第10筆 ドラゴンレイド後編(二回改稿)
こちら、現場の始まりの平原南側にいるシン・イーストサイドです。
現場には山のように大きな黒いドラゴンがいます。
自分たちに背後を向けているので早速、奇襲取材を仕掛けてみようと思います。
ってふざけてる場合じゃなかった。
あいつの周りに報告にあったドラゴンたちが肉片と化している。さっきからムシャムシャと食べているのだ。
討伐対象が喰われているのは最悪でも最良でもある。
今しかない。奇襲をかけよう。
さっきよりも大きめの
ギロッ!!
奴が振り向いた顔には食い散らかしたドラゴンの肉片がつき、血まみれだ。狂気を感じる赤い眼にはバーサーカーと同じ気味の悪さを覚える。
「キィシャアーアァーー!!」
「おいおい、あれって
「北の大陸にしかいない奴じゃの。太古の戦争の産物で少々厄介じゃ。
まず、魔法が効かぬ。普通の武器も効かぬ。
だからあいつには魔剣か、神剣、神器などの特別なものしか効かん。」
「ちっ、魔剣は持っちゃいるが、ナゴルア山脈のドラゴンだからナメて持ってこなかった。まさかこうなるとはな。」
「あの短剣か。ありゃ本物かわからなねぇじゃないか、ダルカス?」
「黙れ、酔いどれジジィが! 俺の神器返せ! プレゼントじゃなかったのかよ! 」
喧嘩になりそうな隙を狙ってカースドラゴンは紫色のブレスを放ってきたが二人はかわした。周りの草が一気に枯れたので毒のブレスだろう。
(なぁ、ウィズム。どうにかならねえか?)
『シンさま、少々お待ちください。………近くにありますね、それ。』
(え? )
『その召喚した刀です。自動で鞘に装飾が出来たり柄に紐が結われたじゃないですか?』
(確かに、あれば奇妙な現象だったな。)
『解析をしておりましたが、判明しました』
『その刀はシンさまの故郷、地球での神剣が一つ。』
勿体ぶるかのように一拍おいた。
『
はぁ? 天叢雲剣って三種の神器の一つとか、スサノオが倒したヤマタノオロチの尻尾から出現したと伝わるあれかよ。信じられん。
『シンさま、しかもその剣、本物です。リサーチしましたが、天皇家にあるレプリカでも宮中にある形代でもない本物です。
召喚元不明ですが神々しさと覇気を感じます』
草薙剣と同一視されたりするが、誰もわからん。元画家でも使えるものは使おうじゃないか。
俺は刀を左手に掲げ、ウィズムの言葉に倣いながら
「〘神器解放〙!
「異界を越え顕現せよ、
日本刀の形から一転、
流石、日本刀の源流。太古の剣にしかない形状、大陸式の直刀(矛)にはないこの美しさ。
そして同時に顕現したヤマタノオロチが描かれた羽織を着る。これには直感で問題ないと感じた。
この羽織、不思議と力が湧いてくる。
天叢雲剣を顕現させた時にセットで出てきた。
やっぱりカースドラゴンには効かないと思いきや、怯み麻痺した。
うし、いける!
〘紫雷〙で縛り付け、左足を踏み込み霞の構えを取る。
羽織がはためかせ、俺はもう一歩踏み出し地面を強く蹴りウィズムのガイドの下、奴の心臓めがけて飛ぶ。
それは悪夢を裂く一条の光の如く。
それは天を駆ける彗星の如く。
かの者を射て。〘
まず天叢雲を左手に持ち替え、紫雷で麻痺しているのにも関わらず放ってきたブレスをくるんと一回転してかわし、近付きそのまま体を半分ほど刺す。
最後に刃を180度捻り込み右手の指先で柄頭をトンっと押す。
天叢雲は呼応し一瞬で刺し進む。これで見事に心臓を貫通完了。
「グルゥアァーーーー!!!」
心臓の跡に真円の風穴が空き、叢雲は飛んでいく。羽織の力でふわりと着地し、再び掲げた左手に戻ってくる。これが〘天穿ち〙。
「終幕。」
天叢雲に鞘を着ける。ドラゴンが黒い強烈な光を放ち、消えた。同時に羽織も光となって消えていき叢雲が去り晴れ渡っていく。お陰で俺の顔はあいつの返り血まみれだ。
「お疲れさま~、格好良かったよシンくん!血まみれだから綺麗にしておくね。〘
「いやぁ~、圧巻じゃねえか。私は人をあんまり誉めないが、よくやった!その剣、極東の国が使う武器に似てるな。」
「若造、見事じゃ!!(ふむ、この実力ならば………)」
「皆さんのお陰です。ダルカスさん、これは俺の故郷の神器、
あとディルクさん、小声で何か言いませんでした?」
「何も言っとらんぞ。」
「そうですか。失礼しました。」
「神器を失くすとはひでぇ先祖だ。それとお前さん、何かと喋っていたようだが一体なんだ?」
ウィズムの声、聞こえていたのかな?
「紹介します。
『宜しくです。』
「うおっ、頭に響かせるタイプの伝達法か。」
「儂も少し苦手じゃ。」
『すみません。参考にさせて頂きます』
「うむ?ルゥというスライムがいないの。」
周囲を見渡してみると………いた。エンシェントカースドラゴンが食い散らかしたナゴルアドラゴンの
なんか大口開けて吸い込み始めた。
そして、ごろごろあったコアを全部食いやがった。
ルゥはコアを食べるのを好むのだろうか。
残った赤黒いカースドラゴンのコアを………巨大化して丸呑みしやがった。
うん?ルゥの身体に変化が起こっているな。
にょきにょきぴょこっ!
ドラゴンの翼が六つ生えたぞ!プチ進化したな。
「きゅううううん!!」
水色の翼を巨大化してバサッ、バサッと飛んで俺らの元に戻ってきた。
正直ここまでの顛末、開いた口が塞がらなかった。
ポカーン。
「私のコアが………。ドラゴン専門
ダルカスが"竜殺し"なのはコアのコレクターだったからなのか。納得。
あとルゥを馬鹿にしないでほしいな。
可愛い我が子、いや妹のような存在だからな(親バカ、兄バカ)。
「北の大陸に行けばカースドラゴンなんぞ腐るほどいるわ。」
「うるせぇジジィ、お前さんにはわからんだろ。」
「用件は終わったんじゃ。さっさと帰るぞ。」
「私のぉ、私のコアがぁぁぁ……………」
ドンマイ、ダルカス。
こうしてドラゴンレイドは無事に終了した。
さぁ、凱旋だ。
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