第11筆 小さな凱旋 (改稿)

帰りに冒険者ギルド、シャルトュワ支部についてダルカスさんから教えてもらった。

シャルトュワ村に帰って来た俺たちは昨日出会った門番に大歓迎された。


「よくやってくれたよ。君は村の英雄だ。」


笑顔で迎えられ門を開けてもらうと――


「小さな英雄たちののお帰りだー!!」

「家畜がダメになっちゃったけどありがとう!」

「お疲れさま~!!」

「無傷で帰ってきたな。素晴らしいな!!」

「お兄ちゃんドラゴン全部倒してくれたんだね!!」


村人たちが大勢で迎えてくれた。

おうおう、誉めらるのは慣れていないんだ。

めっちゃ嬉しいぜ。家畜については残念だが、召喚しておくか。

ナゴルアドラゴンについても後で説明だな。



───────────────────────


俺たち4人は村人たちにわっしょいされて冒険者ギルド、シャルトュワ支部に戻ってきた。

ドアを開けるとこちらでも称賛の嵐。

みんなにありがとうございます、と返し報告する。酒場スペースで料理がどんどん運ばれていっている。シノが沸き立つ人々を抑え報告をお願いされた。


ゴブリンたちが突然変異してゴブリンバーサーカーになっていたこと、報告にあった場所に行ったら北の大陸にいるエンシェントカースドラゴンがナゴルアドラゴンを全て食い荒らしたこと、天叢雲剣あめのむらくものつるぎで一撃で倒したことを報告した。


「シンは日本の神さんに祝福されているのかもねぇ。しかし、あのエンシェントカースドラゴン禁魔合成混沌竜が出てくるとは……。

アタシとして考えられるのはまず、邪神はあり得ない。

転送させたかシンと同じように召喚させたかだねぇ。断言が出来ないよ。

とにかく本部に伝達魔法で速達だね。リコ、書いておいておくれ。」


「はい、わかりました」


あと、あれも聞いておかないとな。

「東の国ってどこですか?」


「あそこは江戸時代の日本のような場所じゃよ。どうやら600年前の人が建てた国らしくてのアタシとシンと同じ日本の生まれだったみたいだね。日本刀も和食もあって鬼もいるよ。是非とも行ってみると良いの。」


日本の採用率が高いがランダムなのか。コスモに聞きたいことが増えた。


「後、注意が一つあるねぇ。神器には強大な力の分、代償があったりする。もしかしたら八岐大蛇さんが宿っとるかもしれんね。」

「わかりました。気を付けます。」


天衣に八岐大蛇が宿ってても可笑しくない気がしてきた。

ウィズム、天叢雲に何か宿っていないかリサーチ頼む。


『了解です。』


酒場スペースでおっさんたちが豪華な料理と酒を準備していた。女性冒険者を全く見かけないな。

おっさんばっかりで目が疲れる。ディルク爺はいるかな………いた。


「ディルクさんにお願いしたいことがあるのですが。」

「なんじゃ、シン」


「俺たちドワーフの国に行きたいんです。道案内してくれませんか?」

「よかろう。儂もそろそろ国へ帰ろうと思っておった所じゃ。明日出発でも良いか?」

「どうするミューリエ? 」


「明日出発にしましょう。ドワーフの国には六聖神が住まう塔があります。邪神を倒すには六聖神の力添えが必要です。シンくん、まだやるべきことは多いんです。」

「わかった。では明日出発でお願いします。」


「うむ、宜しく頼む。明日の朝、ここで集合じゃ。(あの方へ会わせてみよう。)」

「ディルクさん、また小声で言いませんでした? 」


「何も言っとらんぞ」

「また疑ってしまってすみません。」


あの方って誰なんだ一体?会ってみたらわかるみたいだし気にしないで良いか。

豚の一頭焼きとか鶏の丸焼きとかあるな。かなり旨そうだ。あぁ、我慢出来ない。食べよう。

俺はオヤジ等と一緒に


アチュール乾杯!! 」


そこからわちゃわちゃと騒ぎ,酔いすぎた俺はカースドラゴンを倒したことや天叢雲剣のことを話して武勇伝みたいになってしまった。

ミューリエもがぶ飲みして泥酔していた。

そして俺はまたも驚くものを見てしまった。


ルゥが酒を飲んでいるんだ。


しかもあのちんまい両手でジョッキをつかんでぐびぐびと飲んでいやがる。

びっくりして半分ほど酔いが覚めた。

しかも俺が一杯呑んでへろへろになった火酒も余裕で飲んでるし。

ってオヤジ等、面白がって酒を更に飲ませるな。ぷはぁー、と言いながらルゥの身体がピンクに変わっていってる。

毎回ルゥには驚かされることばかりである。胃袋とか一体どうなってんだ。

下手したら人間になるんじゃないのか、あれ。


「きゅうう! (もっと下さい、もっと欲しいです)」

「ルゥちゃん、もう良いだろう。そんな催促しないでくれ、お開きだ。」

「きゅうぅ……。(えー、コアの味と違って面白いのに……。)」

『とか言ってますよ、ルゥちゃん。』


マジかよ。酒豪で重力操作出来るスライムってどんなスライムだよ。コアに味があるのか。

ウィズムが翻訳してくれたけど逆に聞かなかった方が良かったかもな。

青葉のそよ風亭にまた泊まるとしよう。

俺はミューリエをお姫様抱っこする。

ヒューヒュー、と悪酔いしたおっさんどもから冷やかしが聞こえるが、無視。


「にゅふふ、もう飲めないでふ……。」


天使みたいな寝顔と夢でも飲んでいる寝言を拝みながら青葉のそよ風亭に向かったのだった。

あ、ちなみにおっぱいをこっそり触ったりなんかしてないよ?

紳士だからね、手をグーにして触れないようにしたよ。(本当に我慢するのがやっとだったぜ。)


───────────────────────


亭主から祝福の言葉を頂いた。


「給仕の手伝いに行った時に聞いたが、エンシェントカースドラゴンを倒すとはびっくりしたわい。

あと、義手がワシの思考に合わせて進化してくれたから料理がはかどった。

最初はびっくりして気絶してしまった。

ありがとな、小さな英雄さん。感謝の意を込めて今晩は無料にしてあげよう。」


「え、いいんですか! ありがとうございます。」


疲れきった俺は部屋に駆けこんで すっ、と丁寧にミューリエをベッドに降ろし、毛布をかけ、俺も隣で寝る。


『解析完了。え、嘘でしょ…… 』


まどろみの中、ウィズムがそう呟いたが興味より眠気の方が勝ってしまい落ちた。



~翌朝~


「おはようシンくん、俺様は八岐大蛇だ。」

「シンくん、おはよう。」


「うわぁぁぁーー!! 誰だよ!? 」


起きたら窓際に20代ぐらいの知らない青年がミューリエと一緒に椅子へ腰かけていた。優雅に紅茶を飲みながら……。







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