効率の良い行き方を酒場とかギルドで聞いてみようぜ。」
マッピングはウィズムの仕事だ。あの小顔の頭にあるコアから宇宙全土の総覧の知識が詰まっている。しかし、総覧に過ぎないので『誰々がこんな人生を送ってこのときに無くなった』のような個人的な記録などの細かいことは世界樹の図書館や世界の運行システムの方が詳しい。町の中の建物名くらいは問題ないが人一人までは厳しい、個人情報保護の問題があるらしい。どの星、世界に行ってもヒトがいる限りそれは変わらない。
「港からまっすぐ行き右折、さらに道なりで左折するとギルドがあります。」
指示通り向かうと『冒険者ギルド イムロス支部』と書いてある。
ドアを開けると昼間なのに酒を飲んでいる人がいたり若い冒険者らしき人が依頼ボードを眺めて『これはどうだろうか』と仲間らと話し合っていた。
「こんにちはー。」
「うん? お前はシンって奴じゃないか? 西方大陸を再生し、人々を蘇生した野郎じゃねえか? 」
筋骨隆々のボディビルダーのような体格、日焼けした肌が特徴的なおっさんだ。服が少々ピチピチなのだが、きつくないのだろうか。野太くも渋い声でよく通る。この人もあの現場にいた人か。知名度上がっているのは結構便利だ。宣伝ありがとな、エリーゼさん。
「はい、そうです。」
「やっぱりな。俺はマックレガー・アルトレン。伝説の召喚師サマに会えるなんて光栄だな! ガハハハハハ! 」
「マックスさん、ちょっと声デカすぎです。」
「大きな声ではっきりと喋ったらちゃんと伝わるだろ、サクシェロ? 」
俺と同じくらい(180
「初めまして、シンさん、皆様。世界の声でのご高名、拝聴しております。冒険者ギルドはイムロス支部、
「天嶺の国ベルゲラッハに行きたいのです。」
「サクシェロ、ベルゲラッハって確か……。」
「えぇ、現在入国封鎖期間中ですが、移動手段は? 」
「ヴォルフガングに乗っていきます。」
「ヴォルフガングさんと言えど厳しいかと思います。あそこは基本魔物、獣人族、魔族入国禁止なんです。純潔を尊び、ちょっと偏見が強いので……光の神レナーテ様は定期的にやり過ぎだとおっしゃってから落ち着きつつありますが、過激派な六聖教信者が多くて時期によって封鎖されます。秋口からになれば開放されますが、今は7月。まだ2ヶ月は封鎖されているかと。」
「某はこれでも神の端くれですぞ。」
「 えっ! これは失敬。ですが、封鎖に変わりありません。地図はお持ちですか? 」
ウィズムのイメージのもと召喚した地図を見せる。
「これは……!? もしかして御自分で描かれて召喚なさったのですか? 世界樹の図書館にあるエリュトリオン大地図と同じふ縮尺ではありませんか! 細かい所までぴったり! でも所々に地名がありませんね。」
「サクシェロさま、今から埋めていっているのです。」
「貴方は? 」
「シンさまの参謀兼愛じ… 痛っ! 」
軽く拳骨してやった。地球ではパワハラになっていたがウィズムを愛人にしたつもりはないし、愛されるのは嬉しいがあくまで参謀に徹して貰いたい。
「っこほん。参謀のウィズムです。 」
ミューリエさまで満足出来なくなったら私がお相手しますよ?
「愛人と言おうとしたようだが、子どもを愛人にする趣味はない。」
「子どもじゃないもん。だってボクはシンさまと同い年の同じ誕生日と時間に生まれたから。」
「えっ? 血が繋がってない双子の妹みたいなもの? 同じ22歳なの? 」
「そうですよシンさま。見た目が全てじゃないですからね。童顔で12歳の身体をしているからって子ども扱いしないでください。」
「あのー、ウィズムさん? 話を戻してくれませんか? 」
「あっ、すみません。これはボクのデータベースを元にシンさまに召喚して貰った地図です。人工衛星をボクのピットに搭載して飛ばして撮影したのでざっくりとした形しか描いていません。その為行ったことない場所にはまだ記載していないのです。」
「人工衛星? ピット? 搭載? 撮影? よくわからない言葉が出ましたが精細な地図であることに変わりはありませんね。本部ギルドマスターからお聞きしたのですが協力者を探していると。」
「はい、そうです。本部ギルドマスターがなぜ知っているのか俺には全くわかりませんが協力者を探しています。
「私たち冒険者ギルドも本部ギルドマスターによって協力せよと指令が届いていますので全面協力しましょう。
ベルゲラッハにはまずはこの人間族最大の国、アーガラム帝国を抜け左へ、オルレット王国に入国後、かつて最高神が住んでいた渦巻山を手前に通過すると、浮遊島があった凹みのヨエル大穴があります。
それを中央に数珠繋ぎ状の如くゴエル穴が空いており、国境のように区切られています。それを越えると高さ一万
潜ると一万セルクを優に越す峠や急峻な山々が
「高山病とかにならないものですか?」
「初めて入国された方はそうなりやすいですね。生まれたときからの方は何事もないようです。酸素濃度が三分の一の濃さです。」
「ありがとうございます。地道に陸路で行ってみようと思います。あと皆さんにこれを。」
はいっ!毎度お馴染みのネックレスねっ! にこっ!
「これは? 『
通話、録音機能つきのネックレスですか!? ダンジョンドロップ品でもかなりのレア物!! もしかして、召喚術で? 」
「はい。そうです。」
「素晴らしいっ! 私も召喚術、欲しいものですね!
「何かあったらそれで連絡してください。」
「良い品をありがとうございます! 」
「便利な品じゃねぇか! ありがたく貰うぜシンよ。」
「私たちみたいな駆け出し冒険者にも良いんですか!? ありがとうございます! 」
「どういたしまして。皆、そろそろ行こっか。」
「ねぇ、お兄ちゃん。私のこと、忘れてない? 」
「あっ、ごめん! この子、キフェ・マールンって娘です。かつて“流浪のリヴァイアサン”って呼ばれてて俺たちが渡航中に暴走していたので元凶の呪いを解除して自在に姿を操れるようにしました。名前もなかったので俺が名付けて呪いを解いた時に世界の声様から海の神様に制定となりました。」
「“流浪のリヴァイアサン”がこのような可憐なお嬢さんとは驚きを隠せません。まさか呪いで苦しむ娘立ったとは……! キフェさんは冒険者志望ですか? 」
「うんっ、そうだよサクシェロさん。呪い持ちだった私でも大丈夫かな? 」
「冒険者ギルドは実力主義の組織です。元犯罪者でも更正して実力もあれば登録するほどです。生まれは気にしません。」
「そうなんだー。私冒険者になりますっ! サクシェロさん、いえ、支部長、よろしくお願いしますっ! 」
「えぇ、歓迎します。それではこちらを……。」
「俺たちはこの辺で。キフェちゃん元気でな。」
「ありがとう~お兄ちゃん!! 」
キフェの就職先も決まったし、行き方が分かったので、冒険者ギルド イムロス支部を後にした。
あ、ウィズム。ピットってなんだよ?
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