第56筆 共和国の裏切り
「ウィズムちゃん~、寝坊だよ~。」
「にゅがっ! お、おはようございます、皆さま。」
珍しくウィズムが寝坊して今9:30だ。
「はっ、すみません! 急ぎますので30秒下さい。」
彼女がネグリジェから速攻で着替えてメイド服に着替えた。
カーテンを召喚してあげようと思ったが、その必要もなく視認不可な速度で着替えた。
ぼさぼさだったおさげ髪は綺麗に整えられ、いつものツインテールである。
「準備完了です☆」
「それじゃ行こうか。」
城内は樹洞に石煉瓦で補強した構造になっていて、
「宰相、お客人です。」
「通したまえ。」
堅牢ながらも獣人たちが彫られた黒樫の扉を開いた先、琥珀色の眼を持つ
姿はスーツ姿で背中には大きな翼がある。
「ようこそ、セルトケ共和国へ。宰相レスリック・グリフィスです。」
「第108代イカイビト、神級絵画召喚術師のシン・イーストサイドです。」
「お噂はかねがね。して、どのような要件でしょうか? 」
「単刀直入に申しましょう。ライオネル法皇より、ラグナロク開戦の時が近いと。そして邪神教が邪神を復活させようと動いています。邪神を倒すご助力を──」
「悪いがシン殿、断る。」
彼の眼は鋭く、その中には迷いも感じた。
「え? 理由をお願い致します。」
「私個人としては良い。だが、国民の中にはイカイビトに疑念を抱くものもいてな。
我ら獣人族は『力こそ全て』、と考える者も多い。」
説得材料が足りなかったかなと思い、
「いや、そうではないんだ。」
「レスリックさま、こちらを。」
ウィズムがホログラム映像で戦績を見せる。
「それは……
彼は『黄泉の鍵』を見てため息を一つついた。
「その異様な技、強制的に冥界に送る技なのか? 」
「はい。」
「なんと――! 強者ばかりのセルトケ共和国とあれどあれを食らえば死者が増える。君が強いのはわかった。」
「恐れ入ります。」
「邪神教と言ったか。我が国の悩みの種でな。
だが、昨日の夕刻、八影宮騎士と呼ぶ者たちが逮捕したと聞き付けた。あれは誰なんだ? 」
「あぁ、それ、俺の眷属です。
レスリックさん、こちらをご覧下さい。」
「眷属? 拝借する。」
俺が提示したのは冒険者カードだ。
「これは!? 異界の神様だったのですか!? 失礼致しましたっ! 」
「威張るために見せたのではないので頭を上げてください。」
「もしや、召喚で彼らを……? 」
「はい。」
「そうですか。彼らは罪人を明け渡した後、去っていきました。」
カズールたち大活躍だな。勢いで召喚したとは言えかなり優秀。
「彼らには邪神教頭領であるクシュトラ捜索をお願いしています。」
「シン殿の実力は計り知れませんな。セルトケ共和国は全面的に協力致しましょう。その頭領捜索も手伝いましょう。」
「ちょっと待った、レスリックさん。」
オロチさんが制止した。
「邪神教は洗脳と失踪で勢力を拡大している。禁忌たる死の魔法を使っているから下手にやると陥落される。」
「むう……。死の魔法とは……厄介ですな。」
「戦力増強を頼むぜ。」
「わかりました。」
「あと、これを。」
いつもの通話用ネックレスだけど対洗脳機能が付いている。
「ありがとうございます。」
「それでは帰ります。」
「ご武運を」
「帰ったか……。殺すんだ。追え。」
「はっ。」
シンに聞こえない声で宰相は灰色のローブを着た人物に指令を出した。
───────────────────────
挨拶はこれくらいにしてオロチさん、娘さんのマリティアーネさんが待っているらしいので会いに行ってみよう。
城門からでると一匹の白龍が風を纏って変化し、1人の女性になった。
身長は155cmほどで身の丈以上の槍を背中に背負っている。
「お父ちゃ~ん!! ひっさしぶり~!! 」
「ぐがっ! マリ、キツいキツいわっ! 」
「父ちゃん迷惑かけてなかった!? 大丈夫かな!? 」
「は、はじめまして、マリティアーネさん。」
「はじめまして~シンくん! 」
抱擁されたが、おぉ、彼女結構胸ある……ミューリエから烈火のオーラが!オロチさんからも黒いオーラが! 許してくれ!
「なっるほど~シンくんはちょっとえちえちなのね~! 困っちゃうね、ミューリエちゃん! 」
「え? 何で名前知っているんですか? 」
「トクトレシアでパーティー組んでたじゃん? 」
「あっ! 思い出した! マーちゃん? 」
「そうだよ! 」
「久しぶりっ~!! 」
えーっと、昔会っていたわけかな?
「うん! 346個目の世界レクトレシアでパーティー組んでいたんだ~」
「ミューリエちゃん、ちょっと待ってねー。」
「どうしたの? 」
「去ね。神槍乱舞! 」
彼女の槍がひとりでに動きだし、悲鳴が上がった。
「ふーん。シンくん、邪神教だねぇ~。」
悲鳴が上がった先を見ると灰色のローブを来た男が倒れ付していた。獣人族のようだ。
「シン、獣人族は敵だ。」
「え!? 」
「父ちゃんの言うとおり、敵だね。」
「となると、ステルヴィオさん激怒するね。」
ミューリエがそう返した。
ならば、倒してしまうか。
「潰しますか? 」
「いや、戦争になる。」
「父ちゃんの言うとおり~。」
「でも、皆、追いかけて来てるよ? 」
ルゥが指差した先には武装した兵たちが。
「捕まえろっ! 」
「逃がすなっ! 」
「ガング、転移する! 」
「はっ、シン様! 」
「転移阻害しようとしているな。ミューリエ、マリ、
「はい!」
「はいよっ! 」
『比類なき浄化結界!! 』
「阻害出来ないだと!? 」
「小癪なっ! 」
「荒れますぞ! 『一蹴転移』! 」
転移空間に避難して疾走する。
しかし、俺らの行く道を遮るかのように裂け目が出て来てそこから一人の黒ローブを着た者が現れた。
この光景を見てヴォルフガングは驚嘆している。
「これは誠ですかっ!? ここは神悠淵界と同じ清浄な転移空間ですぞ!? 」
「クハハハハハハハッ!! 逃すかっ!」
「クシュトラか! 」
オロチさんが雰囲気が変わるほどに睨み付けた。
「あぁ、もうまだるっこい! 『神器融合』、
「あの技をやるのか? クハハハハ!受けてやる。 」
「『天穿ち弐式』、『黄泉の鍵』! 」
180度捻って開く。黒い鳥居の黄泉の門が開く─!
「お呼びですかな、王よ。」
「討て。」
「わかりましたぁ♪」
「なんだ、貴様はっ!? 」
漆黒の甲冑を着た骸の男がクシュトラを捕まえて連れ去っていき、鳥居をくぐって消えた。
「ぐひぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!! 」
多分あいつはあれごときでは死なない。そう思いながら次の目的地に向かった。
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